安全保障・防衛一覧

統一地方選挙の争点 伊藤 周平(下)

大砲ではなくバターを!
防衛費増・軍事大国化と社会保障(下)

鹿児島大学教授 伊藤 周平

 

 

 

 

4 地方自治体での社会保障拡充の取り組みの課題―国民健康保険の改善を中心に

(1) 国民健康保険の現状

 前号では、防衛費増の様相と社会保障削減の動向を概観したが、本号では、防衛費増・軍事大国化に歯止めをかけ、社会保障を拡充していくための地方自治体での取り組みの課題を、国民健康保険の改善を例に考察する。

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緊張激化させる敵基地攻撃能力保有

沖縄県民は平和外交を強く求める

全国の自治体で呼応した努力が必要だ

 

 台湾有事が声高に叫ばれ、日米政府が中国敵視のミサイル軍拡と軍事演習を強める中で沖縄県民の「再び戦場か」との危機感は急速に高まっている。中国敵視でなく、平和友好の外交を求める動きが広がっている。玉城デニー知事も呼応している。戦争の危機は南西諸島だけでなく日本全国の課題である。この沖縄県民の危機感を共有し県民の闘いを支持し、全国で闘いを発展させることが求められている。 続きを読む


安保3文書閣議決定の撤回を求める 伊藤 周平(上)

防衛費増・軍事大国化と社会保障(上)

鹿児島大学教授 伊藤 周平

 

 

 

 

1 問題の所在―コロナ死者数急増と防衛費増

 2022年2月に勃発したロシア・ウクライナ戦争を契機に、対中国包囲網戦略を進め同盟国に軍拡を求めるアメリカからの圧力もあり、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に求められている軍事費の国内総生産(GDP)比2%程度までの日本の防衛費の増額を求める声が自民党内から上がった。同年7月の参議院選挙では、自民党は、防衛費を5年以内にGDP比2倍以上(現在の約5・4兆円→11兆円以上)に引き上げることを公約に掲げ勝利した。

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安保3文書閣議決定の撤回を求める 柳澤 協二

「安保3文書」の危うい論理

国際地政学研究所理事長(元内閣官房副長官補) 柳澤 協二

 

 

 「戦後安保戦略の大転換」の要である「反撃能力」に関する論理の危うさを、すでに何度も指摘してきた。昨年末に「国家安全保障戦略」など3つの文書(以下、「3文書」という)が閣議決定された。私の年齢になると、読んで賢くなる期待を持てない文書を読むのは時間の無駄だという思いはあるが、なぜこんな発想が出てくるのか、その背景を知りたくて、3文書を読んでみた。以下は、その粗々の感想である。

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沖縄から 屋良 朝博

それでも戦争できますか?

新外交イニシアチブ評議員、前衆議院議員 屋良 朝博

 

 

 

十字砲火

 沖縄の米空軍に大きな変化が起きている。同時に嘉手納飛行場の爆音が激化している。
 嘉手納に常駐配備だった主力戦闘機F15C/Dが退役、撤退する。モデルの新旧入れ替えであり、既定のこととはいえ、注目はその穴埋めとして最新鋭のステルス戦闘機F22を「ローテーション」で暫定配備する措置である。
 米空軍が抱く危機感が「ローテーション配備」を導入する理由だとする米報道もある。常駐とローテーション配備の大きな違いは家族が一緒に沖縄に住むかどうかだ。常駐は家族帯同であり、ローテーションなら兵士のみの沖縄赴任になる。有事を想定すると家族は足手まといになりかねない。

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「専守防衛」と「全方位・アジア重視外交」の原則を変えてはいけない

中国敵視の「安保戦略」閣議決定を撤回せよ

 

『日本の進路』編集部

 

 岸田政権は12月16日、外交・防衛政策の基本方針という「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定した。「敵」基地攻撃など、わが国政府の外交・防衛政策の歴史的大転換である。明らかに憲法違反で、しかも先制攻撃で国際法違反になりかねない。こうした重大な決定が国会を完全に無視して強行された。

 敵基地攻撃の「抑止力」強化で、平和を確保することはできない。アメリカの対中国包囲網、戦争政策の最前線に立たされ、不測の軍事衝突がいつでも起こり得る。際限なき軍拡競争となり、アメリカから大量の武器を購入し、国民は軍事費負担に耐えられない。新たな「戦前」を引き寄せてはならない。

 中国敵視の安保関連3文書閣議決定の撤回を強く求める。

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北東アジアを非核兵器地帯に

人類は崖っぷちに立っている

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)准教授 中村 桂子

 

 

なかむら・けいこ 専門は国際関係論(核軍縮)。モントレー国際大学大学院国際政策研究修士課程修了。2001年~12年、NPO法人ピースデポの研究員として、核軍縮に関する国際会議の取材活動などに携わる。12年4月、核兵器廃絶研究センター発足に伴い現職に着任。

長崎大学核兵器廃絶研究センターは、「核なき世界の実現」を大学にとって枢要な課題とする長崎大学の共同教育研究施設であり、核兵器廃絶に向けた情報や提言、大学教育への貢献などの目的をもつ活動拠点として、長崎市や長崎県などとも連携を図りながら運営されている。

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台湾有事を避ける道

日本に足りないものは「反撃力」ではなく、
戦争回避の戦略

国際地政学研究所理事長(元内閣官房副長官補) 柳澤 協二

 

 

 

「敵基地攻撃で抑止」という不可解

 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、日本では、反撃力(敵基地攻撃能力)をはじめとする防衛力の抜本的強化と、日米同盟強化の議論が盛んである。これらはいずれも、抑止力・対処力の強化として語られている。それだけの力を持てば戦争を抑止すると同時に、戦争になっても負けない、という論理である。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」

台湾有事 軍事強化と戦う住民

 

 

 

 

「沖縄の基地が使用不能になった場合に備える」とは?

沖縄だけでなく、九州各県をはじめ全国の自衛隊で、米軍で、対中国の戦争準備態勢強化が急である。
鹿児島県から関東まで、各地からレポートしてもらった。築城基地強化では、防衛省は「武力攻撃を受け、沖縄の基地が使用不能になった場合」と言う。その時、沖縄はどうなっているのか? ゾッとする動きである。(編集部)

 

◇ 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」(各地レポート)

1 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

鹿児島

鹿児島での軍事基地化の動き
強引に進む馬毛島基地計画
鹿児島県議会議員 上山 貞茂

2 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

宮崎県

自衛隊新田原基地(宮崎県)
F35Bを20機配備、米軍用弾薬庫も
宮崎市議会議員 中川 義行

3 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

佐世保市

自衛隊水陸機動団強化(佐世保市)
訓練に反対し漁民や住民が声を上げる
広範な国民連合・長崎 代表世話人 中村 住代

4 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

福岡県

自衛隊築城基地(福岡県)
「沖縄の基地が武力攻撃で使用不能になった場合」にと急ピッチで進む米軍基地化
平和といのちをみつめる会代表 渡辺 ひろ子

5 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

山口県

極東最大の岩国基地(山口県)
連日の訓練、機能強化が進む
岩国市議会議員 姫野 敦子

6 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

京丹後市

米軍Xバンドレーダー基地(京丹後市)
目的は「米国本土防衛」、犠牲は日本に
京丹後市議会議員・米軍基地建設を憂う宇川有志の会 永井 友昭

7 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

横須賀・厚木

横須賀と厚木――大きく変わる基地の使い方
木元 茂夫(神奈川県を中心に反戦・反基地運動に参加)

8 進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  

 

米軍横田基地

米軍横田基地
進む実戦訓練基地化
横田・基地被害をなくす会 代表 大澤 豊

ウクライナ戦争の教訓に学ぶ

日本は、「緩衝国家」として「人権大国」になれ

アフガン戦争などで『紛争処理』に関わった 伊勢崎 賢治 教授に聞く

 

 

 

一刻も早く「停戦」を

 「戦争反対」や「反戦」というスローガンは非常にミスリードされやすいものになっている。「ロシアによる侵略に反対」に僕も異論はないが、それはウクライナに大量の武器供与をしている米国・NATOの陣営と、「ウクライナのようにならないために抑止力が必要」と日本の軍備を倍増し日米同盟を強化したい陣営に、巧妙に取り込まれる。

 日本の護憲派も「反戦」を叫ぶが、それはウクライナに「もっと戦え」と言っているのと同じだと気がつかない。そして、「プーチンは独裁者」には僕も異論はないが、紛争当事者の片一方だけを「悪魔化」し、第一次、第二次世界大戦のように、相手が滅ぶまで完全勝利を目指す戦争に参戦していることに気がつかない。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 横田基地

米軍横田基地
進む実戦訓練基地化

横田・基地被害をなくす会 代表 大澤 豊

 横田基地では最近、次々と新たな課題が増えている。5月に「Beverly Morning22-01」という名前の訓練が行われ、米軍三沢基地の戦闘機F16が12機飛来。迅速機敏戦闘展開(ACE)と重大事故即応演習(MARE)が行われた。早朝から夜間という時間帯に複数機で同時に離発着し、基地周辺だけではなく遠隔地にまでも轟音が鳴り響き、基地から離れて生活している私自身も驚いた。訓練のために三沢基地所属のパイロットや整備士など150人が参加し、期間中は横田基地に滞在した。また訓練名に22-01という番号が振り付けられていて、次の22-02もあるかもしれないと思わされた。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 横須賀と厚木

横須賀と厚木――大きく変わる基地の使い方

木元 茂夫(神奈川県を中心に反戦・反基地運動に参加)

 米の原子力空母リンカーン(全長333m、満載排水量10万3637トン)の入港について、外務省北米局日米地位協定室長が横須賀市に説明に来たのは5月18日。しかし、その内容たるや「具体的な入港日時、滞在期間については、米軍の運用に関わるため現時点では承知していない。原子力艦船が我が国に寄港する際、寄港の24時間前に米側から通報を受けることになっている。今回の寄港も同様である」という極めて不親切な、最小限の情報提供であった。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 京丹後市

米軍Xバンドレーダー基地(京丹後市)
目的は「米国本土防衛」、犠牲は日本に

京丹後市議会議員・米軍基地建設を憂う宇川有志の会 永井 友昭

 京都府京丹後市にある米軍Xバンドレーダー基地(在日米陸軍経ヶ岬通信所)は、丹後半島経ヶ岬の西の海岸に突出した崖の上に建設されています。このところ盛んに日本海へ発射される北朝鮮のミサイルを早期に捉えて米本国の防衛を果たすというのがその目的です。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 山口県

極東最大の岩国基地(山口県)
連日の訓練、機能強化が進む

岩国市議会議員 姫野 敦子

 極東最大の米軍基地になった岩国基地には、空中給油機、空母艦載機やF35Bなどに加えて、このたびステルス機能の戦闘機F35Aがカナダから、またF22も飛来。このF22はステルス性能に加えて多様な任務にも対応できる性能を持ち、猛禽類を意味するラプターと言われる。数日前には無人偵察機の「トライトン」も飛来している。

 議会中も昼休みの12時40分ごろには連日次々と爆音を轟かせて離陸していく。騒音の苦情もいつにも増して多いと聞く。

 訓練の狙いは即応能力の向上。背景には中国や北朝鮮の存在があり、外来機の飛来は力の空白を生じないようにとの配慮などで仕方ないと言われている。

 空も心配だが、基地に付設の軍港には2021年度には17隻、本年度もこの2カ月で4隻が寄港と、これまでの15年間に5隻とは比べものにならない数の艦船が接岸、戦略上の拠点化が進んでいる。

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