[コロナ危機どう闘うか] 見えてきた理不尽な『新型コロナ格差』の実態

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin

新型コロナで傷む現場~連合の労働相談よりレポート~

連合総合運動推進局長 山根木 晴久

 連合本部は、新型コロナウイルスの影響が顕著に出始めた3月4日から6日にかけて、フリーダイヤルとラインを活用して緊急集中労働相談を実施し、多くの相談に対応した。当時は、政府の要請で全国の小中学校が休校になった直後ということもあり、「子どもの面倒をみるため仕事を休まざるを得ないが、その間の賃金はどうなるのか」といった休業補償関係の相談や「職場でマスクを着用させてもらえない。感染が心配だ」といった安全保障関係の相談が相対的に多く寄せられた。
 連合本部はその後、3月30日、31日にかけて同様の緊急集中相談ダイヤルを実施したが、その時は内定取り消しや雇い止めなど雇用への影響が大きく出始めていたタイミングであったため、雇用関係を中心に相談を呼びかけた。
 2日間で寄せられた相談件数は168件、雇用形態別に見るとパートタイマーやアルバイト、契約社員、派遣など正社員以外からの相談が6割強を占めた。リーマン・ショックの時もそうだったが、経済が厳しくなると真っ先にいわゆる非正規雇用の方々に影響が及んでいることが相談内容から見て取れる。業種別では、旅行観光、イベント、ブライダル、飲食店、宿泊業などで働く方々からの相談が多く寄せられた。相談内容で見てみると、雇用関係(解雇・退職強要・契約打ち切り、休業補償)で75件と最も多く、5割強を占めた。なお、内定取り消しの相談は21件寄せられた。また、3月初旬の労働相談で多く寄せられた休業補償について、3月末の相談においても依然として手続きがなされず、賃金不払いや大幅な賃金カットを受けたという相談が依然として複数寄せられた。
 次に、連合は全国の地方連合会でフリーダイヤルによる相談対応を行っているので、こちらのデータからも傾向を見てみたい。
 まず、新型コロナウイルスの影響が大きく出始めた3月の相談件数について見てみると、昨年2019年3月の労働相談の総数は、1115件であったが、今年2020年3月の労働相談総数は1804件(うち新型コロナウイルス関連は371件)と前年対比+689件、約6割も増加している。また相談内容別で見れば、解雇・退職強要・契約打ち切りが200件、パワハラ・いやがらせが164件、雇用契約・就業規則が153件となり、解雇・退職強要・契約打ち切りが、パワハラ・いやがらせを抜き1位となったことが特徴的である。
 この傾向は4月に入っても継続する。昨年4月の労働相談の総数は1143件であったが、今年4月の労働相談総数は1966件と前年比+823 件、7割を超える増加であった。また、相談内容別では、休業補償関係が265件(13・5%)、解雇・退職強要・契約打ち切りが230件(11・7%)と上位を占めた。新型コロナ禍が猛威を振るう中で、職場や生活への深刻な影響が広がっていることが労働相談を通じて見てとれる。

課題

 さて、労働相談結果は以上の通りであるが、私自身も実際に相談対応を行っていることから、そこでの印象を含め、課題について提起したい。
 まず、新型コロナウイルスに関わる課題全般について、真っ先に指摘したいのは、正社員と正社員以外(パート、有期、派遣などいわゆる非正規雇用)の間の「新型コロナ格差」の問題である。安全衛生面では、正社員はテレワークで自宅就業できるが、非正規雇用は通勤による職場の就業を強いられ感染リスクに冒されているケースがある。休業手当についても正社員は100%で非正規雇用は60%と差をつけた運用が見られる。また、そもそも休業補償が支給されないとの相談が数多い。休業補償が支給されないケースは、契約の打ち切りにつながっている。つまり、正社員は守るが、非正規雇用は守らない、休業手当も出さない、仕事がないので契約を打ち切るといった企業姿勢が労働相談を通じて見えてくるのである。
 次に休業補償についてであるが、ひと言でいえば、活用されていないのである。休業手当は労働基準法第26条で定められているが、実態にそのことを使用者が知らない、あるいは、知っているが手続きが面倒だと考えている。ひどいケースは、「新型コロナウイルスは不可抗力だから休業手当は支払わなくてもよい」と経営者が主張していることである。不可抗力の解釈については緊急事態宣言以降、見解が分かれているところだが、休業や勤務時間短縮の回避の努力がどれだけなされたのか、テレワークや他の業務への転換が検討されたのかなど総合的に勘案し判断されなければならない。緊急事態宣言が発令されたからといって、必ずしも休業手当を支払わなくてよいわけではない。
 解雇・退職打ち切り、契約打ち切りについても、新型コロナウイルスだからといって許されるものではないし、整理解雇の4要件を満たす必要があることは言うまでもない。同様に非正規雇用からの相談に多く見られるが、先に 触れたように、休業手当を支給せず、有期期間満了をもって契約打ち切り(あるいは期間中での契約解除)や派遣切りにつながっている。使用者が雇用調整助成金を活用すれば、雇用を維持し休業補償ができたかもしれないと思われるケースもまま見られるのである。
 雇用調整助成金にしても、適用緩和が進んだが、事業者が申請しない限り支給されず、手続きの煩雑さゆえ敬遠されているというケースも相談から見てとれる。大胆かつ速やかな支援策の実施が重要だが、実際に支援策が十分に活用されるためには徹底した周知と利用を促す行為、そして徹底的な手続きの簡素化と支給の迅速化が不可欠である。

構造変化に伴うひずみが労働者を直撃する不安

 連合はこうした相談者の悩みに寄り添い、アドバイスを行う一方で、実際の労働相談内容を踏まえた政策制度要求を行っている。4月2日には西村経済再生担当大臣に「新型コロナウイルス感染症拡大に対する総合的対策についての緊急提言」を提出し、①日々深刻化している状況を踏まえ、感染症拡大防止を最大限取り組むこと、②生活確保・事業継承のための緊急措置を講じること、③雇用調整助成金の引き上げ等の対策含め雇用を必ず守ること、などを強く要請している。また、その際には連合の新型コロナウイルスに関わる緊急集中労働相談結果の内容を説明し、連合に寄せられた働く上での困難に直面している多くの方々からの声を届けたところである。
 緊急事態宣言も地域によって解除が進んでいる。しかし、さまざまな制約が徐々に緩められ、たちまち元の経済や社会に戻るわけでもなく、引き続き慎重な生活が余儀なくされる。今後の見通しであるが、回復は業種間でばらつきがあり、依然として雇用への影響は続くと考えられるし、新しい生活様式の流れの中で、社会や経済の変革に伴う雇用面への影響にも警戒しなければならない。構造変化に伴うひずみが労働者を直撃する不安もある
 労働相談は現場実態の縮図である。引き続き一人ひとりの相談に耳を傾け、心を寄せながら、現場の実態の把握に努め、問題を社会化し、課題の解決に向けた政策制度の実現につなげられるよう、相談対応を強化していきたい。

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin