第21回全国地方議員交流研修会への問題提起

「日本を変える! 地方から変える!」

広範な国民連合事務局長 山本 正治

 ご参集の皆さま方! ご参加ありがとうございます。また、受け入れ準備にご努力いただいた北海道現地実行委員会の皆さま、大変ありがとうございます。ご来賓の皆さま、ご講演などいただいた皆さま、改めてすべての皆さまに深く感謝申し上げます。

1、はじめに

 高市早苗氏を首班とする自民維新連立の政権が21日に発足したなかでの交流研修会となりました。石破政権から政治状況は大きく変わります。冒頭の山内末子共同代表(沖縄県議)のあいさつにはじまって多くの皆さまからご指摘がありました。この政権下で私たちは地方自治、住民福祉と平和のためにいかに奮闘するか、どう政府に立ち向かうか。
 アジア侵略戦争敗戦80年、戦後80年の今日、全国の自治体は置かれた状況も課題も異なります。しかし参加の皆さまは、政治的立場、意見の相違を超えて自治体議員として交流し、研修し、共に方向を模索し、人びとの要求に応え地域を、自治体を発展させ、平和で豊かな国を創るため、可能ならば共同の努力を進めたいとの思いを共有しています。
 ですから問題の指摘と学びにとどまらず、どう打開するか対案、政策方向を鮮明にし、そして共同の努力を確認する交流研修会にできればと願っております。

2、今回の交流研修会の呼びかけでは要旨次のように提起しています

 低賃金・非正規化や貧困拡大が放置され、年金・介護・医療などの社会保障が大幅に後退、そこに物価の高騰や主食であるコメ不足等、蓄積された不満や不安のなかで、国民はこれまでの政治を拒否し、現状の打開と政治の変化を求めました。
 ところが参院選でも、戦後80年の節目にわが国が直面している喫緊の課題は争点になりませんでした。戦争を回避すること、気候危機対処などで中国や韓国はじめアジア諸国の連携強化が急がれます。経済的格差の是正、食とエネルギーの自給、社会保障や防災・インフラ整備の確立も待ったなしです。国民生活を持続可能で豊かにするために日本社会の立て直しが求められています。
 なかでも、衰退する米国が「自国ファースト」で関税攻撃などわが国にさらなる負担と犠牲を押しつける今こそ、対米従属からの脱却、自主・自立の国づくりが求められます。
 こうしたなか、各自治体、地域で活動するうえでも大きな政治方向が問われています。
 この交流研修会を通じて、これからの自立の日本社会を構想し、全国の地方議員の連携を大いに広げて、地方から政治を変える力をつくっていきましょう。
 ――「地方議員の連携を大いに広げて、地方から政治を変える力」をつくっていく。こうした呼びかけの下、皆さまがご参集くださいました。

3、共通テーマは、「日本を変える! 地方から変える!」

 昨年の総選挙につづいて参院選でも自公与党敗北。石破茂首相が辞任表明。公明党は自民との連立政権から離脱。そして自民党と維新の会の連立の高市早苗政権へ。
 戦後70年にわたって長く続いた自民党政治の終わりの時期だと多くの指摘がなされています。
 例えば政治学者の御厨貴さんは次のようにこの局面を論断していました(「溶解する戦後政治」朝日新聞10月16日)。「戦後80年、これまで当たり前だと思ってきた戦後政治のシステムが溶解している」「自民公明の連立が終わることは大きな変化。平成時代に定着した政治システムもこれで幕を下ろす。しかし、それだけではありません。私たちは戦後日本政治の大いなる曲がり角、戦後政治の終わりとポスト戦後政治と呼ぶべき、まだ名もなき時代が始まるという大きな分水嶺に直面している。
 これまで隠されてきた日本政治のさまざまな問題点を白日の下にさらし、解決策を模索する時。それは国会議員や政治家だけでなく、国民全体の課題」――と。
 そもそも石破氏は首相になる前の昨年7月、自著『保守政治家』で、「私などが首相になるようなことがあるなら、それは自民党や日本国が大きく行き詰まった時だ」と指摘していました。そして首相に本当に就任した。石破政権の登場は本人が語っていたように、文字通り、自民党も日本国も「大きく行き詰まった」その証しであった。そして打開できずに1年で退任に追い込まれた。
 米国に縛られた下で「経済大国」をめざした戦後日本と、それを進めた自民党も、石破さんの言う通りの「大きく行き詰まった」状況です。経済も社会も政治も、対米従属の戦後日本の完全な行き詰まりです。根本的打開が求められています。
 高市さんにはその自覚もないようです。衆院選でも参院選でも国民の支持を大きく減らした自民党と維新の会です。日本のこの危機を打開できるはずがありません。
 戦後80年、「戦後日本政治の分水嶺」に直面し、「解決策を模索する」。それは文字通り「国民全体の課題」です。地方議員の皆さんが先頭に立たれることは大変重要で、意義深いことと考えます。
 「日本を変える! 地方から変える!」
 これがこの交流研修会全体の共通テーマ、課題と言えると考えます。

4、そこで四つほど具体的な共同の提案をさせていただきます

①排外主義に反対し、東アジアの平和、「多文化共生社会」をめざすことです。
 参院選では、「日本人ファースト」などと唱える政党が一定の支持を集め、多くの政党が追随し「外国人問題」が争点化させられました。それは国民の著しい貧困化など日本社会が行き詰まって、打開を求める国民の願いのねじ曲がった反映とも言えます。
 こうした中で参院選直後の7月23~24日、青森市で開かれた全国知事会議は「青森宣言」を全会一致で採択し、「外国人の受入と多文化共生社会実現に向けた提言」も発表しました。そこでは「排他主義、排外主義を否定し、多文化共生社会を目指す我々47人の知事がこの場に集い、対話の中で日本の未来を拓くに相応しい舞台となった」と、排外主義を否定し多文化共生社会をめざす方向を鮮明に示しました。さらに、「誰一人として置き去りにしない」「平和的で協調的な社会」「真の地方創生の実現」を唱えています。この全国知事会の提起は重要で支持できると思います。
 この交流研修会では、排外主義反対で共同アピールを出せればと考えております。共同代表の提案として案文も準備させていただいております。ご検討ください。
 全国知事会などとも歩調を合わせながら、排外主義反対、平和、多文化共生社会のための共同を進められればと思います。
②社会保障の確立をめざして、自治体議員が全国的に共同した運動を進めるためのネットワーク、議員連盟を呼びかけます。
 すでに行われた2回にわたる第3・第4分科会合同での事前学習会の中でもそうした方向が検討、確認されています。呼びかけ案文も提起しております。――
 「実質賃金が長く上がらない中で国民生活は疲弊し、物価高の影響も含め貧困と格差が拡大している現在において、公的責任の後退と公費抑制政策によって社会保障制度が不十分な内容にとどまれば、大多数の国民が生存の危機にさらされると言っても過言ではない、待ったなしの状況です。
 だからこそ今、このような日本の社会保障が当面する現状を転換し、足元で進む社会の分断や世代間対立の激化、排外主義の台頭や政治の流動化と再編の中で、国、自治体が本来の公的責任を取り戻すために、『社会保障の確立を求める自治体議員連盟』の設立を提起いたします。
 岐路に立つ日本の社会保障の政策転換と充実のために、私たち自治体議員が先頭に立ち、当事者、各種団体、各界各層の国民と連携し、あるべき社会保障の確立を目指しましょう!」
 分科会で議論を進めていただき、報告も聞き、全体でご検討いただき、皆さまの参加を呼びかけます。
③「食料自給の確立をめざす議員連盟」と「日中不再戦地方議員の会」をいっそう発展させましょう。
 一昨年の長崎での交流研修会で確認されて発足した「食料自給の確立をめざす議員連盟」と九州地方の「日中不再戦・友好交流を進める地方議員の会」は着実な前進を遂げています。食料自給議員連盟は何度も対政府要請行動を行っていますし、各議会での意見書採択など進めております。もっと多くの議員の皆さま方に議員連盟に参加していただきたい。
 また、来年度からはまだ小学校だけですが学校給食の無償化が国レベルで始まります。すでに鈴木先生の問題提起にもありましたが、この機会にすべての学校給食の食材を地元産でまかなう取り組みなども呼びかけたいと思います。
 九州の日中不再戦議員の会は昨年と今年と2回訪中団を派遣、日本の中国侵略の歴史認識を深め不再戦を誓うとともに友好交流強化を確認し、帰国して報告会活動などを進めています。この会を全国各地、全国に広められればと願っております。すでに神奈川県でも議員の会が立ち上がって、最近、沖縄選出の伊波洋一参議院議員を招いた学習会も成功させています。
 これらの地方議員の連携した運動をさらに強化発展させようではありませんか。
④日米地位協定改定へ自治体議会から世論を喚起・発展させるための努力を呼びかけます。
 本年1月、沖縄での前回交流研修会では、日米地位協定の抜本的な見直しを求める決議を採択しました。その要旨は――
 「日米地位協定の見直しは米軍基地が集中する一地域の問題だけではない。わが国の外交・安全保障、国民の命・人権、環境問題、何よりも日本の主権の在り方が問われるという国民的課題である。
 日本と米国が対等な立場で互いに主権を認め合うことこそが必要不可欠である。
 全国各地から集った地方議員交流研修会は主権国家の矜持をもって連帯して、地位協定の抜本的見直しを全国に広く発信し、全国地方議会で決議し、国民世論を盛り上げるため努力することを確認した。
 もって、日米両政府に対し日米地位協定の抜本的な見直しを強く求めていくことをここに決議する」
 この決議を踏まえて2月6日、対政府(外務省および防衛省)要請行動を行いました。
 その後も、全国の自治体議会で地位協定抜本改定を求める意見書採択が佐賀県鳥栖市議会3月議会を皮切りに進んでいます。
 とくに神奈川県では県議会と全市町村議会に意見署採択を求める活動が取り組まれ、6月議会で6自治体議会が、9月議会でもいくつかの議会で意見書が採択されています。議会決議を求める市民サイドでの取り組みも活発で、まもなく11月8日には若者中心の討論会の準備も進んでいます。
 この課題は明日の第1分科会で報告・議論をしてもらいます。
 それも踏まえながら、自立の日本をめざして、不平等で日本の国家主権を一切放棄させられた日米地位協定の抜本改定へ、世論を喚起、いっそう発展させたいと考えます。
⑤最後は、アジアの平和・共生へ「全国自治体議員訪中団」の呼びかけです。
 九州の日中不再戦の議員の会の訪中にはすでに触れました。若者訪中団の報告もありました。若者たちはこの12月にも、こんどは大虐殺のあった南京への団を準備中です。
 全国地方議員交流研修会の仲間たちの団で一緒に訪中し、「日中不再戦」を確かなものにしませんか。11月に全国地方議員訪中団を準備しましたが、中国側の事情で延期になりました。
 来年2026年4月下旬ごろをめどに訪中団を送りたいと予定しております。
 80年前に終わった日本の中国大陸侵略戦争の跡地を訪ね、また一方、その破壊の中から立ち上がり世界最先端の経済社会を実現した中国の発展にも学び、何よりも平和と安定発展を望む中国の人びとと交流し、東アジアの平和を確かなものにする機会となればと思います。

5、二つの企画のご紹介

①「沖縄を平和のハブに東アジア対話交流」2025シンポジウムの呼びかけです。ご案内チラシがお手元にあろうかと思います。
 この運動は3年前に沖縄で始まりました。そのころから「台湾有事は日本有事」が盛んに叫ばれ、長距離ミサイルでの「敵基地攻撃」など中国をにらんだ米軍と自衛隊の大軍拡・戦争準備が全国で進んでいます。沖縄はその最前線で、「再び戦場」にされる危険に直面させられています。危機感も高まっています。今日の最初に共同代表の山内末子沖縄県議が報告してくれた通りです。
 高市首相の所信表明演説でも辺野古新基地建設は触れられていますが、戦争の危機をあおるだけで今も頻発する女性への米兵性暴行事件など沖縄県民の苦難に寄り添う姿勢はいっさい見えません。
 全国で自分ごととしてとらえ、全国で「沖縄に連帯し、再び戦争を起こさせない」闘いを発展させたいと思います。
 琉球王国時代からの「万国津梁」(万国の架け橋)の沖縄です。沖縄をハブに、中国・韓国あるいは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、東アジア一帯の友好連携を促進し、平和的発展をめざす運動です。この取り組みについては羽場久美子先生も触れてくださいました。
 お集まりの皆さまが那覇市でのシンポジウムに参加いただければ一番ですが、オンラインも含めて全国から連帯を寄せていただければ幸いです。
②「日本を変える!政治を変える!」大討論を2026年1月末に準備中です。ご注目ください。
 昨年の大討論は、広範な国民連合の主催でしたが、鳩山由紀夫元総理、山崎拓元自民党副総裁はじめの参加でいわば共同で開催いたしました(お手元の昨年11月の『大討論の記録』を参照ください)。
 来年の企画もわれわれが責任は負いますが、できるだけ広範な方々と共同できればと考えております。若い方々中心の企画運営になればと願っております。
 いま日本は岐路にあります。とくに高市首相の「日本再起」策、「強い経済。日本列島を強く豊かに。世界の真ん中で咲き誇る日本外交」、「日本人ファースト」では国民の生活苦は一段と深刻で、アジアの平和も破壊されます。
 私たちは、「もう一つの日本」像、国民生活が豊かで、差別がなく人権が保障され、アジアの平和共生の未来を描き、共有したい。「国民全体の課題」として具体化していきたいのです。
 もちろん国政の課題ですが、地方議員の皆さまの役割には大変大きなものがあると確信しています。重要なことは、農民の皆さんが消費者である市民と共に立ち上がった「令和の百姓一揆」のように地域での大衆行動です。国民運動です。労働組合などにも呼びかけたい。
 共に挑戦しようではありませんか。
 長くなりましたが、ご清聴ありがとうございました。3日間よろしくお願いします。共に頑張りましょう!