コロナ禍で困窮の学生 ■ インタビュー/要求と闘い

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多くの学生が政治に主張せざるを得ない状況に追い込まれ

「一律学費半額を求めるアクション」代表 山岸 鞠香さん

 私は慶応義塾大学理工学部で数学を専攻し卒業しました。大学院修士課程をフランスのエコール・ポルテクニーク大学院で修了して、この後、日本の博士課程の大学院に進学予定です。
 今、「一律学費半額を求めるアクション」(略称「一律半額アクション」)の代表をしています。このアクションは4月半ばに発足しました。学費関係の学生団体の中でもコロナ禍を受けて発足したことが特徴だと思います。

不平等に対しても怒らなくて生きている自分に気づかされたフランス留学

 大学卒業するまで、政治に無関心に近い状態でした。無関心というより、正確には「無知を抜け出せない」のだと思います。私も同様でした。その根底には、政治は「政治専攻」や「選挙に関係のある人」のもの、という感覚がありました。政治を学ばざるを得なくなったきっかけは、2017年ごろに自民党憲法改正草案を目にしたことです。あの改憲草案が通ったら日本には住んでいられないと思い、初めて政治からは逃げられないという感覚になりました。
 フランスでの大学院の同じ課程の院生は10名強いて、数学専攻でしたが政治問題にも知見がありました。平等とか権利問題に意識が高い人たちでした。
 フランスの大学院は最初の登録料に2万円かかりますが、学費はゼロ、博士課程には給料も出ます。それに対して日本の私学では、入学料だけで30万円かかり、授業料は100万円以上払わないといけない。
 こうした日本の大学事情を話すと本当に驚かれました。お金のない人は大学に行けないことに対して「それって平等?」と詰め寄られました。博士課程が無給で学費までしっかり取られることを話したら、「そんなことしたら優秀な人は待遇のいいところに行くのだから残らないよ」と言われました。
 私は改めて、不平等に対しても怒らなくて生きてきている自分に気付きました。

チェンジ・アカデミアを立ち上げる

 日本学術振興会特別研究員制度というのがあり、大学院の博士課程に月20万円の奨学金が支払われます。しかし、それをもらうと年収240万円とカウントされて学費も免除されず、しかも国民健康保険料も、さらに住民税と所得税で二十数万円かかる。また、学費は国立でも半額免除としても26万円は支払う。それに、アルバイト禁止なので可処分所得が東京の学生だと月5万円ぐらいにしかならない。東京では生活保護(生活扶助)は8万円前後とかなので、住宅費を除いた分は生活保護の半分くらいという状況です。
 こうした制度が維持されてきた背景には、制度自体が権威づけられていて「とても批判などできない」という空気があることも大きいです。教員の多くも依然すごい奨学金だと思っています。しかし、月20万円という額は、30年前に制度が始まった時から変わっていません。この間に物価も上がり、最低賃金も1・7倍に上がっています。
 学生の側ももらえてありがたいと思えみたいなことをお互いに言っています。
 私は、抱いている問題意識を黙っていて30年後に後悔するより、今言った方がいいと思いました。そのことをブログに書いたらそれが拡散されて、多くの大学院生から自分もそう思うという反応が寄せられました。その連絡をくれた人たちと共に、日本の研究業界の問題を、院生の目線で考え、問題提起し変えていこうと立ち上げたのがチェンジ・アカデミア(Change Academia学術研究の構造を変えるアクション)です。
 今年1月にシンポジウムをやり、180人ほど参加していただきました。東京で開催したのに、遠方からの参加者が少なくなく驚きました。北海道から四国まで、大学教員や学生が参加してくれました。配布資料のパンフレットを近々出版する予定です。

FREEとの出会い、「一律半額アクション」

 FREEとの出会いは、昨年11月街頭署名活動でチェンジ・アカデミアとしてあいさつし、活動を紹介し、高等教育無償化と理念を共有していると発言したのがきっかけです。それ以降、FREEとはさまざまな活動で連携してやってきました。
 その後、「一律学費半額を求めるアクション」の代表を務めることになりました。コロナ禍を受けた政治情勢や行政対応でムーブメントを起こす必要がありました。
 FREEと一律アクションは、コロナ禍における「一律学費半額免除」という要求は共にしていますが、活動趣旨もメンバーも異なるので、結果的には2団体あってよかったと感じています。
 「一律半額アクション」はコロナ禍を受けて発足した団体です。メンバーは、各大学や専門学校で、それぞれ学校宛てに「学費を減額してください」とか、「納得がいかないから説明してください」とか、そういった署名活動を起こした発起人の集まりになっています。コロナ禍で学校に行けず水道や施設を使えないのになぜ施設使用料を払っているのだということで、一部の返還を求める人たちもいます。国公立の大学ではそもそも内訳もなくて全部ひっくるめた授業料になっているので、授業料を返してほしいとか。
 しかし、一律で何かしてほしいということになると大変な金額になる。大学では国に予算をつけてもらわないと無理だろうということになります。ですから、大学ごとの要求の内容を持ちつつ、それを実現するために、「共通の要求」をつくろうということになりました。大学を横断して共通の署名用紙を作る、それが国に求める「一律の学費半額」の要求でした。
 私たちの要求としては大学4年生もいるので、とにかく今年度にちゃんと予算をつけて学費を減額してほしいということです。
 大きな要求項目としては二つです。
 一つは、選別でなく日本の全学生に一律やってください。
 もう一つは、大学と学生の分断を起こさないために、大学も一緒に予算を求める存在であるということを明確にしたものです。

学生支援緊急給付金では救えない実態が明らかに

 そうしたなかで、5月19日に閣議決定された「学生支援緊急給付金」ができました。これはこれで大きな前進です。
 しかし、学生の窮状は救われませんでした。
 一次募集と二次募集がありましたが、一次、二次合わせて30万人の枠を設けていて、採用されたのが24万人ですから6万人分が余っています。学生が応募しなかったから6万人余ったのかというと、そうではなくて不採用になった学生がたくさんいます。
 そもそも応募する時点で、例えば自宅外であるとか親から仕送りを受けていないとか、6条件全部当てはまった人でないと申請してはダメという厳しい条件がありました。
 ところが、6条件当てはまっても落ちたという人もけっこうあったので、私たちでアンケート調査をしました。7月31日、参議院会館でその経過発表をしました。6条件に全部当てはまっていても52・4%の人が受給できていないという実際があります。「一律半額アクション」のメンバーでこの調査を立ち上げた大学4年生も、困窮学生だったのに落ちました。その人は「私より大変じゃなさそうな人が受かって私がもらえないのだ」と言います。
 それは正直な声だと思います。でも、私たちはそういう分断心理みたいなものに支配されないようしなくてはいけない。
 6条件を前提にした自己申請式で43万人を選ぶということ自体に無理があります。
 そもそもコロナ禍というのは全員に起きていることです。皆等しく大学を使えていないといった状況では一律で要求するのが当然だろうと思います。

コロナがなくても困窮している今の学生

 「一律半額アクション」の学生は、政治にほとんど関心がない学生が多かったのですが、コロナ禍で、政治に主張せざるを得ないという状況に追い込まれました。ある意味では政治に気づくきっかけになりました。
 ブラックバイト問題もあります。外食産業や飲食店業界はもともと学生の安い労働力に依存して成り立っています。学生の方は、返済が大変なので奨学金を借りたくないわけです。そこでバイトをたくさんして稼がなくてはいけない。しかし、時給が安いので時間で稼ぐしかないということになっているのです。
 ですから今の学生は、サークルとかにあまり参加できていないと思うんです。勉強してあとバイトやって、サークル活動も遊ぶ暇もない。キャンパスライフさえ縮小していた。そこへコロナ禍がきた。
 学生が困窮しているというのは決して大げさなことではありません。ジワジワと困窮が続いていたところに、コロナ禍がきたということで、「一律半額」というのは決して大げさな要求ではないと思っています。

今後の活動について

 今後、私たちが、やっていこうと思っていることは、一つは国・政府による学生ヒアリングを開催させることです。5月に支援給付金ができる前に野党が合同ヒアリングというものを公募でやりました。それは参加したいなと思う学生が誰でも応募できる形のものでした。
 今度は、政府に直接ヒアリングを開催してほしいということを主張していこうと思っています。
 それから、野党が共同提案している学生支援法案を法律にさせる取り組みです。「作ろう『学生支援法』」というような運動も考えています。
 あと、「学生支援緊急給付金」です。これは2次募集で終わっているんですけれども、24万人しか実現していない。もともと531億円、43万人と言っていたので、残り20万人分を保障してほしいと、3次募集追加要求もできるのかなと思っています。
 それに「一律学費半額」の要求です。

地域から声を上げるように取り組む

 「一律半額アクション」のメンバーはけっこう全国に散っていて、それぞれの地域ごとに、地域の活動を行っています。県議会とか市議会に陳情し、国に対して意見書を出させるとか。
 例えば、愛知県、和歌山県と千葉県では、9月県議会への陳情に向けて要求を作っています。和歌山県などはすごく頑張っています。チラシを作って駅前とか人が集まるところで配ったり、教職員の団体とか市民団体とかにも広めたりしています。地域限定の署名活動も行っています。
 衆議院選があるので、それに向けての準備も考えています。学費問題と政治がどう関係があるのか分からないという学生も多いので、なぜ政治とか選挙が私たちの生活と関係があるのかという、そのギャップをまず埋めていく必要があると思っています。私たちの訴えに賛同してくれる地域の方と一緒に、選挙運動に関わるようなことも考えています。

 (本稿は、FREE総会のパネル討論での山岸さんの発言をもとに9月8日インタビューで補足したもの。見出しとともに文責編集部)

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