[投稿] 農業への所得補償制度の実現をめざす

「地方議員連盟」をつくりませんか!!

今井和夫(兵庫県宍粟市市議会議員)

 第15回全国地方議員交流研修会第1分科会(9月号に要旨)で報告された今井和夫さんから、地方議員連盟設立の呼びかけの投稿があった。

このままだと孫には必ず食糧危機が

 全国地方議員の皆さま、私は30年農業をやってまいり、昨年4月に市議会議員になりました。
 どの地方も同じだと思いますが、私の住むところでも毎年のように耕作放棄田が増えていきます。本当に日本はこのままでいいのでしょうか?
 私にも子や孫がいるのですが、この子たちが生きている間に食糧危機は必ず来るのではないかと真剣に思います。どうして、1億2千万人の食料を簡単に外国から買えばよいなんて思えるのでしょう。異常気象の頻発、世界人口の増大、化学肥料と農薬まみれの農業生産……、どう考えても今の状態がずっと続くとは思えません。飢え、餓死、奪い合い、戦争……、そうならない保証は全くないと思います。
 そんな悲惨な状況になったとき、孫たちは荒れ果て森になった元・田んぼを見て「誰がこんなことにしたんだ」と怒るでしょう。まさに、今日本に住むわれわれ大人がそれをしようとしているのです。先人が営々と築き守ってきた農地をわれわれの代だけでつぶしてしまおうとしているのです。
 先日の新聞には、「米大統領 貿易で日本警告 FTA~牛肉など農産物の市場開放を迫る可能性がある。米国から車の高関税を課されるのが日本にとって最悪のシナリオ」と書いてありました。農業がつぶれる方が日本にとって最悪のシナリオじゃないんですか?! もちろん車も大事でしょうが、農業をつぶし国民の食料確保を放棄しても車を売ろうとするこの異常さ。この異常さ、何とかならないでしょうか。この考え方が地方を、田舎を衰退させている根本原因だと思います。

なくなった直接所得補償

 現政権は平成30年から、コメの1反当たり7500円の所得補償を廃止しました。理由は「コメは余っている、関税で守られ外国との価格差がなくなった」。確かに、日本の中には大規模化できる条件の良い農地も一部にはあります。しかし、大部分の農地はそうではありません。
 なぜ耕作放棄地は増えるのか?答えは簡単です。採算がとれないからです。若者も生活できるのなら農業をします。生活できないから放棄するのです。田舎がイヤとか、農業が嫌いとかではありません。

すべての農地を守るには所得補償しかない

 今、マスコミ等でよく言われる「もうかる農業、攻めの農業」。確かに成功している農家もたくさんおられます。しかし、それらはみな競争。付加価値を付け、高い値段で買ってくれる少数の顧客の取り合いです。
 すべての農地を守るには、やはり普通に頑張れば食べていけるだけのコメ、麦、大豆等の価格の補償、農家の生活の保障をするしかないのです。特に中山間地の規模拡大できない農地は、とても補助金なしでは太刀打ちできません。しかし、その農地も日本の農地の4割あるのです。それも守らないと日本人の食料は保障されません。地域は守っていけません。
 つまり「所得補償」という欧米諸国では当たり前にやっていることをするしかないのです。それも、日本の場合、全国一律の単価ではなく、地域・農地ごとの効率に見合った補償制度をつくる必要があります。1軒で30ヘクタール作れるところにはそれで300万円、3ヘクタールしか作れないところにもそれで300万円。単価は10倍違いますが、日本の全部の農地を守るにはそうしていく必要があります。(今の農政でも中山間地対策はありますが、とても若者が生活できるほどの額ではありません)

3~3・5兆円ですべての農地・地方は維持できる

 そうやっても、日本全国で水田だけで(飼料米の補助金も入れて)2兆4000億円くらいあればできます。中山間地の水田だけだと9700億円(3ヘクタールで300万円〈1反当たり10万円〉として)。これだけあれば、全国の中山間地の水田はきちんと維持できるのです。他の畜産、野菜等への補助金を含めても3~3・5兆円あれば、食料はかなり自給でき、すべての農地、すべての地方はきちんと維持されるのです。人口は昔に比べれば減るでしょうが、美しく整備された田園が永遠に続くのです。孫たちの命と暮らしは保障されるのです。
 防衛費に5兆円以上出しています。食料を外国に握られて何が国防でしょう。3兆円の所得補償で食料自給実現の方がよほど国防です。
 これは競争ではありません。地方や農地は競争に勝ったところだけが生き残ればいいものではないのです。すべてのところが生き残らなければならないのです。
 補助金を言うと必ず「片や自立して頑張っている農家があるじゃないか。なのに補助金に甘えるのか」という声が返ってきます。頑張っている農家からもそんな声が聞かれます。でも、そのような「特別な農家」だけではすべての農地は守れないのです。
 競争を否定するのではありません。よりもうければいい。しかし、「基本給」が保障されなければ若者は農業ができないのです。
 所得補償が実現し農家を通して3兆円が地方に配られると、地方でおカネが回りだします。商店や他の仕事の復活、子どもも増えるので学校も続きます。つまり、これは現代版の公共事業なのです。
 そして、これは地方だけの問題ではありません。むしろ都会の方たちの問題です。皆さんの食料を本当にどうするのかということです。だから、田舎の議員だけでなく都会の地方議員にも大いに関心を持っていただきたいのです。

『農業への所得補償制度実現・地方議員連盟』をつくろう

 全国の地方議員の皆さま、この農業への所得補償制度をなんとか実現しようではありませんか。私たちは分断され、できない競争をさせられています。そうではなく、すべての地方がともに成り立つ道を探しましょう。ともに手をつなぎましょう、ともに声を上げましょう。いろんなところと手を結び、行動を起こしましょう。皆さん、お忙しいでしょうが、できることから始めていきませんか。
 全然不可能なことではありません。でも、中山間地のほとんどの人はもうあきらめています。「田んぼはもう自分の代で終わりや~」と。それは民族の自殺行為。農地は個人のものですが、個人だけのものではありません。私たち日本に住むすべての人のものなのです。この先日本に生まれくるすべての子どもたちのものなのです。みんなで知恵を出せば必ず守れます。今ならまだ間に合います。でも、このまま10年たつと、もう田んぼに戻せない農地がいっぱい出てくるでしょう。将来の子や孫に顔向けができません。農地の荒廃は自然現象ではありません。『政治』です。
 頑張ってみませんか。だって他に方法がないですから。「今でしょ~」

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