参議院議員 舟山 康江 さん
参議院議員の舟山康江です。今年7月の参議院選挙で、無所属・野党統一候補ということで、山形県から立候補して当選しました。
私は4年前まで民主党にいましたが、TPP(環太平洋経済連携協定)、原発再稼働、消費税増税という「3点セット」に反対して民主党を離党し、「みどりの風」という小さな政党を立ち上げて、亀井静香先生とともにその翌年の参議院選挙を闘ったわけですが、残念ながら僅差で敗れました。
その後は、いったん政治から離れて、地元である山形県で今日参加している渡部務さんといっしょに、「置賜自給圏」ということで、グローバルな社会のなかでも、ローカルを大事にしていかなければいけないということで、地域自給の仕組みというのをつくる運動をしてきました。
亀井先生とはそういう関係で、以前から意見交換をさせていただいています。私は前回の選挙のときも「日本を守る」「日本らしさを守りたい」ということを言っていました。よく、「保守・革新」と言われますけど、私は本当の意味での「保守」、国を守る、地域を守るという基軸をもつことが、まさに今の対米追従の物事の考え方から抜け出すいちばんの基軸になると思っています。亀井先生のお話を聞いて、本当の保守だと思いました。「壊すのではなくて守る」ということをキチッと基軸にもっています。
日米地位協定と「密約」見直せ
日米地位協定をどうするかは非常に大きな問題だと思います。私は今回の選挙で明確に、公約のなかで「地位協定の見直し」ということを掲げました。この地位協定そのものもそうですが、これに関連するさまざまな日米2国間の「密約」もあります。「密約」といっても、アメリカでは、公文書の管理期限が過ぎたものは、全部表に出ています。そういう表に出た「密約」のなかで、例えば、基地の移転をするときも許可・協議なしにアメリカが一方的に場所を変えられるとか、そういう規定が全部入っているわけです。やはり、ここを見直していかないことには、なかなか前に進まない。「在日米軍駐留経費負担特別協定」などの協定は国会の議決も経ずに、政府内ですべて決まってしまいます。私は参議院で民進党会派には入っていますが、無所属で複雑な立場です。しかし、このあり方をキチンと見直すような議論は民進党にはしていただきたいと思います。
大企業利益優先から国益・国民益優先へ
なぜ、アメリカの大統領選でトランプ氏が勝ったのかということをキッチリと分析する必要があると思います。確かに選挙期間中は過激な発言などもありましたけど、やはりあれだけの得票を得たのは「田舎の反乱」という側面が大きかったと思います。グローバル化、新自由主義のトップランナーのアメリカもこの負の部分の影響を強く受けていたと思います。そのアメリカで、恩恵に浴せなかった人びとが怒りの声を上げたのが今回のトランプ勝利につながったんだと思います。
一般的にはアメリカでは、民主党が労働者寄り、共和党が企業寄りという見方がありました。しかし、ここ最近、民主党はグローバル企業から多額の献金をもらって、TPPを進めるなど、大企業、富裕層寄りの政策をとってきました。
最近、衝撃的な話を聞きました。それはアメリカ国内で、白人の男性で大卒以上と、高卒以下の方々の平均寿命が何と15歳も違うというのです。十数年前は5歳ほど違ったようですが、それだけ環境や食生活や境遇の違いのなかで、これほど平均寿命が違うというのは相当アメリカは病んでいるということです。
グローバル化の恩恵というのは、ゼロではないですが、その恩恵が一部の富裕層に集中してしまい、「1%対99%」と表現されるような現状に、いよいよアメリカ国内でも、人びとが「ノー」の声を上げ始めたのが今回の大統領選の結果に結びついたと思います。
日本ではTPPに対して労働組合はそれほど反対していませんが、アメリカではTPP反対の急先鋒は労働組合です。グローバル化のなかで雇用が著しく傷つけられました。日本も同じように、グローバル化、新自由主義に対して、もう一度立ち止まって考えるべきいいチャンスをもらったと思っています。TPP発効はほぼ絶望的です。日本政府が出した経済効果分析でも、TPPよりも、アジア、中国を中心としたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の方が経済効果は高いとしています。「TPPに乗り遅れたら中国に負ける」という中国脅威論で、TPPに突き進む安倍政権の神経は分かりません。互恵で、それぞれの国の発展段階を認めるような自由貿易こそ必要です。
自民党は真の「保守」にあらず
守るべき国のありようとか国柄、国益をキチッと考えるというのが政治、外交の基本姿勢であるべきです。それは防衛政策でも同じで、さまざまな外交手段や対話などのソフトパワーと同時に、専守防衛で自国は自分でキチンと守るという矜持をそろそろもたなくてはいけない時期にきています。「アメリカ軍には出て行ってもらいたいが、9条があるから自分の手を汚したくない」というのは違うと思います。現行憲法のなかでも専守防衛、最低限の自衛力をもつということは意思としてもたないといけない。
多国籍企業の利益よりも国民を守ることが、「内向き」で、保護主義的とも言われがちですが、政治というのは、国民の利益を守るためにあるわけです。企業の利益が優先された部分を、国民の利益を守る方向へカジを切る。もはや、自民党は本当の意味での「保守」ではありません。自民党が「保守」であるかのようなねじれた意識を変えていくことが、亡国の道を打ち破っていく道だと思います。