2020年05月一覧

[コロナ危機どう闘うか] 今こそ辺野古移設計画の見直しを

「米軍基地問題に関する万国津梁会議の提言」の意義

沖縄国際大学准教授 野添 文彬

 3月27日、玉城デニー知事の諮問会議「米軍基地問題に関する万国津梁会議」は、「在沖米軍基地の整理・縮小についての提言書」を知事に提出した。この会議は、安全保障や外交の専門家である委員(筆者もそのメンバーの一人である)が「在日米軍基地の整理・縮小」をテーマに提言を行うために設置されたものである。
 提言書は、玉城知事がこの会議で述べたように、沖縄の側から国際情勢や米軍の戦略を踏まえた上で作成されたという点で「画期的」なものであった。しかし、提言発表後、コロナウイルスの全国的な感染拡大によって、沖縄県や本会議も十分に動けなくなり、提言書についても他のニュースに埋もれてしまったことは否めない。
 その一方で、コロナウイルスに伴う世界的危機の状況であればこそ、提言書の内容は、ますます重要になっている。以下、本稿ではこの点について論じたい。 続きを読む


食料・農業問題 ■ 本質と裏側

種苗法改定をめぐる3つの論点~国民的議論の必要性

東京大学教授 鈴木 宣弘

種苗法改定の内容

 種苗法改定をめぐってさまざまな議論がなされており、多くの懸念も表明されている。
 種苗法とは、植物の新品種を開発・育成した人の権利を守る法律で、一般の商品の特許、本などの著作権にあたる。
 今回改定しようとしている内容は、登録品種の利用に国内限定や栽培地限定の条件を付けられるようにすること、登録品種の種や苗を無断で自家採種(増殖)するのを禁止することである。
 改定の背景は、例えば、日本のぶどうの新品種シャインマスカットが海外に持ち出され、栽培が広がっている。多額の国費を投入して開発した品種が海外で勝手に使われ、それによって日本の農家の海外の販売市場が狭められ、場合によっては、逆輸入で、国内市場も奪われかねない。この事態に歯止めをかけることが改定の目的とされている。
 種苗法改定をめぐるさまざまな懸念に応えるためにも、農家も消費者も、国民全体で、情報を共有して十分に議論することが必要である。ここでは、3つの論点を提示する。 続きを読む


[都知事選] 「国際金融都市東京」はいらない

都民の生活と営業を守る都政を実現しよう

広範な国民連合・東京事務局長、杉並区議会議員 松尾 ゆり

 東京都知事選挙が近づいています(6月18日告示、7月5日投票)。4年前、自民党代議士だった小池百合子氏は無所属候補として(しかし自民党籍のまま)立候補、自民党とりわけ東京都連との対立構図をつくって圧勝しました。
 小池氏の選挙政策は「東京大改革」。自民党の「都議会のドン」の利権体質を批判し「都政の透明化」を掲げた政策は、あたかも自民党と対決する政治家であるかのような演出となって、自公政権への批判、不満の受け皿として東京都民の大きな支持を得ました。
 しかし、知事となった小池氏は何をしてきたのでしょうか。 続きを読む


[コロナ危機どう闘うか] 力の転換は必然的に戦争を呼ぶ(下)

いかに安定と繁栄をつくるか? 夢は必ずかなう、もし諦めなければ!

青山学院大学教授 羽場 久美子

はば・くみこ 1952年生まれ。青山学院大学教授、世界国際関係学会アジア太平洋副会長、ハーバード大学客員研究員、京都大学プロジェクト教授。専門は国際関係論、国際政治学。著書に『グローバル時代のアジア地域統合』(岩波書店)、『アジアの地域共同―未来のために』『アジアの地域協力―危機をどう乗り切るか』(いずれも明石書店)他多数。

 新型コロナウイルスが猛威を振るっています。中でもアメリカは、感染者82・3万人、死者4・5万人(4月22日現在)、世界の「トップ」です。にもかかわらず新聞は、アメリカの感染のひどさがトランプ政権の「人命より経済重視」からきていること、対策のまずさをほとんど報道しません。逆にトランプの「中国ウイルスだ」「WHOは中国寄りだ」などというフェイクニュースのような暴言を好んで取り上げています。 続きを読む


[コロナ危機どう闘うか] 一部の利益でなく国民の命が守られる社会に

ショック・ドクトリンは許されない

東京大学 鈴木 宣弘

 新型肺炎の世界的蔓延への対処策で、物流の寸断や人の移動の停止が行われ、それが食料生産・供給を減少させ、買い急ぎや輸出規制につながり、それらによる一層の価格高騰が起きて食料危機になることが懸念されている。このような中で、その解決策は一層の貿易自由化であるかのような議論が国際機関から出てきていることは看過できない。まさに、災害資本主義、「火事場泥棒」的発想である。 続きを読む


沖縄と安全保障

復帰48年に考える

衆議院議員 屋良 朝博

 

 

 全世界が新型コロナ感染症と闘う中、日本の検査数の少なさに諸外国から疑問を持たれています。その適否の論議は別に譲るとしても、布マスク全戸配布を含めどうも打つ手が国際標準から外れているようにみえます。独自性は大事ですが、独りよがりでは視野狭窄に陥ります。日本人は〝戦前〟の思考から決別できたのかという疑問が頭をよぎります。 続きを読む


[コロナ危機どう闘うか] 苦境の今こそ、『国家を超えた連帯』への好機

社会学者 大澤真幸さんに聞く

 「苦境の今こそ、21世紀最大の課題である『国家を超えた連帯』を実現させるチャンスだ」と喝破される大澤真幸さんに伺った。見出しを含めて文責編集部

グローバル資本主義の負の産物

——大澤真幸さんは、感染症のパンデミック、コロナ・ショックと言われるような状況を、「『グローバル資本主義』という社会システムの負の側面が顕在化した」と捉えておられます。ここが現状認識として最も重要なところだと思います。

 「資本主義は、貨幣(マネー)と商品と人間をグローバル化し、それらを、国境を越えて運動させます。これら三つの中で、最も速いのが貨幣で、最も遅いのが人間です。人間は、貨幣や商品に引っ張られるようにして、国境を越えていきます。ということは何を意味するかというと、資本主義の下では、人間は、他者に対する自然な関心やコミュニケーションへの欲求によって移動した場合よりもずっと速く、広く拡散していく、ということです。もっとわかりやすく言えば、資本の利益に駆り立てられているとき、人間は、異常に速く、世界の隅々にまで移動していくのです。このことが、新型コロナウイルスの拡散がたいへん速かった原因になっています。14世紀のペストがユーラシア大陸の全体に広がったように、資本主義など未発達でも感染症は流行するのですが、今回のウイルスが瞬く間に世界中に行き渡ったのは、明らかに、私たちがグローバル資本主義の時代を生きているからです。もっと具体的に言えば、中国共産党の『一帯一路』の構想で、中国とヨーロッパのつながりが強くなっていたことが、アダになったと推測されます」 続きを読む


[コロナ危機どう闘うか] 打開の財源―大企業内部留保の活用を

駒澤大学 小栗 崇資

おぐり・たかし 1950生まれ。駒澤大学教授(経営学・会計学)。著書に『内部留保の研究』(共著、2015)、『多国籍企業・グローバル企業と日本経済』(共著、19年)など多数。

 新型コロナウイルスがもたらすかつてない危機に日本は直面している。非常事態宣言が出され外出自粛が要請されているが、それに対応した生活保障(雇用保障や休業補償など)については十分な対策がなされていない。感染爆発を防ぎ社会の崩壊を防ぐには、自粛要請と生活保障が一体となって行われねばならない。直接の現金給付等による国民の生活支援が緊急に求められるが、国民生活の危機を打開する抜本的な対策を行うためには多大な財源が必要となる。当面は、今年度予算を緊急対策に集中して組み替えをし、国債を発行するなどして資金を捻出したうえで、それを最終的に負担するための新たな財源を構想することが必要となっている。そうした財源の一つとして考えるべきは内部留保の活用である。日本企業(全法人280万社)の内部留保は463兆円(2018年度)に達しており、その活用について提案したい。 続きを読む


[コロナ危機どう闘うか] 従順の強制は許されない

命と自由をともに守ろう

専修大学ジャーナリズム学科教授(言論法)山田 健太

やまだ・けんた 1959年生まれ。日本ペンクラブ専務理事。専門は言論法。青山学院大卒、2012年4月から現職。著書に 『沖縄報道』『法とジャーナリズム』『見張塔からずっと』『言論の自由』など多数。

 潮目が変わった、と言うべきだろう。2週間前までは自粛しなくても大丈夫と外出していた人も、つい数日前までは布マスクに文句を言っていた人たちまでもが、一気に、世の中は「一刻も早い緊急事態宣言発令を」、そして「この国難の時に政府批判して何になる」という状況に変わったからだ。 続きを読む


[コロナ危機どう闘うか] 「医療崩壊」は自民党政治の必然の結果だ

(一社)全国労働安全衛生研究会代表・ 甲府市議会議員 山田 厚

感染症は抑制されずむしろ広がっている

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、「医療崩壊」が始まっている。新型コロナウイルスはきっかけにすぎない。この間の、自民党政権の医療行政の結果引き起こされている。
 まず、感染症の実態はどうなっているのか?
 1999年に感染症予防法もできた。さまざまな医薬品も開発され、感染症の話題もないから、感染症は抑制されていると思うのが普通だ。しかし実態は違う。感染症はむしろ増えているのだ。 続きを読む