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[持続と循環の食料自給経済へ]藤本 好彦

農を土台とした地域の文化と風土を、次の世代につなげたい

山梨県議会議員(南アルプス市園芸農家) 藤本 好彦

急がれる!健康な土づくり

 山梨県は、果樹農業が盛んであるため、圃場では窒素・リン酸・カリウム等の資材の堆積が目立ち、果樹の順調な生育を阻害したりするなど、病気も増えています。栽培規模の拡大、機械化、栽培作物の単一など、効率化を推し進めたことで、土壌の成分の偏りが危惧され弱体化が懸念されています。
 県は農業者が不要な化学肥料の施用を防止し、おいしさや栄養価を高め、環境に与える負担を軽減し、適正な施肥を行い健康な土づくりを通じて健康な農作物を育てられるよう、1979年度から、県内約120地点の主要農地において、土壌診断を進め地力に関する調査を実施しています。

 農地の土壌の力、いわゆる「地力」を増進するためには、堆肥等の有機質資材を適切に施用し土づくりを行うことが必要です。しかし、農業者の高齢化による労力不足や、堆肥や有機質資材の効果に対する理解が進まないこと等により、堆肥等の施用量は年々低下し地力の低下が問題となっています。

県独自の就農支援制度〝アグリマスター研修制度〟

 県は、これまで就農希望者に対し、就農相談から技術習得、就農後に暮らしが安定するまで、一貫した就農支援を行っています。特に、高度な技能や技術を有する農業者を〝アグリマスター〟と県が独自に認定し、アグリマスターによる就農支援は、新規就農者の増加に着実に結びついています。
 アグリマスターによる研修の優れている点は、就農者の希望する栽培品目、就農予定の場所や栽培規模に応じ、アグリマスターから、①年間を通じて1対1で、研修者が技術や技能を習得できること、②就農にあたり、地域の農地の斡旋が受けられること、③就農後、早期に生活の安定が図られるよう、販売先や方法など相談支援が受けられることです。
 今年4月15日現在、山梨県内で267人の農業者が、アグリマスターに認定されています。地域別では中北地域が129人、峡東地域が119人と大半を占め、品目別では果樹農業が176人、水稲と野菜などの複合が55人、野菜が34人となっています。このうち、有機農業など人だけではなく、豚にも鳥にも環境にも優しい農業を行っているアグリマスターは、少量多品目の露地での野菜栽培を行い、中北地域を中心に全県で14人となっており、全体に占める割合がおよそ5%となっています。
 有機農業等を志す就農希望者の要望に応じて、技術指導ができるよう、アグリマスター制度の周知や認定の働きかけを行い、有機農業などに関わる研修を支援し、技術指導を行うアグリマスターの拡大が必要です。

農業が続いていることで生み出される〝恵み〟

 農業者は食料を供給するとともに、野良仕事を通して豊かな自然や、そこに暮らす生き物の生活の場を維持してくれるなど、たくさんの〝恵み〟を生産してくれています。私たちが暮らす山梨の住み良い自然環境や、美しい景観を生み出しているのは、紛れもなく山梨の農業者です。このことを、農業者は当然のことだと考え公言しません。
 しかし、農業者が営農を継続できるよう、県民の意識に種をまき〝恵み〟を共感し、農業者の暮らしが続く政策を進めることが不可欠です。
 有史以来、先輩の農業者が野良仕事を通じてつないでくれたもの、それは、世界で一番美しい風景の中で、多種多様な生き物とともに、自然の中で暮らすことができる環境。これは、農業を基にした地域経済の姿そのもの。山梨県の経済が、観光等に過大に依存しすぎないよう、農林漁業を核にした地域の中でうまく回る姿を、農業者として政治家として、10年後、30年後、50年後、そして100年後を視野に入れ、心の豊かさを感じられる、農を土台とした地域の文化と風土を、次の世代にどうしてもつなげたい。