有史以来の命の大危機なんだ
菅野 芳秀・「令和の百姓一揆」代表
今日はたくさんの意見が出まして、一つひとつとても大切な意見です。それを皆さま方が本当に真剣にお聞きになって、心に刻み、わが里に帰った時にはこれをやろう、あれをやろうというふうな形でお聞きになっていたと思いますので、私があえてまとめる必要はないと思います。
ただ私は、山形県置賜地方の米穀地帯のど真ん中にいる百姓の一人として、文字面の危機じゃなくて、本当に危機なんだと言いたいんですね。そのことをどういう言葉で伝えたらいいかということがわかんなくて、ずっと考えています。
1947年の農地解放によって475万人の自作農が誕生しました。それが今は70万人を切ろうとしています。ほぼ400万人が辞めた。
ムラも維持できない、水田を耕し続けることもできない。そういう境地に追い込まれている農民の平均年齢は、米に限っていえば70歳を超えていますよ。私はもう75歳だけど、私なんかまだ若手なんです。村の重太郎さんが83歳、けんさんが85歳で百姓やっているのは、後継ぎがいないからですよ。
こういう状態の中で、今の水田面積をそのまま耕せるのはあと何年だと思いますか? 5年ないかもしれません。あっても7年。国民の食糧生産が追い込まれているということを知ってほしい。
これは有史以来の一大危機だと思う。縄文時代から今日まで人々は米を作り続けてきた。大変な時代も大変な時期もあったんだけど励まし合いながら、米を作り続けてきた。けど今、その襷を受け取ってくれる人がいない。米作りが続かない、国民の主食が続かないという局面にあるんですよ。これは本当に命の危機です。これが今の問題なんですよ。
襷つなぐのが
われわれの務めだ
日本の水田農家は減反を受け入れてきたけど、それは他に作る用意のある農家がたくさんいるからで、それが農業の危機に直に結びつかなかった。でも今、農地を引き継ぐ人がいないんですよ。それをどうするかというのが令和の百姓一揆なんです。
そういう問題を私たちは抱えて今生きている。それを忘れないでもらいたい。とにかく、必死の覚悟でやる必要がある。
原稿書きながら思ったのが、知覧の特攻で死んでいった若者たちです。彼らは何を思って散っていったのか。彼らの手記を読むと、「未来世代に願いを託して死んでいく。そこがある限り私たちの死は無駄にならない」というような言葉がいっぱい書かれているんですよ。
彼らの子ども世代がわれわれです。彼らの日本を思う襷、未来を思う襷を受け取って、われわれはいったいどう生きてきたのかということを、本当に反省していますよ。
だから、これから残された期間があるとすれば、全力で日本の農業を守るために、日本の農村を守るために頑張りたいと思っています。先ほど国会議員の皆さんが話されましたね。俺は思うよ、命懸けでやってくれと。こんな危機はないんだから。命懸けでやってくれよと本当に思います。
そして、私たちはそれを言う以上、われわれも先頭に立つよと。一緒にやろう。国民の命の危機がすぐそこまで来ているんだから、主義主張、信条を超えて、みんなで連携しながら、やって、やって、やりまくろうよと。これが今を生きるわれわれの務めなんだ。時代的務めなんだというふうに思っています。一緒にやりましょう。