アジアの平和と未来をひらく若者訪中団

中国大使館で訪中報告会(9・18)

 アジアの平和と未来をひらく若者訪中団の報告会が東京の中国大使館において「満州事変」の柳条湖事件の歴史的日の9月18日、開催された。この団は中国大使館の大きな支援に支えられ実現した。そのお礼を兼ねた報告会であった。
 呉江浩駐日中国大使はじめ大使館メンバーと、訪中団のうち東京・大阪・福岡・長崎・沖縄から集まった14人の若者などとの交流が実現した。
 参加者はそれぞれ、訪中団に参加した動機、印象に残った出来事、感想、今後の活動への決意、そして多大なる協力を寄せた中国大使館への謝意を述べた。ある参加者は、自身が大学で国際交流ボランティアを運営している立場から、中国人留学生との交流を通じて日中関係をより深く学ぶために参加を決めたと発言。
 若者たちの体験共有は今後の日中交流の架け橋となる意義が確認され、改めて中国大使館への深い感謝の言葉が伝えられた。報告会では最後に呉中国大使が感想を述べられた。
(見出しも含めて文責編集部)

 呉江浩駐日中国大使の発言

重い侵略の歴史だが、長い双方向の関係のごく一部

 青年交流には、実は私も若い時に参加しておりました。当時は、日本政府や民間、経済界のお金をもとに、中国から10万人という規模の青年を招聘してくれました。私は非常に楽しい1カ月間の日本旅行をした経験があります。北から南まで、沖縄は当時行けませんでしたけれど、長崎、広島にも行ったことがあるんですよ。
 ですから、ある程度中国の経済も伸びてきて、何とか双方向の交流をしなければいけないということで今はやっております。なるべく多くの若者たちが今の中国に行って、今の中国を知っていただく。こういうチャンスを作りたいなと思っております。ですから、皆さんの訪中団なども、私の仕事の一環としてでもあるんですね。
 実はこの交流事業は1月から12月まで年中やっております。たまたま皆さんの行く時期は、8月という中日両国の近代史において非常に代表的な日にちが多かったということで、戦争の実態を皆さんに知ってもらうところの見学もしましょうということになりました。
 北京とハルビン、当時の歴史を再現する代表的な場所を皆さんは見学されました。
 気持ち的には、最初から最後まで楽しい訪中ではなかったと思います。いろいろな歴史的事物が目に入って、いろいろな交流の中でも楽しい話題は少なかったと思います。
 しかし今、皆さんたちの感想を聞いて、私も今回の旅は大変価値あるものを作ったと思っております。また、日本の若い世代、中国の若い世代に将来を委託することができると信じております。
 あの歴史の始まりは、まさに今日9月18日に起きた「九・一八事変」から始まって、1945年までの14年間。これは中国の当時の国民にとっては確かに大変な、大変な14年でした。戦争で亡くなった、あるいは負傷した人たちは実に数多い。抗日戦争紀念館に行った皆さんも見ているかと思います。
 80年たった今も、昔の戦争に対する中国人の記憶というものが非常に深くあるのは、事実でございます。

過去の日本のこと、ましてや国民には責任はない

 しかし一方、あくまでこれは80年前のことです。じゃあ今の日本国民にその責任を負ってもらうのかどうか、そうではない。これは習近平総書記もはっきりと言っておりました。今回の抗日記念の行事も、今の日本に向けることではなくて、なおさら今の日本の国民に向けることではありません。ましてや皆さんは、私の娘よりもお若いですから。
 戦後の中日間の歩みも非常に喜ぶべく、お互いにとって非常にプラスになることも多々ありました。ですから大使として一言、若い皆さんに言っておきたいのは、これからの中国訪問の時に、今の日本人として罪悪感を持って行くということはないようにしてほしいということです。
 しかし、歴史的に長い中日関係において一時期のことです。しかし、将来に向けて、同じようなことを再びやってはいけない。こういう思いを、信念をぜひ重ねていただきたい。
 さらに重要なのは、そのために何をしていったらいいのか。これをぜひ一緒に考えていきたいと思います。
 今の中日関係は、いろいろなお話のように複雑な時期にあります。しかしそれと同時に、毎日のようにお互いの国民が行き来し合っているし、交流もしている。民間での交流、経済関係は強く、中日の貿易額は、すでに十何年来、毎年3千億ドル以上になっています。中国での日本の投資企業は3万社です。
 中国側も、これから対日投資を進めたいと経済界が躍起になっています。この大使館に国内の経済人が尋ねてきて「どうしたらいいのか」と相談がいくつもあります。産業協力という意味での投資を大使館としても、ぜひこれから押し上げていきたい。

未来に向けて楽しい関係をつくろう

 とにかく、お互いの絆、お互いの共通するところ、これを大きくしていく。歴史を鑑にして、新しい平和的、協力的未来を作っていく。
 もちろん、昔何もなかったとか、中国人が噓ついているとかいうような日本の意見に対しては、われわれは勇気を持って向き合わなければなりません。そうしなければ、同じようなことが起こるかもしれない。歴史はよく繰り返されるという言葉もある。
 しかし、それにしても縛られることなく、もっと将来に目を向けて、確固たる楽しい、明るい関係を作っていこう。いろいろ問題がある中でも、中日の間で再び80年前、90年前のようなことは起こることはないと思います。日本も戦後、平和国家として生まれ変わった。中国も成長してきている。極めて不正常な大日本帝国の時代は終わっています。
 今、日本国内にいる人たち、極端に右の人たち、同じことをやろうとしても、日本の中で国民全体の世論を受けることはないし、中国もそれをさせない。こういう現代の構図になっているから、安心して前向きに物事を考えていくことができる。

ただひとつ米国の批判になりますが

 唯一、中日だけの2国間の戦争はなくても、アメリカ批判になりますけれども、アメリカの世界戦略に日本が巻き込まれないことが重要です。
 特にここ数年、そのリスクが顕著になってきております。台湾問題についても、トランプ政権のヘグセス国防長官が日本にやってきて、「台湾有事の時には、日本は最前線で戦うんだ」こう言うんですよ。これ、今の日本に対しては侮辱だと思います。何でアメリカは遠い国に対してそういうことを言うのか。
 もちろん、ああいう戦争があって、日本が負けて日米同盟になった。しかし、最初にアメリカが言ったのは、「日米同盟で日本を守るんだ」と。「日本に戦ってもらうんだ」ということを一言も言っていない。それが変わりつつある。これは要注意ですね。
 それ以外は、できるだけ小異を少なめにして、大同に就くという考えで。もっと楽しい、もっとお互いにプラスになることを、一緒になってたくさんしていきたいと思います。
 改めて、今日は皆さん、ご来館ありがとうございました。