問われる食の安全・安心
アメリカ産などの海外の安い食材が入ることにより、食の安全・安心も問われている。
例えば、食品添加物でいうと、日本では800種類しか認められていないが、アメリカは3,000種類、残留農薬については日本の0.1ppmに対しアメリカの基準では8ppmと80倍もの緩い基準が採用されている。
さらに、遺伝子組換え作物の表示義務についても、日本では表示義務があるが、アメリカではその義務はないなど、比較的厳しい基準が採用されている日本においても、アメリカに合わせた基準に緩和される可能性があるのだ。
ISDS条項でどうなる「遺伝子組換条例」
北海道では、全国に先駆け、05年3月に「北海道遺伝子組換え作物の栽培等による交雑等の防止に関する条例」を制定し、翌年1月から施行した。
この条例では、遺伝子組換え作物を一般圃場での栽培を規制することにより、一般作物との交雑や混入、さらには生産上及び流通上の混乱を防止し、遺伝子組換え作物の開発等に係る産業活動と一般作物に係る農業生産活動との調整を図るためのルールを定めたものである。
しかし、いくらこのような条例があったとしても、アメリカの企業が北海道内で遺伝子組換え作物を栽培しようとしたとき、栽培制限などで不利益を生じたと判断した場合には、ISDS条項により日本政府及び北海道が訴えられる懸念があるのである。
地域の影響は考えず
今回の質問の中で、TPP合意に基づき、将来の北海道の農家戸数の状況などについて、道の認識などについて質したのだが、「生産額への影響を試算したものであり、農家戸数の変動は考慮していない」との答弁であった。
本来、TPPによって将来の北海道農業がどのようになり、その結果地域にどのような影響を与えるかなども的確に把握する必要がある。しかし、国も道も、その現象面だけで、しかも最小限の影響評価にとどめ、地域に与える影響を考慮していないことが大問題なのである。