沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流

那覇で6月24日シンポジウム 「沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流」

戦争回避へ 抑止ではなく対話と外交を

 シンポジウム「沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流」が6月24日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。同プロジェクト実行委員会(共同代表:羽場久美子青山学院大名誉教授、前泊博盛沖縄国際大学教授、髙良鉄美琉球大学名誉教授。略称「沖ハブ」)主催、沖縄の対中経済交流を進める企業家の集まりである(一社)琉球経済戦略研究会(略称琉経会)が共催。冒頭、玉城デニー沖縄県知事、鳩山友紀夫元首相が来賓あいさつした。パネル討論が、外交・安全保障、経済、次世代トークの3分野で行われた。政治家や国内と中国の有識者、経済人、若者ら11人が登壇した。「次は東アジアだ」と政府が戦争を煽るなかで、平和を構築するために抑止力強化ではなく外交努力を求めるとともに、沖縄がハブとなって東アジア諸国・地域との対話と交流を深めていく重要性を確認した。


 アメリカが画策し岸田政権が呼応して、わが国では前のめりで中国敵視の敵基地攻撃の大軍拡が進む。こうしたなかで昨年に次いで開かれたシンポジウムと文化などの対話交流の運動はさらに発展した。中国敵視の抑止に対しては対話と外交で平和と繁栄をめざす方向を確認し、沖縄がハブとなって地域の対話と経済・文化など幅広い交流を促す重要な取り組みとなった。

山崎拓氏「台湾問題は
中国の内政」強調

 実行委員会髙良共同代表が開会あいさつを行った後、来賓あいさつ。玉城知事はあいさつの中で、安全保障環境変化を口実に政府が南西諸島へのミサイル配備など軍事力を強化していることに触れ、「多くの沖縄県民は、軍事力による抑止のみではかえって地域の緊張を高め、不測の事態が発生するのではないかと強い不安を感じている」と指摘した。その上で自治体や地域間の交流を県が積極的に進めると述べ、「平和的な外交、対話による緊張緩和や信頼醸成に向けたこのプロジェクトは意義深い」と評価した。
 鳩山元首相は「周辺地域の国々が、武力による解決をさせないということだけを誓い合い、沖縄で議論する。考え方が同じでなくても、相互に尊重し理解し合って、必要なら助け合うという友愛の精神で議論し解決の糸口を探っていく」と提起した。
 シンポジウム第1部では病気で欠席の前泊共同代表に代わって髙良共同代表がコーディネーターを務め、「沖縄平和ハブ構築に向けて」と題して、安全保障や外交をどう進めるか討論された。元自民党副総裁で防衛庁長官も務めた山崎拓氏と劉江永中国清華大国際関係研究院教授、我部政明琉球大名誉教授、羽場久美子青山学院大名誉教授の4人が議論した。
 山崎氏は「台湾は中国の不可分の領土であることを日中共同声明でも平和友好条約でも確認し、台湾問題は中国の内政問題である。そこで独立の動きなどが強まることがあれば中国は武力を使ってでも阻止するため動くだろう」と強調。米国が介入すれば沖縄、日本が戦争に巻き込まれると警鐘を鳴らし、「戦争は絶対にさせてはならない。台湾は現状維持が一番、対話による解決が必要だ。日本政府は、中国や米国などと対話のための努力を強めるべきだ」と結んだ。
 劉教授は、日本の国家安全保障戦略などの安保3文書に触れ「日中関係が互恵関係から対抗関係に変化している」と指摘。軍事力強化を進める日本について「(戦前に)似ている現象が起きつつある。対話して平和の道を探ることが重要だ。台湾問題は、独立を回避させるのが、一番効果的でコストの低い安全保障だ」と訴えた。
 我部名誉教授は、沖縄の現状を民意が国に無視されている「政治的無人島だ」と表現。琉球王国が貿易により栄えた歴史を踏まえ「周りを平和で安定化することが沖縄の豊かさの前提。こうした状況をどうつくるか。周囲に頼るのでなく、そろそろ自分たちで物事を判断しないといけない」と投げかけた。
 羽場名誉教授は、沖縄が大国対大国のボーダー(境界線)に置かれていると現状を指摘、玉城知事が設置した地域外交室について「周囲の国と相互に交流を始めている。沖縄を中心にしながら周囲と結びつくなかで平和をつくっていくことが大切だ」とその意義を高く評価し、沖縄を平和のハブとする構想を提起した。

経済発展・繁栄、文化など幅広い交流が平和を築く

 第2部は、「経済トーク 福建・台湾・沖縄」と題して、泉川友樹琉経会事務局長(沖縄大学地域研究所特別研究員)がコーディネーターを務め、福建、台湾、沖縄の3人の経済人が意見を交わした。
 中国福建省廈門市出身で、分散型インターネット「Web3.0」の運用などを手掛ける陳海騰氏は「沖縄が古い産業でこれから他に追いつくのは難しい。沖縄がWeb3.0の特区をつくるなど、新産業に力を入れるべきだ」と提案した。
 台湾出身で、現在は上海で企業の代表を務める周鵬邦氏は「既存のリソースを総ざらいし優位性と不足を見極め、台湾や福建と交流することで補い合い、新しいサービスをつくることが大事だ」と話した。
 高品位尿素水を製造販売するフューチャーネオ(沖縄市)の比嘉盛太代表は、自らが滞在していた英国などで沖縄は知られていないと指摘。「沖縄の発展には一人一人の意識が重要だ」と話した。
 第3部は「次世代トーク」で3人の若者世代が意見交換。2021年の沖縄全戦没者追悼式で平和の詩を朗読した上原美春さん(15)は1994年、民族対立から大量虐殺が起こり、その後和解を経て発展したルワンダについて「非武装が夢物語ではないと、私に根拠を与えてくれた物語だ」と話した。「石垣市住民投票を求める会」代表の金城龍太郎さんは「助け合うゆいまーるを海を越えて隣の国にも広げていけたらよい」と話した。ゼロエミッションラボ沖縄の神谷美由希さんは「互いの社会問題を共有して、沖縄を中心に同世代で連帯したい」と話した。
 最後に、共同代表の羽場名誉教授が、昨年に続くシンポジウムの成功を確認し、玉城知事、鳩山元首相をはじめ登壇者、参加者への感謝を述べて閉会のあいさつ。
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 オープニングは、NEO Ryukyuの創作エイサーで幕開け。海の音楽隊from横浜による「世界と海と平和」、中国の西安交通大学外国語学院の学生による「小さな祈り」が動画参加。討論の後は「沖ハブ ツナガル コンサート!」でカクマクシャカ、福田八直幸、NEO Ryukyuがコラボライブで熱演。最後は、参加者一同のカチャーシーでフィナーレを飾った。
 また、会場の外、琉球新報社イベント広場あじまーるでは、「アジア美味いもの大交流祭」と銘打った企画。インドのスパイシーカレー、韓国のヤンニョムチキン、ベトナム風サンドのバインミー、中国の焼き小籠包&ちまき、それに沖縄そばなどの屋台が並んだ。
 文化、音楽や食など幅広い交流で、対話と相互理解を深められる企画であった。

(編集部 詳細は、次号に)