参院選で争われるべきは何か

『日本の進路』編集部

 参議院選挙が迫った。
 広範な国民連合はこの選挙で、「自主・平和・民主」の政治方向で一致する候補者を推薦するとともに、一人区での「野党統一」候補を応援する。
 全国の皆さんと共に、自公与党と岸田政権に鉄槌を下すため闘う。

戦争をやめさせろ

 ロシアのウクライナ軍事侵攻はいかなる意味でも許されない。
 だが、ウクライナの同盟国でもない米欧諸国が次々と武器を「援助」し、火に油を注いでいる。NATO拡大の脅威がロシアの暴挙を引き出したと言えるが、米欧は戦乱をさらに広げたいのか。

 西欧有数の知識人エマニュエル・トッドは言う。「ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突している」。米国メディアは、黒海艦隊旗艦「モスクワ」撃沈は米軍情報に依ったと報じる。

 この戦争は米国の覇権維持のための代理戦争である。米国などの武器商人は「在庫一掃」で笑いが止まらない。

 米国覇権の揺らぎは誰の目にも明らかで、バイデン政権は巻き返しに必死である。専制主義と民主主義の戦いとはとんだ言い草だ。

 新興大国インドなどが国連の対ロシア決議に賛成しないように、アジア・アフリカ・中南米の多くの国々は、欧米大国の支配する世界に反発し、独自の道を追求している。これが世界の趨勢である。アジアで欧米大国と同一歩調をとるのは、日本と韓国、シンガポールぐらいである。

 日本も独立・自主で平和の進路選択に舵を切るときだ。
 ところがわが国はウクライナに軍事物資を送り、岸田首相が参加した5月G7首脳会談では、武器「援助」を確認した。わが国憲法は、武力の行使を「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」している。
 わが国は、「停戦」に動くべきだ。

中国は敵ではない

 米国の覇権維持戦略の本命、主要敵は、中国だ。わが国は米国に追随すべきでない。
 米国はウクライナ戦争に深入りして抜き差しならなくなっている。それだけに米国は対中国では、日本など同盟国を前面に立てようとしている。Quad(米日印豪)、AUKUS(米英豪)などを前面に押し出している。5月下旬にはQuad首脳会談でバイデンは来日する。危険極まりない状況だ。

 中国の発展はめざましい。GDPはわが国の3倍以上、米国と並ぶほどになった。それとともに軍事大国化したことも事実である。とは言え中国の軍事予算は21年度で約20兆円、米国の4分の1だ。

 今は反中国のチャンピオンのような安倍元首相だが、その政権時には友好的関係を重視し習近平主席の国賓来日を招請している。わずか2年前のことだ。

 関係がとりわけ悪化したのは、昨年4月に菅前首相が首脳会談でバイデン大統領に唆されて、中国の最も機微な内政課題である台湾問題に干渉して、「中国敵視」を鮮明にしてからだ。対米関係に縛られ岸田首相はそれを継承している。

 敵基地攻撃、核武装とか、「抑止力強化」で戦争を防ぐことはできず、むしろ戦争を引き寄せる。「専守防衛」の原則を堅持しなくてはならない。核兵器禁止条約に参加すべきだ。

 そもそも中国は敵ではない。わが国は50年前、当時の田中角栄首相の英断で、敵視政策を撤回し、国交正常化を実現した。以来、歴代の自民党政権もそれを継承して両国関係は飛躍的に発展し、両国だけでなくアジアの平和と繁栄を導いてきた。わが国もその一部であるASEANを含む東アジア地域経済圏は世界経済の成長センターである。

 この50年の歴史を、今、岸田総理と自民党は乱暴に破壊している。公明党も追随している。50周年の今年にもかかわらず、「対中外交推進」の声すら聞こえない。それで良いのか。

 中国は未来永劫の隣国である。中国と敵対せず、アジア諸国と敵対せず、平和的関係を維持・発展させなくてはならない。

 原点に返って「一つの中国」の原則を厳守し、両国関係を安定・発展させる外交こそ重要だ。さらに、韓国・朝鮮やASEAN諸国などと共に、日中両国は地域の安全保障確立の平和政策を進めるべきである。

 憲法改定などと言う前に、まず、せめて、他国並みに、主権ある日米地位協定に抜本改定すべきだ。
 沖縄県民の米軍基地強化と南西諸島ミサイル基地化に反対する闘いを支持し、全国で共に闘わなくてはならない。玉城デニー知事の「建議書」を支持し、政府に具体化を求めなくてはならない。

何よりも国民第一の政治へ

 国民の命と生活を守る政治が何よりも求められている。
 まず、コロナ感染症対策を検証し、国民の命を守る保健医療体制構築が必要だ。

 国民の経済的困難は限度を超えている。深刻化する貧困問題の根本には、非正規雇用やギグワーカーの激増など「労働の規制緩和」がある。労働者の生活と権利は徹底的に破壊された。30年間近く実質賃金が上がらない。この全面的な見直しが必要だ。

 それに、財政赤字論と自己責任論で、社会保障費が削減され続けるなど、政府の貧困化対策それ自身の貧困だ。まずは最後の命綱、生活保護制度を再構築すべきだ。

 相次ぎ廃業に追い込まれる農業も深刻だ。農林漁家が生活できる所得補償政策が、食料安全保障とわが国経済、国土・自然環境保全などのためにも不可欠だ。中小零細の事業者も、売り上げは伸びず、しかも、原材料高で仕入れ価格は上昇、大変だ。特に飲食店や旅行サービス業などは壊滅的な打撃を被っている。

 農林漁業を基礎に商工建設業も含めて、人びとが暮らす地域の循環型経済を基礎とした日本経済の再建が必要である。

 原発の再稼働や新設など論外だ。独立・自主のエネルギー政策、自然エネルギーに切り替える大胆な転換と大量生産・大量消費経済からの脱却をめざすべきだ。

 「倍増」すべき財政は、防衛費ではなく、食料とエネルギーの自立・安定供給、国民生活再建に向けるべきだ。
 大企業の内部留保を吐き出させ、貧困化する国民に配分しろ。消費税を見直せ。

大企業・富裕層、米国のための円安政策をやめろ

 円安、物価高、インフレが、国民経済と生活困難に拍車を掛けている。
 問題は、政府と日銀が「一部大企業や富裕層への優遇」政策、安倍なきアベノミクスを進めていることだ。

 特に「円安」は、大企業に莫大な利益となっている。この3月期決算で上場大企業の30%が1991年以来の最高益水準だという。株式や土地などの資産価格上昇で富裕層も大喜びだ。

 米国も日銀の円安政策で恩恵を受ける。日本人の労働の成果は強いドルに搾り取られ、戦争で軍需会社、戦争会社は利益大幅増で、株価は高騰。日本の企業利益と金持ちたちのカネが流れ込む。

 反中国の戦争政策と財界・大企業のための「対米第一」の政治から、自主的で平和・国民第一の政治に転換しなくてはならない。

 貧困と戦争に反対する国民の声を結集し、貧困と対米従属・戦争への道を進める自公与党を追い詰めなくてはならない。維新の会など、「憲法改悪」と「核保有」の推進勢力を許さない参院選挙にしなくてはならない。
 野党各党は、野党らしく隊伍を整え、国民と共に前進することを期待する。

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