最後の保障、生活保護を敵視する安倍政権の悪行

長期に困窮が進む国民生活水準、さらに急テンポに悪化

 第二次安倍政権の登場から5年余り、この間に、国民生活の困難は急激に進み、貧富の格差が拡大した。さらに今、安倍政権は生活保護の生活扶助削減や年金支給額削減などで、貧困化する国民生活に追い打ちをかけている。財政難を口実にするが、軍事費はうなぎ上りに増やし続けている。実質賃金も減り続けている。生活困難と格差拡大に怒る国民の声を結集し、安倍政権を打倒しなくてはならない。

安倍政権で国民生活水準は急速に悪化

 総務省の発表した全国家計調査によると本年1月の勤労者世帯の実収入(2人以上の世帯)は、前年同月比実質1・5%の減少となった。1月から家計簿の調査方法を変更したが、その結果生じた変動を調整すると実に前年同月比3・3%減となるほどの落ち込みである。家計支出では、非消費支出が1・5%増で、その結果、可処分所得は1・7%減である。
 グラフを見ていただきたい。勤労者を含む一般家庭(2人以上世帯)の実質消費支出を、2015年を100として指数化した長期データである。このグラフは、実質ということで物価水準の変動だけでなく、家族構成の変動(当然にも、何人家族かで消費額は異なり、また、年齢でも変化する)を同一基準で見られるように総務省統計局が調整したものである。
 まず気づくことは、安倍政権になってから家計消費の落ち込みが著しいことである。賃金は上がらず、年金や生活保護費も減らされ、社会保険などの支出が増加し、物価も上がってと、消費水準が落ち込むのは当然である。
 しかも、2017年の水準たるや、1980年ごろと同じで、国民生活は約40年前の消費水準に舞い戻っているのである。特に食料支出は1990年ごろまでは一定水準を確保していたが、以後は、つるべ落としに縮小しているのである。国民生活の困難は、食費に集中的に表れている。
 安倍政権はアベノミクスで資産価格を引き上げ、大企業や一部資産家の保有資産である株価や地価を引き上げて彼らに奉仕してきた。格差拡大・国民生活破壊に反対し国民生活を守るための闘いが急がれる。

安倍政権の生活保護制度破壊を許すな

許せぬ生活保護世帯への蔑視と「不正受給者」という罰則強化
 12年末の衆院選挙で安倍自民党は「生活保護の見直し」を唱え、「不正受給者への厳格な対処」と「生活保護費の原則1割カット」を主張した。政権復帰した安倍首相は翌13年5月、さっそく「生活保護法の一部改正法案」を国会に提出した。
 この改正には「不正・不適正受給者への罰則強化」、「返還金の上乗せ」、「福祉事務所の調査権限の強化」が盛り込まれた。「生活保護受給者を見たら泥棒と思え」と言わんばかりである。
 保護世帯が受け取る生活扶助費は、「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な生活扶助基準額から全保護世帯員の収入を差し引いた額にすぎない。だから福祉事務所は、保護世帯の収入申告書と事業主が市区町村へ提出した給与支払報告書の額にずれがないか調査し、ずれがなければ、生活扶助基準額から収入額を差し引いた額を生活扶助費として払う。ずれがあるのが「不正受給」で、そのほとんどが申告忘れや申告漏れで、「不正申告」とは実際の収入より意図的に少なく申告して生活扶助費を多く受け取ることを指す。
 生活保護者の7~8割は高齢者世帯や傷病者・障がい者世帯である。だれでも、うっかりして、あるいは申告義務が周知徹底されてなくて、無申告や申告漏れとなったりすることも当然ある。約4万件の「不正受給」件数で、実際に告発されたのは0・3%にすぎない。

保護世帯学生の大学進学を認め「世帯分離」をやめよ
 生活保護法を見直すと言うのなら、もっと先にやることがある。保護世帯の子どもが昼間の大学・短大・専門学校に進学するのを認め、世帯分離をやめるように見直すべきである。
 現在、保護世帯の高校生が卒業して、昼間の大学・短大・専門学校に進学すれば、その学生を保護世帯から分離して、親に給付する生活扶助額を、学生の分だけ減らす。
 学生の方は、生活費、学費、通学費なども、すべて自分で工面しなければならない。医療扶助から外されるので、国民健康保険料も自分で払わなければならない。高校生時代にバイトで進学準備金をためようとしても、その収入だけ生活扶助額が減らされ、バイト収入を報告しなければ不正受給となる。結局、進学できず、貧困の連鎖も生まれる。
 安倍政権は、2018年から生活扶助金で、大学進学の子どもに、自宅生なら10万円、親元を離れる場合は30万円の進学一時金を給付して進学を応援することにした。しかし、同時に学生を世帯分離して進学の邪魔をしている。なんと愚かなことか。

生活保護費の原則1割カット
 安倍政権は13年8月から15年度まで、生活扶助基準を見直し、受給額は平均6・5%削減された。全保護世帯(156万)の73%が生活扶助受給額を削減された。世帯別では高齢者世帯の68%、母子世帯の98%、傷病者・障がい者世帯の75%が受給額削減となった。削減額も大きく、母子世帯の41%が月額1万~2万円、39%が5千~1万円の削減。(出典・17年6月6日の第29回社会保障審議会生活保護基準部会の資料1)

さらに本年度18年の生活扶助見直し
 厚労省は17年12月8日、総務省の全国消費実態調査で消費支出が最も低い10%の世帯(生活保護世帯は除く)の生活水準を、生活保護世帯の生活扶助基準と同じにする見直し案を社会保障審議会の部会に示した。大都市部の40代の夫婦と子ども2人の世帯の場合、生活保護世帯の水準は低所得世帯より最大13・7%高いから、保護基準は13・7%引き下げるという見直しになる。厚労省は、この見直し方式の導入・確立を優先し、実際の減額幅は最大5%に抑制した。厚労省の推計によると、全保護世帯の67%の生活扶助額が下がる。
 このように、全国消費実態調査で消費支出が最も低い下位10%の世帯の消費支出に生活保護基準を合わせるのならば、最低生活の水準は際限なく下がる。生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するものではますますなくなる。さらにこの基準引き下げは、最低賃金額の算定や就学支援基準等々、幅広く影響が出ることになる。
 安倍政権の下では、「最低限度の生活」すらますます成り立ない。国民各層の連携した闘いが求められる。

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