安全保障とは国民の命と安全を守ること
「日本の進路」編集部
75年目の8月15日がやってくる。アジアで何千万の人びとの命を奪い、日本人も何百万人が命を落とした日本のアジア侵略戦争と太平洋戦争。そして沖縄地上戦と米軍の原爆投下による広島・長崎の惨禍。莫大な犠牲の上に今日の日本がある。
コロナ禍が加速し浮き彫りにした歴史の転換点で、過去の歴史をしっかりと振り返り未来を選択しなくてはならない。戦争をしない、させない政治、何よりも国民の命を守る政治。安全保障とは国民の命と安全を守ること、そして国際の平和を守り、諸国の共生を実現し、諸国民の命を守ることだ。
安倍首相は口を開けば、「国民の生命、安全を守る」、そのため「強い国」をつくると言う。ところが、その政権の下で、他国の攻撃によってではなく国民の命が次々と奪われている。これは人災、いわば政災だ。
コロナ感染症ですでに1000人を超す人が命を失った。いま、「第2波か」といった状況で、長く続く対処が必要になっている。国民の命を守る医療体制整備と生業の維持は喫緊の課題である。
さらに、今年も豪雨災害が短期間に相次ぎ、多くの人びとの命が奪われ、生活が破壊されている。秋には台風も必至だし、巨大地震・巨大津波もいつ来るか。感染症と災害がいくつか同時に襲ったら、一体どういうことになるか。
いま、抜本対策が問われている。「国民の命を守る」政府を実現しなくてはならない。真の安全保障はこの問題である。
グローバル世界経済は格差を限界まで広げるとともに、コロナ感染症を一気に世界中に広め未曽有の大惨事をもたらしている。産業革命以来の利益一辺倒の工業化は、地球温暖化で限界を教えている。ごく一握りの大企業・財界のための利益第一、効率一辺倒ではやれないところにきている。
持続不可能な日本は、自民党政権による国民の生命軽視の政治の結果だ。食料と再生可能自然エネルギーの自給確立は、国民の命と安全を守る一番の基礎だ。食料生産と森林、農林漁業と地方重視で、「一極集中」から「分散型」の国土形成をめざさなくてはならない。
沖縄はじめ在日米軍基地にコロナ感染症が広がっている。ところが対策の最前線にいる地方自治体には情報がほとんど入らない。米軍は検疫なしのフリーパス、地位協定に守られ特権的存在になっているからだ。これが日米同盟に基づく「安全保障」の姿だ。これでは国民の命を守るどころか、国民の命と安全の危機だ。自民党政権の主権放棄の結果である。
辺野古埋め立てとか、ステルス戦闘機F35を2兆4800億円で買うとか、何兆円になるかわからない敵基地攻撃能力とか、そんなことをやってる時か。これではコロナウイルスに感染しなくても、負担で生活が圧迫され生業が行き詰まり命を落とす国民が続出する。
いまこそ、政治のシフトを財界から国民へ替え、自主的で国民の命を守る政治が必要だ。
「医療崩壊」させない
コロナ感染者が東京・首都圏など大都市中心に再び急増している。ところが政府は、「Go To」政策を強引に進め批判が高まっている。もちろん、観光産業を含む経済は重要だが、直接の休業補償をすれば解決する。
政府は、これまでも保健医療財政を次々に削減しその矛盾がコロナ禍で爆発した。いまも、国民に「自粛」「自衛」を要求するだけで、責任ある感染症対策はほとんどない。ワクチン開発と特効薬が待たれるが容易でなさそうだ。
だとすると感染者を見つけ隔離し感染拡大をコントロールするための休業補償や国民の生活保障を整備すること、感染者を重症化させず命を守ること、この二つが政治の喫緊の使命である。
PCR検査がまず重要だが、周知のように諸国の10の1程度しかやられていない。感染者の隔離も不徹底で、現に東京都でも感染者の多くが自宅である。
第1波の時には「医療崩壊」が危惧された。日本医師会のCOVID-19有識者会議は中間報告で、「首都圏・関西圏などで感染爆発が生じれば、命の最後の砦である集中治療の本丸が崩壊し、地域医療の崩壊に連鎖する」と断定し、「いかに死者数を少なく抑えるかは、最重要課題の一つである。このためには、感染の拡大防止、重症化防止、そして、命の最後の砦としての集中治療体制の維持が重要課題」と提起している。座長を務めた西田教授は、「わが国の集中治療のレベルは高く救命率は非常に高いが、キャパシティーに余裕はほとんどなく、臨界点を超えると一気に死者数が急増する可能性が高い。東京都では第1波時に重症患者が急増し、あと少しで臨界点に達する状況であった。北海道では、第1波の影響が残ったまま第2波が積み重なりICUが埋まった。波の高さのみならず波の間隔をあけることの重要性が見て取れる」と指摘する。
ドイツではコロナ感染症の広がりを確認してすぐにICUの拡充に取り組み、短期間に倍近くに増やした。経済力や技術面ではない。政治の姿勢の差である。
命を守るには「命を守る人を大事にする」
最も重要なのは「看護師、医師のマンパワーの確保」である。ところが大きく報道もされたが民間医療機関の調査で、「(調査医療機関の)約35%で看護師らの今年夏のボーナスが昨夏より引き下げられる」という。東京都内の2医療機関ではいっさい支給がないところもあるという。そのうちの一つ、東京女子医大では、感染症病棟開設で労働強化になったにもかかわらず、強制的に「休業」を取らされさらなる労働強化と減給に、その上にボーナスなし(7月18日、理事者は撤回に追い込まれた)。怒った約2000人いる看護師のうち、約400人が退職の意思を示しているという。
これでは、医療崩壊は避けられない。医療崩壊させるのはコロナウイルスではなく、病院経営への十分な支援策を打たない政府である。さらなる大規模な財政支援が必要である。
しかし、経営者側にも考えてもらわなくてはならない。東京新聞の7月14日付に要旨次のような記事が。東京のある病院理事長が、「4~6月医業収益は7億8千万円の赤字の見込みだ。区の補正予算で7億9千万円が投じられる。ありがたい。これは税金からだということを重く受け止め、職員の夏の賞与は減額することにした」と堂々と述べている。これで医療従事者はモチベーション高く感染症に立ち向かえるであろうか。
行動で命を守る以外にない
フランス政府は7月13日、保健医療従事者の賃上げ策として、総額80億ユーロ(約9730億円)を支出することで労働組合側と合意したと報道された。保健医療労働者らが7週間にわたり賃上げや職場環境の改善を求めて抗議デモを繰り広げてきた結果である。
医療従事者だけでなく、すべての人の命を大切にする政治が求められる。介護や保育や、運輸交通、清掃などすべての社会インフラを支える労働者、従業者の生活と権利が守られなくては、社会は成り立たない。それはコロナ感染症拡大以前からのことである。その労働者たちが突然、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれるようになったが、大切にされているか。
「コロナ解雇」が、労働者を襲う。学生は、アルバイトがなくなって学業が続けられない。子育て中のシングルマザーは、仕事がなくなって多くの家庭が明日の食事に困っている。家賃が払えず、あるいはネットカフェ難民がその場すら閉鎖されて、住むところを失っている。生活保護受給者が急増しているが、それは一端にすぎない。国民の命を守る政治がいまこそ求められる。
国民の命を守る自主的な政権を急がなくてはならない。闘いだけが命を守る!