米中激突の東アジア、問われる日本の進路 2-2

第17回全国地方議員交流研修会 ■ PART2 パネルディスカッション

中国での人権や自由への弾圧を
どう考えるか?

羽場久美子

 ありがとうございます。
 重要なご指摘ありがとうございました。中国の「人権侵害」への批判はしていくべきだと思いますし、経済の問題だけで日中関係を考えるわけにいかない、というのもそのとおりだと思います。ただそれを、中国は専制主義だから民主化しなければならない、軍拡しているからこちらも対抗しなければならない、というのは違うのではないかと思います。
 人権問題で言えば、アメリカ軍の「グアンタナモ収容所」での人権侵害、イスラエルのパレスチナに対する人権侵害は、いずれも何十年も前から国際機関に非難されています。しかし全く改善が見られていません。専制主義だから人権問題があるわけではないのです。新疆ウイグルの人権侵害は批判されなければなりませんが、それによって体制そのものを専制国家だと批判することは、正しくないということです。また「民主化」とはアメリカの世界戦略だと、アメリカ自身が言っています。本当は1時間話しても足りないくらい重要な問題なのですが、短時間で申し上げたいと思います。
 21世紀に入り、世界で民主化の波が広がりました。ソ連と東欧が民主化によって崩壊したので、その後アメリカは、民主化とは封じ込めに代わるアメリカの世界戦略であると位置づけたのです。しかし現実には、「外からの民主化」によって、現地の被害や犠牲が広がります。民主化後の方が、米軍が入り、現地で人々が大量に殺されるケースが多いのです。アフガニスタンがその典型例です。
 「アラブの春」やウクライナ、シリアなど、専制主義が崩れて民主化後、内戦が始まり、テロが広がり、同じ民族同士が武器を取って戦いが泥沼化するケースが多いのです。ウクライナでは民主化後、東西に分かれて武器を取り、1万人以上の若者が内戦で死にました。
 ウイグルでも人権侵害があるのは事実だと思いますが、それを批判し是正を要求し続けることはあっても、それをもって中国の専制に対抗しなければならない、香港を民主化しなければならない、さらには台湾に米軍が来て守るのは当然、というのは違うと思います。民主化した後の、その後の混乱の中で、世界で大量に人が殺されているという事実を知っていただきたいと思います。
 アメリカはそうした民主化運動に対して、資金や武器そのものも援助しています。こうしたアメリカのダブルスタンダードについてはぜひ認識していただきたいと思います。民主化は、アメリカ優位に「新冷戦」を進めるための道具でもあるのです。
 もう一つ、先ほど伊波さんから沖縄の宮古、与那国まで軍備増強が始まっているという話を聞いて、非常に衝撃を受けました。それはハーバード大学での研究討論で、「沖縄では反基地・反米運動が強いが、なぜ日本本土ではほとんど反米・反基地運動がないのか」という研究が「日本本土のように沖縄を反米・反基地でなくするにはどうするか」という戦略と結びつく可能性がある、と思ったからです。それは、「可視化しない」ということです。「東京六本木の真ん中にアメリカの基地があるが、囲いで見えないので誰も気にしない」、沖縄でも見えなくすれば県民は関心を持たなくなり、反基地闘争はなくなるということを、学んでいるということです。
 アメリカはさまざまなことを学び実行しているということも、併せて申し上げたいと思います。