主権国家として国民の命を守れ

米軍基地から「染み出した」オミクロン株

全駐労沖縄地区本部・與那覇栄蔵 委員長に聞く

沖縄県でのオミクロン株感染拡大は、一時、「人口比で世界一」と言われ、米軍から広がったと言われる。全駐留軍労働組合沖縄地区本部の與那覇栄蔵委員長に伺った。聞き手は山内末子沖縄県議。

 昨年12月17日、キャンプ・ハンセンの基地従業員感染の知らせが入りました。状況を調べてみると対策の抜け穴が分かりました。米軍兵は米本国から移動してきますが米軍では対策が十分になされていなかったのです。
 実は、20年7月に基地の中で感染が爆発しました。日米地位協定によって日本の検疫が米軍には及ばず、検疫なしで米軍兵が入ってくる、その中に感染者がいました。その人が動き回ることで基地内外に感染が広がったのです。
 ですから日本政府は、一昨年の7月から、日米地位協定で日本の検疫が及ばず米軍で感染が拡大し、それが市中に広がることを知っていたわけです。にもかかわらず、日本政府が放置し、水際対策の穴があき続けていたことが大きな問題です。
 実は、このときに米軍は、米国出国時に検査し、沖縄に入っても2週間の隔離など、対策を強化しました。ところがいつの間にかそれが緩和されていたのです。強化された対策では「施設で隔離」でしたが、緩和で「基地の中での隔離」ということで自由に動き回っていました。そこに基地従業員が働いている。兵隊に食事を提供したり、ショップで働いたり、そこにマスクもしない感染者が来る。
 感染した米兵が基地外で自由に行動する。お酒を飲んだり、騒いだり。米軍施設外に居住する軍人、軍属やその家族もいます。日本人従業員は基地外に住んでいます。
 こうした経路で市中感染へと広がる、沖縄での感染爆発の要因となったと思っています。

主権国家は国民の命を守る義務がある

 沖縄県は非常に素早く動いてくれました。発覚した17日は金曜日でしたが、18、19日の土日でハンセンの従業員全員のPCR検査をしました。玉城デニー知事は、米軍に「外出禁止にしてくれ。感染者の徹底した隔離」を申し入れました。しかし、米軍の対応は変わらなかった。外出も自由だった。 そうこうして日本全国の海兵隊に感染が広がります。岩国基地でも感染が爆発し、地元の山口県のみならず広島県にも広がる。静岡県の御殿場にも海兵隊が行っているので感染が広がる。
 沖縄県の度重なる要請にも政府は動きません。ようやく1月9日、日米両政府は日米合同委員会声明で、基地内外でのマスクの着用などを確認したと発表しました。しかし、既にコロナ感染症は基地内外で爆発的に拡大していました。後の祭り、遅きに失した。
 日米地位協定では検疫をしなくてよい。しかし、コロナウイルスは地域も国も選ばない。基地の金網で遮ることはできません。
 だから日米地位協定を超えて、政府は動くべきだし、米国や米軍はしっかり対策を取るべきです。さらに、感染症対策のために、日米2国間で構造的な実効性のあるルールづくりをすべきだと強く求めています。
 地位協定で米軍は何でもできるというのは、感染症については絶対に許してはいけないと思います。日本政府は、国民の命を守るために主権国家としての責任を発揮してほしいと思います。米軍に強く求めてほしいと思います。
 地位協定一般のレベルと違う、それ以前の問題ということです。政府には、国民の命を守る義務がある。コロナ感染症は、国民の命の問題です。地位協定に縛られてはならない。主権国家として責任ある対策を取る必要があります。

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