未来につなぐ沖縄からのメッセージ
日本労働組合総連合会 沖縄県連合会(連合沖縄)会長 東盛 政行
連合は、社会連帯を通じた平和、人権、社会貢献への取り組みと次世代への継承を推進するため、幅広く国民的課題や地域の課題に対して役割を発揮し、戦争や大規模災害などの実相を風化させない取り組みを構築すべく、今年は「2020平和行動における戦後75年の取り組み」を準備してきた。
「未来へつなぐ」をキーワードに平和4行動(沖縄・広島・長崎・根室)以外の各地域において平和に関連する地元の戦争の歴史について学習会を開催し「連合の平和運動強化期間(6月~9月)」を中心に実施。また、全国をつなぐ取り組みとして平和の想いを「希望の旗~未来へつなぐメッセージ」として、次世代を担う若者を中心に各地方連合会を4グループに分け、グループ1枚の旗をリレーして完成した旗を、平和4行動の各集会で掲げ、若者代表から決意表明し、恒久平和の実現に向けた行動をより一層強化することを連合「第4回中央執行委員会(20・1・24)」で確認し取り組むこととなった。しかし、6月23日の「2020平和オキナワ集会」と24日の「ピースフィールドワーク」は残念なことに中止となった。「平和行動in広島(8月5日~6日)」も、「in長崎(8月8日~9日)」も、「in根室(9月12日~13日)」も中止となった。
「復帰」にもかかわらず
あらためて沖縄からこの戦後75年という節目の年を振り返る。沖縄県民は戦後米国による統治によって圧政に苦しめられ、二度と沖縄戦の悲劇を繰り返さないことをめざして労働者を中心に本土復帰運動に全身全霊をかけ闘い、戦争を二度と起こさない平和の島に対する願いを込め、1972年5月15日に日本に復帰した。
しかし現状は、依然として国土面積の0・6%の沖縄に、全国米軍専用施設面積の70%が集中し、米軍の事件・事故は後を絶たず日米地位協定の抜本的な見直しを求めるものの、日本政府の「運用の改善」だけで県民の財産や生命を脅かし続けている。
今年4月に米軍普天間飛行場から有害性が指摘されている有機フッ素化合物を含む泡消火剤が宜野湾市の河川等に流出、市街地にも泡が拡散した。これに対し米軍は原因を明らかにせず、周辺地域には保育園や学校があるにもかかわらず、普天間基地司令官は付近住民に謝罪することはなく、基地内の「流出対策が優先」と全く当事者意識がない発言に対し憤りを禁じ得ない。また、この泡消火剤の基地外流失事故は昨年12月にも人為的ミスにより発生したことが、米軍がまとめた「内部調査に関する報告書」で明らかになっている。これに対し、国、県、米軍の三者で実施した基地内での水質・土壌の汚染調査もいまだ公表されていない。
さらに、辺野古新基地建設問題に関しては、新型コロナウイルス感染症拡大対策で全国的に慌ただしい時期(4月21日)に、沖縄防衛局が辺野古新基地建設の設計変更申請書を沖縄県へ提出したことに対しても県民の怒りを増大させている。この設計変更は、大浦湾に軟弱地盤があることは1997年に調査し軟弱地盤の兆候が発見・指摘され、2016年3月の調査報告書でも軟弱地盤の存在を防衛省も認識しているにもかかわらず、辺野古への工事を強行し既成事実化しようとするものである。
許せぬ「二重基準」
玉城デニー知事は、翁長雄志前知事から継承した辺野古新基地建設阻止に向け、国との裁判は9度を数える。しかし、沖縄米軍基地問題など安全保障に関する訴訟に対し、司法の国に対する従属姿勢が透けて見える。県民が示してきた辺野古新基地建設に反対する選挙結果や県民投票の結果、さらには軟弱地盤の問題も含んでおり、今後司法がどのような判断をするのか注視していきたい。
ところが政府は、2017年に計画された地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について「唯一の適地」とした陸上自衛隊新屋演習場(秋田)への配備を地元が強く反対し理解が得られないとして断念するという事態となった。6月15日にさらに「イージス・アショア」の秋田、山口両県への配備を巡り、システム改修に大幅なコスト(日米で2200億円以上)と12年の開発期間を要するとして配備計画を停止すると発表した。
ここに沖縄との対応の違いが鮮明になってくる。沖縄県には辺野古新基地建設について軟弱地盤の改良工事等含め総工費が9300億円以上、工期が12年要する内容の設計変更の申請をして工事を強行しようとしている。これとの違いは何なのか。明らかに政府の「二重基準」としか言いようがない。
昨年、沖縄全戦没者追悼式において玉城デニー知事は平和宣言の中で、「沖縄の広大な米軍専用施設が今や沖縄の発展可能性をフリーズさせていると言わざるを得ない。県民の願いである米軍基地の整理・縮小と県民生活に大きな影響を与える日米地位協定の見直しについて日米両政府が責任をもって対処すべき重要な課題であり、国民にも米軍基地の問題は沖縄だけの問題ではなく、日本の外交や安全保障、人権、環境保護など日本国民全体が自ら当事者であるとの認識を持っていただきたいと願っている」と発言した。
安倍政権は一刻も早く「二重基準」で強行する辺野古新基地建設を断念し、その建設費を新型コロナ感染症対策費や経済・雇用対策費として国民に対し中小企業や困窮世帯へ振り向けるべきである。そして日米地位協定の抜本的な見直しをするべきである。
周辺国への謝罪を基礎とした関係を
戦後75年を迎えるにあたり日本世論調査会が実施した調査では、日本が戦後戦争をしなかった理由として、「憲法9条があったから」と答えた人が最多の47%に上ったことが分かった。
ここには太平洋戦争の反省に基づく憲法の「平和主義」が根付いていることが浮き彫りとなっている。しかし、若年層の「周辺国に対する謝罪の気持ち」について「持つ必要がない」とした考え方が増えてきたということは、第二次安倍政権が「一強政治」を推し進め右傾化してきたこと、同時に米国追従するあまり、他国に対する配慮を「弱腰」とする風潮がマスメディアやSNSを通して拡散・拡大していったことと比例するのではないか。
「自国ファースト」とするリーダーの考え方が広がりを見せる中、新型コロナ禍で世界のリーダーが各国と協調性を持ち、世界経済の安定化・恒久平和に向けて、難局を乗り越える方策を立てて取り組むべきではないか。常に「過去」を振り返り、襟を正し「世界の平和」につなぐことが今求められている。
沖縄から伝える想いは、「命どぅ宝・命こそ大切」「ゆいまーる・助け合い」の言葉であり、争いを好まず、人との和を大事にし、弱いものをいたわる沖縄の歴史や風土から生まれた。
世界が新型コロナ禍の中、「命どぅ宝」「ゆいまーる」の心で世界が一つにつながることが「恒久平和」につながるとの想いを込めて「未来につなぐ」メッセージとして送りたい。