沖縄 ■ こどもの貧困問題

『沖縄県こども調査』

「給食費無償化」は苦しむ子育て世代の叫び

沖縄市議会議員 高江洲 みどり

 沖縄市は県内第2の人口14万人の町です。国際文化観光都市を掲げ、スポーツ振興による経済活性化策やインバウンドを呼び込もうと動物園の拡張工事が進められる一方、県内でも低い市民所得、子どもの貧困問題、人口減少・高齢化、嘉手納基地による航空機騒音や治安悪化など、市民生活はさまざまな課題に直面しています。
 この町に暮らし始めてちょうど10年。二人の小学生を育てていますが、長女が小学1年生になった2年前、給食費の値上げ問題が起きました。それがきっかけとなり、友人らと共に給食費の保護者負担軽減を求める署名活動を展開する中で、多くの保護者が給食費の負担に苦しんでいることを痛感しました。署名活動だけでは、なかなか助成制度が実現しない現実を目の当たりにし、この現状を変えたいとの思いから今年1月に行われた市議会補欠選挙において、給食費無償化を公約に掲げ初当選しました。

助成求める保護者の声

 昨年まで市民活動として取り組んでいた半額助成を求める請願署名活動の中で聞いた保護者の声を紹介します。
 ある保護者は「値上げのお知らせが学校から届き、おかしいと強く思った。でも、どうしてよいか分からなかった」と話しました。
 小学生から大学生まで4人の子を育てている保護者は、県外にいる大学生への仕送りを優先せざるを得ず、小学生の給食費を2カ月滞納した苦い経験を話してくれました。全く知らない保護者からも問い合わせがあり、「ぜひ署名したい。県内で無償化が進んでいるのになぜ沖縄市は動かないの? 半額でも助かる。小学生一人だけだが、その子が学校から教材費の徴収金袋を持ち帰って来るたびに、その月の家計が苦しくなる」と。電話の向こうのその声が、助けを求める切実なものだったのでいまだに忘れられません。
 2024年2月に提出した給食費半額助成を求める請願書には4604筆の署名が集まり、6月議会にて委員会全会一致採択したものの、本会議でまさかの否決。その後、再び署名活動を展開し、4655筆を12月議会に提出したものの継続審議に。今年2月、6月も継続審議で先送りばかりで、保護者の間には憤りが広がっています。

県民所得全国最下位の中で

 先月、沖縄県が発表した『沖縄県こども調査』によると「教育費の中で経済的負担が大きいもの」は、小5保護者では給食費が第1位、中2保護者では給食費は第3位となっています。沖縄では米軍統治が長かったため、いまだ児童福祉も遅れています。
 特に学童保育では公設が極端に少なく民間の学童クラブ主体となっています。そのため、学童利用料が月1万円程度、長期休みには1万5千円以上にもなります。『沖縄こども調査』にも、学童保育料が高すぎるという声があり、県民所得は全国最下位の中、給食費や学童利用料の他、さまざまな支払いに追われる保護者の姿があります。
 令和7年度、沖縄県では中学生の給食費半額助成制度が開始されました。それに伴い県内で無償化が広がり、中学校で27市町村が無償化、小中無償化は23となり、過半数を超えました。その一方で、小学生への補助なしはわが沖縄市だけ、と大変残念な状況になっています。
 「給食費無償化」は、教育を受ける子どもの権利保障や義務教育無償化の当然の要求です。でもなにより物価高に苦しむ保護者の悲痛な叫び声です。引き続き、保護者と共に粘り強く声を上げ、議会でも訴え、安心して子育てのできる町をつくっていきたいと思います。