それぞれの島、それぞれの場所から
戦争の火を消し、平和のともしびを掲げよう
宮古島市議会議員 下地 あかね
2月26日、沖縄県庁前の県民広場は1600人の熱気に包まれました。昨年12月16日閣議決定された安保3文書は、沖縄本島を含む南西諸島へさらなる軍備強化を推し進めるもので、とくに島嶼部におけるミサイル部隊の配備は、有事の際に住民の命と暮らしを脅かすものになりかねません。与那国、石垣、宮古、それぞれの島からも参加する県民集会となりました。
私は宮古島陸自駐屯地の弾薬庫を抱える保良という地域に住んでいます。家から弾薬庫までの距離は約300メートル。住民の暮らしのすぐそばに建設される弾薬庫の配備に反対することから、活動が始まってきました。しかし、建設着手から5年がたち、駐屯地開設を経て、今や安保3文書に基づきさらなる軍備増強がされかねない状況にあります。
戦時国際法では「攻撃対象は軍事のものと限る」とする「軍事目標主義」を原則としています。沖縄戦の時、軍事空港が三つあった宮古島は沖縄戦終結をとうに過ぎた8月に入っても空爆がやまなかったといいます。軍事のものが置かれれば、そこは戦場になる。島外避難の計画を立てながら説明されるミサイルの抑止力は、島の人にとって何と危ういものでしょう。ひとたび抑止のバランスが崩れれば、私たちは故郷を失うのです。
こうした状況を背景に、しかし、日本全国における沖縄の声は小さい。また沖縄を見ても、自衛隊のことを悪くは言えないと、配備問題には触れたがらない空気も依然として強いものがあります。島々にしてみればなおのこと、配備反対の声を上げるとき、おもてに吹きつける冷たい風を感じます。
2・26緊急集会として集まった今回、年末にお話をいただいて、開催までに6度の準備会を経て話し合いを重ねました。配備の進む離島と、沖縄本島で温度差があるのではないかという思いもありましたが、その懸念が払拭されていく準備期間でした。
世代間の異なる意見を、うまく織り交ぜた集会のタイトルになりました。とくに「沖縄を平和発信の場に」としたサブタイトルは、この先、沖縄がめざす方向を見据えた素晴らしいフレーズです。緊迫すれば大きなリスクを背負う沖縄です。しかし知恵を出し合い問題を解決し、発展をめざす関係性を構築できるなら、地理的優位性を活用し、大いに活躍できるのもまた沖縄なのです。島の上にある暮らしを守り、先人から受け継いだ歴史を未来につないでいくためには、武力配備による緊張ではなく、対話を可能にする外交努力の道を選ぶ方がずっと良いはずです。
集会の冒頭では、山城博治さんが「島々を孤立させてはならない」と訴えました。それぞれの島で、声を上げていく難しさを感じています。それだけに、今回の県民集会は大きな意義があったと思います。島々から集い、またそれぞれの場所で闘ってきた市民団体や個人と、連帯を確認し、またその思いや決意の言葉には励ましと勇気をもらいました。
集会のリレートークで、非核と平和を願う「青い空は」が歌われました。「すべての国からいくさの火を消して」――。まだ冷たい風の吹きつける2月、県民広場には晴れた空が広がりました。それぞれの島、それぞれの場所から戦争の火を消し、平和のともしびを掲げよう。集会を重ねて、祈りの火を広げていく。島々を、沖縄を、そして日本を平和発信の場に変えていこう。あの日の熱を島へ持ち帰り、ささやかながら島内に、また遠くから宮古島を眺める人に掲げる光にしていきたいと思います。