高市首相の存立危機事態発言と米国家安全保障戦略
世界は変わった 時代遅れの日本
日中の平和、共生のアジアこそ展望
広範な国民連合事務局長 山本 正治
日中関係はかつてない危機的状況に入っている。
レーダー照射問題応酬などきわめて厳しい状況にあることは誰しも知っている。しかし高市首相と与野党の政治家の多くもマスコミも「正常化には時間がかかる」といった程度の認識のようだ。
高市首相の発言は中国の領土の不可分の一部である台湾をひとつの「国」として扱い、その「有事」を集団的自衛権行使の対象としてしまった。中国が国を挙げて激怒するのは当然である。身構えている。1895年日清戦争を通じて台湾などを奪われて以来1945年までの屈辱の歴史を想起させられている。
高市首相に発言の撤回と謝罪を求める。わが国は、歴史の総括と反省をしっかりと踏まえなくてはならない。同時に中国の発展と米中関係など世界の趨勢も見定め、文字通り日中不再戦・平和の新しい歴史をつくり出す一歩を踏み出さなくてはならない。
新年最大の民族的な課題である。
高市発言は撤回以外にない
高市首相は、発言について「従来の政府の立場を超えるものではない」などとごまかしているが、発言は明瞭だ。その後の党首討論での手直し発言について野党側にすら「事実上の撤回をしたと受け止めた」などという評価もあるがそれもごまかしだ。
11月7日の衆院予算委員会議事録によると、「台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。それが武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースである」との趣旨を明瞭に述べている。
台湾の祖国復帰、統一実現にどのような手段を使うかは完全に中国の内政問題である。他国があれこれ言うのは内政干渉だ。ましてや独立策動に加担してはならない。
しかし首相はその後も党首討論で、台湾の法的地位を日本が「認定する立場にない」とサンフランシスコ平和条約を持ち出した。だが、72年の共同声明では、日本が認め降伏したポツダム宣言の「台湾は中国に返還されなくてはならない」との表現で合意したはずだ。この党首討論発言を中国がいっそう厳しく批判したのは当然だった。
高市首相は発言をキチンと撤回し、謝罪して、共同声明など日中間の4つの基本文書に戻りしっかりと立脚し両国関係を発展させなくてはならない。
もはや「戦後世界」は過去に
昨年11月、オーストラリアのローウィー国際政策研究所は「2025年アジア・パワー指数」を公表した。そこでは米国の総合影響力が中国を上回ったものの18年の調査開始以降最低で、軍事では優位に立ったが、中国は外交で米国を上回り対外経済では大きく引き離した。
中国はかつての中国ではない。すでに米国を上回る世界最大の経済大国となり、科学技術大国で並ぶ。軍事面でも少なくとも東アジア太平洋地域では互角とも見られる状況となった。
米国支配の戦後世界は劇的に変わった。昨年4月、トランプが中国に追加関税を課した際、中国は報復関税で対抗、拒否した。米国は引き下がらざるを得なかった。力関係の劇的変化を満天下に見せつけた。12月初めに発表した米国家安全保障戦略(NSS)でも、中国の興隆と自国の衰退といった現状を認める表現に溢れている。
ところがこうした現実をわが国は認めないようだ。中国への差別・偏見、排外主義がわが国政治家や国家官僚たちの目を曇らせているのか。
中国は攻勢に立っている
昨12月マクロン仏大統領が大型経済界代表団を率いて中国を訪問し習近平主席の歓待を受けた。間もなく英国首相もさらに独首相も訪中予定という。
何よりもこの4月にトランプ大統領の訪中が予定されている。習近平主席の訪米も約束された。しかも、この合意となった電話会談で両首脳は台湾問題を話し合ったという。直後の高市首相との電話会談でトランプは、高市を応援しない態度を示し、むしろ日中対立をいさめる発言をしたと報じられている。
もはやG7が一致して対中国政策を進めるなどという世界ではない。高市の日本は孤立している。
その中国は昨年、抗日戦争勝利80年で「中華民族の偉大なる復興」を祝い、台湾の祖国復帰を残された最大の課題とした。9月3日天安門広場でのロシアなど諸国首脳も参列した人民解放軍軍事パレード閲兵はその象徴であった。
中国は米中の力関係で劇的変化が進んでいると判断した可能性が高い。したがって対日関係でも、台湾政策でも相当な戦略的対応が始まっているとみるべきだろう。
中ロ爆撃機の首都東京を狙ったとも言われる太平洋方面共同飛行などなど、対日、あるいは台湾を睨んだ軍事的威嚇も頻繁となった。もっとも日米の大規模軍事演習はここ数年きわめて頻繁で、対中国挑発が続く。そのお返しとも言えるが、それでもこれまではなかった中国側の対抗が明瞭となっているのは重大な変化である。
高市首相らの世界観・戦略観なき対中国挑発は不測の事態すら招きかねない。この対応は米中関係の変化を見ていない可能性が高い。
世界を計算に入れない日本は漂流しているに等しい。
「衰退」自認の米国
高市首相の対中国挑発は米国頼みである。問題発言の予算委員会(11月7日)でもハッキリ言っている。「一時、アメリカ・ファーストという言葉が出てきて、いろいろなところから、アメリカはコミットメントしない、手を引いていくんじゃないかといった懸念がありましたけれども、日米首脳会談で確認しました」と、「関与」を聞いたと喜び溢れる。
だが、NSSは米国の衰退を公式に認めた。「アトラス(ギリシャ神話の巨人神)のように米国がすべての世界秩序を支える時代は終わった」。もちろんバイデン前政権時代も「米国がすべての世界秩序」を支配できたわけではない。そもそも、「米国は世界の警察官ではない」とオバマ大統領(当時)が言ったのは2013年であった。それでも米国はいつでも「自国ファースト」だった。
トランプのNSSの特徴は、経済力も政治力も軍事力も、力が著しく弱くなり中国の後塵を拝すかもしれないといった局面での米国の世界政策、安全保障戦略の調整であることだ。
5つの「極めて重要な中核的国益」の筆頭が西半球の権益確保である。これがこの特徴中の特徴だ。「『モンロー主義のトランプ系』を主張し、実行する」と明言する。
他方、ロシアについては「戦略的安定性を再び確立する」と争わない。逆に、ウクライナを支援する西欧諸国を「民主的でない」「信頼できる同盟国であり続けられるかは全く明らかではない」と厳しい。中東については、「この地域でわれわれを泥沼に落とした『永遠に続く戦争』を避ける」と。勝手なものだ。
そして特徴は、「われわれは支配的な敵対勢力の台頭を阻止するため、世界的・地域的な勢力均衡を維持する。これらの国々は自地域に対する主要な責任を担い、集団防衛への貢献を大幅に増やすべきである」と。「地域的な勢力均衡」、これは戦後も一貫していた。だが極度に力弱まった米国はますます「勢力均衡」の策略だけに依存するようになった。
焦点は日韓の対中国
アジアである。NSSはインド太平洋地域を「経済的・地政学的な戦場」と位置づけ、「軍事力の優位性を維持することで、台湾を巡る紛争を抑止することが優先事項」ともいう。これを知って高市ら反動派は安堵したようだ。
しかし、「米軍が関与する可能性」を示したに過ぎない。
むしろNSSは、「米軍単独では不可能」といい「日本と韓国に防衛費増額を促す必要」と、日本と韓国を名指しする。「ただ乗りを許している余裕はない」と迫る。北東アジアで日本と韓国が「主要な責任」を担い、「貢献を大幅に増やす」べきだと。ここにこそNSSの特徴がある。
ヘグセス国防長官は12月6日、日本などの同盟国に数年以内に国内総生産(GDP)比で5%まで国防費を引き上げることを求めた。さらにトランプ政権は17日、台湾への過去最大1・7兆円の武器売却を決めた。中国大陸沿岸に届く長距離地対地ミサイルを含む。自らは武器商売で大儲け、血を流すのはアジア人ということだ。
東アジアの対中衝突は、日韓が対処して日中韓3国が共倒れすれば、米国にとっては最も結構なこと。米国の狙いはそこにあると見るべきだ。
危険なシナリオの役者・高市首相
高市首相の存立危機事態発言はこうした米国の策略の文脈のなかで出てきたものと見ると分かりやすい。決して従来の政府見解と同じではない。繰り返すが、日本と韓国が「主要な責任」を担い、「地域の勢力均衡」を実現するという策略がシナリオである。
石破首相が強引に退陣に追い込まれ、「親米保守強硬派」の高市政権となった。高市は、その先兵となる危険な役割を買って出ることで首相に就くことができたと言えないか。
最初の仕事が「台湾有事存立危機事態」発言であった。一気に日中間の緊張を高めた。国内基盤が弱い高市らには内政上の必要さもあった。参院選では「排外主義」を公然と掲げる参政党などに支持を奪われた。戦争の危険を醸成し、「強い日本」を演出することで支持基盤の強化を狙っている。
臨時国会では、防衛費を積み増し総額11兆円、国内総生産GDP比2%支出を「2年前倒し達成」で実現。武器輸出も加速され、軍需産業は急拡大。非核三原則見直しにも手が付く。他方、補正予算は成立したが、貧困化する国民生活支援はかけ声だけ。ほとんど自治体に丸投げだ。
高市らは、国民生活も日本も、危険極まりないところに追い込んでいる。
日中関係は日本の死活
日本にとっての「台湾問題」の発生は、日清戦争からである。1895年の下関条約で台湾などを中国から奪い賠償金も得て、アジア侵略を本格化させる。日本の帝国主義の歴史の本格的始まりで、その結末が1945年であった。
ここからキチンとしないかぎり、日中間の問題は根本的には解決しない。
わが国の真の国益が、中国をはじめアジア諸国との共生にあることはこの百数十年来明白である。
しかもいま、東アジアは世界の成長センターとなって世界をリードしている。とくに日本経済は中国との相互関係に大きく依存している。例えば輸出入総貿易の23%前後、約4分の1は対中国である。インバウンドも3分の1が(25年1~10月、台湾を入れれば約半分)中国である。
今こそ、対米追随から脱却し、独立・自主の方向を選択しなくては再び中国と争うことになる。それは文字通り民族滅亡の道だ。
こうしたことを背景に経団連筒井義信会長は、「両国政府間で対話を通じた意思疎通が図られていくことが重要である。企業は常に冷静に状況を把握し、対応していく」と語って日中関係強化を求める。
日中国交正常化に重要な役割を果たした公明党が政権を離脱している。再びの役割発揮に期待は大きい。沖縄は、台湾に近接というだけでなく歴史的・経済的にも中国と関係も深く、「再び戦場か」の危機感に溢れ日中関係の打開を切実に望んでいる。国会内での12月2日の発言撤回を求める緊急集会には多くの国会議員など各界が駆けつけた。
広範な勢力は「日中不再戦」の一点で共同し事態の打開のために奮闘しよう。 日中関係はかつてない危機的状況に入っている。
レーダー照射問題応酬などきわめて厳しい状況にあることは誰しも知っている。しかし高市首相と与野党の政治家の多くもマスコミも「正常化には時間がかかる」といった程度の認識のようだ。
高市首相の発言は中国の領土の不可分の一部である台湾をひとつの「国」として扱い、その「有事」を集団的自衛権行使の対象としてしまった。中国が国を挙げて激怒するのは当然である。身構えている。1895年日清戦争を通じて台湾などを奪われて以来1945年までの屈辱の歴史を想起させられている。
高市首相に発言の撤回と謝罪を求める。わが国は、歴史の総括と反省をしっかりと踏まえなくてはならない。同時に中国の発展と米中関係など世界の趨勢も見定め、文字通り日中不再戦・平和の新しい歴史をつくり出す一歩を踏み出さなくてはならない。
新年最大の民族的な課題である。
高市発言は撤回以外にない
高市首相は、発言について「従来の政府の立場を超えるものではない」などとごまかしているが、発言は明瞭だ。その後の党首討論での手直し発言について野党側にすら「事実上の撤回をしたと受け止めた」などという評価もあるがそれもごまかしだ。
11月7日の衆院予算委員会議事録によると、「台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。それが武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースである」との趣旨を明瞭に述べている。
台湾の祖国復帰、統一実現にどのような手段を使うかは完全に中国の内政問題である。他国があれこれ言うのは内政干渉だ。ましてや独立策動に加担してはならない。
しかし首相はその後も党首討論で、台湾の法的地位を日本が「認定する立場にない」とサンフランシスコ平和条約を持ち出した。だが、72年の共同声明では、日本が認め降伏したポツダム宣言の「台湾は中国に返還されなくてはならない」との表現で合意したはずだ。この党首討論発言を中国がいっそう厳しく批判したのは当然だった。
高市首相は発言をキチンと撤回し、謝罪して、共同声明など日中間の4つの基本文書に戻りしっかりと立脚し両国関係を発展させなくてはならない。
もはや「戦後世界」は過去に
昨年11月、オーストラリアのローウィー国際政策研究所は「2025年アジア・パワー指数」を公表した。そこでは米国の総合影響力が中国を上回ったものの18年の調査開始以降最低で、軍事では優位に立ったが、中国は外交で米国を上回り対外経済では大きく引き離した。
中国はかつての中国ではない。すでに米国を上回る世界最大の経済大国となり、科学技術大国で並ぶ。軍事面でも少なくとも東アジア太平洋地域では互角とも見られる状況となった。
米国支配の戦後世界は劇的に変わった。昨年4月、トランプが中国に追加関税を課した際、中国は報復関税で対抗、拒否した。米国は引き下がらざるを得なかった。力関係の劇的変化を満天下に見せつけた。12月初めに発表した米国家安全保障戦略(NSS)でも、中国の興隆と自国の衰退といった現状を認める表現に溢れている。
ところがこうした現実をわが国は認めないようだ。中国への差別・偏見、排外主義がわが国政治家や国家官僚たちの目を曇らせているのか。
中国は攻勢に立っている
昨12月マクロン仏大統領が大型経済界代表団を率いて中国を訪問し習近平主席の歓待を受けた。間もなく英国首相もさらに独首相も訪中予定という。
何よりもこの4月にトランプ大統領の訪中が予定されている。習近平主席の訪米も約束された。しかも、この合意となった電話会談で両首脳は台湾問題を話し合ったという。直後の高市首相との電話会談でトランプは、高市を応援しない態度を示し、むしろ日中対立をいさめる発言をしたと報じられている。
もはやG7が一致して対中国政策を進めるなどという世界ではない。高市の日本は孤立している。
その中国は昨年、抗日戦争勝利80年で「中華民族の偉大なる復興」を祝い、台湾の祖国復帰を残された最大の課題とした。9月3日天安門広場でのロシアなど諸国首脳も参列した人民解放軍軍事パレード閲兵はその象徴であった。
中国は米中の力関係で劇的変化が進んでいると判断した可能性が高い。したがって対日関係でも、台湾政策でも相当な戦略的対応が始まっているとみるべきだろう。
中ロ爆撃機の首都東京を狙ったとも言われる太平洋方面共同飛行などなど、対日、あるいは台湾を睨んだ軍事的威嚇も頻繁となった。もっとも日米の大規模軍事演習はここ数年きわめて頻繁で、対中国挑発が続く。そのお返しとも言えるが、それでもこれまではなかった中国側の対抗が明瞭となっているのは重大な変化である。
高市首相らの世界観・戦略観なき対中国挑発は不測の事態すら招きかねない。この対応は米中関係の変化を見ていない可能性が高い。
世界を計算に入れない日本は漂流しているに等しい。
「衰退」自認の米国
高市首相の対中国挑発は米国頼みである。問題発言の予算委員会(11月7日)でもハッキリ言っている。「一時、アメリカ・ファーストという言葉が出てきて、いろいろなところから、アメリカはコミットメントしない、手を引いていくんじゃないかといった懸念がありましたけれども、日米首脳会談で確認しました」と、「関与」を聞いたと喜び溢れる。
だが、NSSは米国の衰退を公式に認めた。「アトラス(ギリシャ神話の巨人神)のように米国がすべての世界秩序を支える時代は終わった」。もちろんバイデン前政権時代も「米国がすべての世界秩序」を支配できたわけではない。そもそも、「米国は世界の警察官ではない」とオバマ大統領(当時)が言ったのは2013年であった。それでも米国はいつでも「自国ファースト」だった。
トランプのNSSの特徴は、経済力も政治力も軍事力も、力が著しく弱くなり中国の後塵を拝すかもしれないといった局面での米国の世界政策、安全保障戦略の調整であることだ。
5つの「極めて重要な中核的国益」の筆頭が西半球の権益確保である。これがこの特徴中の特徴だ。「『モンロー主義のトランプ系』を主張し、実行する」と明言する。
他方、ロシアについては「戦略的安定性を再び確立する」と争わない。逆に、ウクライナを支援する西欧諸国を「民主的でない」「信頼できる同盟国であり続けられるかは全く明らかではない」と厳しい。中東については、「この地域でわれわれを泥沼に落とした『永遠に続く戦争』を避ける」と。勝手なものだ。
そして特徴は、「われわれは支配的な敵対勢力の台頭を阻止するため、世界的・地域的な勢力均衡を維持する。これらの国々は自地域に対する主要な責任を担い、集団防衛への貢献を大幅に増やすべきである」と。「地域的な勢力均衡」、これは戦後も一貫していた。だが極度に力弱まった米国はますます「勢力均衡」の策略だけに依存するようになった。
焦点は日韓の対中国
アジアである。NSSはインド太平洋地域を「経済的・地政学的な戦場」と位置づけ、「軍事力の優位性を維持することで、台湾を巡る紛争を抑止することが優先事項」ともいう。これを知って高市ら反動派は安堵したようだ。
しかし、「米軍が関与する可能性」を示したに過ぎない。
むしろNSSは、「米軍単独では不可能」といい「日本と韓国に防衛費増額を促す必要」と、日本と韓国を名指しする。「ただ乗りを許している余裕はない」と迫る。北東アジアで日本と韓国が「主要な責任」を担い、「貢献を大幅に増やす」べきだと。ここにこそNSSの特徴がある。
ヘグセス国防長官は12月6日、日本などの同盟国に数年以内に国内総生産(GDP)比で5%まで国防費を引き上げることを求めた。さらにトランプ政権は17日、台湾への過去最大1・7兆円の武器売却を決めた。中国大陸沿岸に届く長距離地対地ミサイルを含む。自らは武器商売で大儲け、血を流すのはアジア人ということだ。
東アジアの対中衝突は、日韓が対処して日中韓3国が共倒れすれば、米国にとっては最も結構なこと。米国の狙いはそこにあると見るべきだ。
危険なシナリオの役者・高市首相
高市首相の存立危機事態発言はこうした米国の策略の文脈のなかで出てきたものと見ると分かりやすい。決して従来の政府見解と同じではない。繰り返すが、日本と韓国が「主要な責任」を担い、「地域の勢力均衡」を実現するという策略がシナリオである。
石破首相が強引に退陣に追い込まれ、「親米保守強硬派」の高市政権となった。高市は、その先兵となる危険な役割を買って出ることで首相に就くことができたと言えないか。
最初の仕事が「台湾有事存立危機事態」発言であった。一気に日中間の緊張を高めた。国内基盤が弱い高市らには内政上の必要さもあった。参院選では「排外主義」を公然と掲げる参政党などに支持を奪われた。戦争の危険を醸成し、「強い日本」を演出することで支持基盤の強化を狙っている。
臨時国会では、防衛費を積み増し総額11兆円、国内総生産GDP比2%支出を「2年前倒し達成」で実現。武器輸出も加速され、軍需産業は急拡大。非核三原則見直しにも手が付く。他方、補正予算は成立したが、貧困化する国民生活支援はかけ声だけ。ほとんど自治体に丸投げだ。
高市らは、国民生活も日本も、危険極まりないところに追い込んでいる。
日中関係は日本の死活
日本にとっての「台湾問題」の発生は、日清戦争からである。1895年の下関条約で台湾などを中国から奪い賠償金も得て、アジア侵略を本格化させる。日本の帝国主義の歴史の本格的始まりで、その結末が1945年であった。
ここからキチンとしないかぎり、日中間の問題は根本的には解決しない。
わが国の真の国益が、中国をはじめアジア諸国との共生にあることはこの百数十年来明白である。
しかもいま、東アジアは世界の成長センターとなって世界をリードしている。とくに日本経済は中国との相互関係に大きく依存している。例えば輸出入総貿易の23%前後、約4分の1は対中国である。インバウンドも3分の1が(25年1~10月、台湾を入れれば約半分)中国である。
今こそ、対米追随から脱却し、独立・自主の方向を選択しなくては再び中国と争うことになる。それは文字通り民族滅亡の道だ。
こうしたことを背景に経団連筒井義信会長は、「両国政府間で対話を通じた意思疎通が図られていくことが重要である。企業は常に冷静に状況を把握し、対応していく」と語って日中関係強化を求める。
日中国交正常化に重要な役割を果たした公明党が政権を離脱している。再びの役割発揮に期待は大きい。沖縄は、台湾に近接というだけでなく歴史的・経済的にも中国と関係も深く、「再び戦場か」の危機感に溢れ日中関係の打開を切実に望んでいる。国会内での12月2日の発言撤回を求める緊急集会には多くの国会議員など各界が駆けつけた。
広範な勢力は「日中不再戦」の一点で共同し事態の打開のために奮闘しよう。
