大規模農家へと誘導する政策
北海道の農家戸数は、この50年間で189,969戸から39,700戸へ激減した。この農家戸数の減少が、人口減少へと直結し、地域の集落の消滅や地域崩壊へとつながるのだ。
政府は、地域創生を声高に叫んでいるが、その地域を守るためには、その地域の産業をしっかり守り育てる姿勢が求められている。
日本は、戦後の復興から経済成長へと突き進む過程で、地方の農家の働き手を工業地域へ送り込み、今日的な社会を築くことに成功した。
一方、地方の働き手を失った農家は、国の方針に基づき、機械化を進め、大規模農業をめざした。結果、北海道の農家戸数は極端に減少し、地方の人口減少が加速度的に進んだのだ。
農業は残るが、消えゆく農村
これに拍車をかけるのがTPPだ。TPPによって、安い外国農畜産物が入ることにより、政府は大規模化とコスト削減、企業の参入を進めている。大規模化やコストの削減では、農家の所得を確保できないのは、北海道の例を見れば明らかであり、これ以上大規模化を進めれば、地域の集落は崩壊することになるのだ。
TPP関連対策では、生産力・競争力の強化として、スマート農業の推進を掲げている。これは、「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業を実現する」としているが、近い将来、無人トラクターが圃場を駆け回り、ドローンが空を飛び回り、人間は機械に使われるといった光景が見られるのかもしれない。笑い話ではないが、そんな農業を国は進めようとしているのだ。これでは、農業は守られるかもしれないが、地域は崩壊する。地域に人は住めなくなるのだ。