コロナ感染症 医療も生活も崩壊の危機

安倍政権打倒! 命を最優先する政治を

『日本の進路』編集部

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者が世界中で261万人、死者も18万人を超え(4月23日午前現在)、しかも増加テンポは速まっている。少なくとも第2次世界大戦後最大の大惨事である。世界経済も、金融危機以来立ち直れず危機を深めてきていたが、コロナ・ショックで局面は変わった。IMF(国際通貨基金)は第2次大戦につながった1929年以来の大恐慌突入を警告する。各国で貧困層を中心に生活苦から暴動が頻発し始めるなど国内対立も、米中対立など国際関係も激化している。世界は激変している。
 わが国でも、政府の緊急事態宣言などにもかかわらず感染は全国に急速に広がっている。自民党政権の長期にわたる医療削減攻撃で苦しいやりくりを余儀なくされてきていた医療現場は、この大惨事に対処すべく奮闘しているが苦難を強いられ、「医療崩壊」が進んでいる。失業者も激増し始め、毎日働いてもやっとの労働者や家賃支払いにも事欠く零細事業者など多くの人びとが悲鳴を上げている。
 この惨事に安倍政権の対策は、「小さすぎる! 遅すぎる!」。決定的な立ち遅れと、自民党政治の歴史的責任は明らか。内閣支持率はどの調査でも急落している。国民から遊離した亡国の政権、安倍政権は即刻総辞職しかない。
 全国知事会は政府に休業補償支払いなどを強く要求しているし、各地の地方自治体は財政困難中でも独自の給付や補償などで住民要求に応えようとしている。苦難にある国民の現状に近く、対策の最前線に立つ地方自治体としっかり連携し、緊急対策の実行を迫るとともに、国民の命を最優先する政治実現をめざし闘おう。

医療崩壊阻止は緊急の課題

 亡くなられた方がたのご家族にお悔やみを、闘病中の感染者の皆さま方にお見舞い申し上げる。
 困難な中で奮闘しているすべての医療関係者の皆さま方、ライフラインなどさまざまな社会インフラを支えている各方面の皆さまの努力に感謝申し上げる。そして政府に、感染の恐怖の中で命を賭して奮戦している医療関係者にせめて十分な特別の手当と万が一の場合の万全の補償を約束して苦労に報いることを強く求める。
 ウイルス感染を抑制するとともに感染者を重症化させない、命を救う医療の確保が絶対条件である。
 まず、PCR検査をせめて諸国並みに行い、感染者の実態を正確に把握する。そして感染者は隔離する。ところが、どこの国でもやっているこの当たり前のことが安倍政権ではやられない。対策は遅れ、的外れに。埼玉県で陽性が判明した50歳代の男性感染者が5日間の「自宅療養」を余儀なくされたあげくの4月21日、自宅で死亡が確認された。その後発表されたが、埼玉県ではそれに先立つ17日、70歳代の男性が自宅療養中に亡くなっていた。当初は責任を認めなった県知事だが、24日になって「われわれの責任は重い」と認めた。県内には、この時点で349人が「自宅療養」していた。
 感染者を誰一人切り捨てない医療体制の確立が急務である。
 全国の病院現場は、医療用のマスクや手袋、ガウン等に至るまでのあれもこれもの圧倒的不足で悲鳴が上がっている。「共同通信」は、東京都内の感染症指定病院医師の話として、「(感染症指定病院の)現場が音を立てて崩壊しつつある」と伝えた。不安のあまりその重要な病院から離職する職員も増えているという。使命感だけではもはや限界ということである。無理もない、4カ月近くたっても病院でマスクを繰り返し使わせ、保護ガウンを雨がっぱで代用させる実態だからである。政府の許し難い怠慢の結果である。「製造大国日本」の首相は何をしていたのか。
 感染症対策の資機材と人員確保を最優先する必要がある。とくに、人工呼吸器や集中治療室(ICU)の増設と必要人員の確保、さらに根本的対策として治療薬開発とワクチン開発が最終の解決を保障する。資源投入し国際協力でワクチン開発に成功しなくてはならない。中国と開発を「争う」のではなく、国際協力にわが国も積極的役割を果たすべきである。
 それにしてもわが国医療体制の現状はお寒い限りである。西欧で最悪と言われ死者が激増したイタリアと似たり寄ったりか、それ以下だ。感染者の命を守る最後の砦、ICUベット数はイタリアの半分程度で、しかも、専門の医師や看護師などの人員不足である。
 歴代自民党政権の国民の生命軽視の政治の結果である。本号で山田厚氏が詳しく指摘している(5ページ)。ましてや厚労省がこの期に及んでも公立・公的病院の統廃合を進めようとしているなど言語道断である。東京都の小池百合子知事は、都立病院などの地方独立法人化をこの3月に強行した。断じて許されることではない。

生活崩壊、企業崩壊を食い止めろ

 新型コロナウイルスの感染拡大抑制には、接触制限や感染者の隔離等の対策が必要である。しかし、安倍首相が緊急事態宣言で「8割削減」を求めてもなかなか進まない。
 当たり前だ! 多くの国民は、コロナが恐ろしくても、毎日、働かなくては食えないのだ。働かずに株など金融資産や不動産資産で優雅に暮らす資産家は、安倍政権の7年間で激増した。首相の周りはそうした人がごろごろしているのだろうが。
 コロナで命を落とすか、生活苦で行き詰まるか、安倍首相は国民にこんな選択をさせているのだ。生活保障、休業補償なしに社会的隔離政策は不可能である。これは経済政策ではない。感染症を抑え込み、国民の命を守るのに不可欠な政策だ。
 安倍政権は、あまりの評判の悪さ、政権崩壊を恐れて国民一人10万円の給付を決めた。即刻国民に渡るようにしろ。何よりも1回だけ、10万円だけでは生きてゆけない。すべての日本在住者に一人100万円程度の給付を約束しろ。消費税も緊急対策として税率をゼロにしろ。さらに税制そのものも抜本的に見直す。
 困窮する国民に安心を保障すべきである。そうでなくてはコロナウイルスの拡散を抑え込むことは不可能である。
 「自粛」で仕事を休めと「要請」するのであれば、休業補償が当然である。一人の失業者も出させない。一人の事業者も一つの企業もつぶさない、犠牲にしない強力な休業補償が必要である。とくに国民経済の根幹を支え国民生活に不可欠な部分を担う零細個人事業主、中小商工業者を支えなくてはならない。また、需要減退が著しい畜産関係をはじめ農業者への支援は国民の食料確保上不可欠だ。農産物輸出規制が輸出国で強まっている(本号、鈴木宣弘教授22ページ参照)。農林漁家への所得補償とともに、コロナ禍で労働力不足となっている農家への援農などの支援が必要だ。

国民は見通しを求めている

 新型コロナウイルス感染症の治療薬はなく、開発のめどもまだ立たない。根本的には、感染を抑えるワクチンの開発である。しかし、開発には年単位の時間が必要でまだまったく見通せていない。相当な長期戦が避けられない。安倍首相も「長期戦」を口にし始めたが、目標も行程も定かにしない。
 政府は、コロナウイルス感染症対策の見通し、展望をきちんと国民に示さなくてはならない。
 それには感染の状況と免疫者の実態を正確に把握し、それを基にした対策の基本戦略確立が必要である。政策立案の際には、全世界の対策と経験に、とりわけ近隣で一定の抑え込みに成功している中国や韓国などの経験に学ばなくてはならない。ウイルスには国境がない。国際協力が極めて重要である。
 そして全国民に理解を求め、長期戦に臨まなくてはならない。
 その際に問題になるのは、国民の政府への信頼である。感染症にしっかりと対応し抑え込んだと国際的評価も高い韓国の文在寅政権は総選挙で圧勝、国民的支持を受けた。ドライブスルー検査など医療スタッフの感染を防止しながら大量に検査できる方法で感染者を早期発見・早期治療し完治者を増やした。「感染者の動線を全て公開」したが、「政府による透明な情報公開で社会的信頼が形成」されていた。
 早く安倍政権をやめさせて、国民の信頼できる政権をつくること、これが国民の命を確実に守る道である。
 同時に、日本ペンクラブの山田健太教授が言うように、「コロナ禍を克服しても、民主主義社会が壊れてしまっては意味がない」(本誌10ページ)。
 国民の命を守る政権は、国民の民主的権利、表現の自由を守る政権でなくてはならない。

問われる「誰のための政治か」
財政を国民の命のために大胆に使え

 安倍首相と政権の、「小さすぎ、遅すぎ」、それも「朝令暮改」。これは最優先すべき国民の命、安全よりも、他のことを優先させる政治姿勢の結果である。
 誰もが認めるように安倍首相や小池都知事は、国民の命の感染症対策よりも、東京オリンピック・パラリンピックを優先させた。安倍首相と自民党右派は、「改憲」の野心を優先させてきたし、今でも変わらない。小池知事にとっては、7月都知事選での再選であった。人の命よりも自分の政治生命、政治信条(それも反動的な)を優先させた。
 もう一つ、政権は、国民の命のための感染症対策よりも企業活動への打撃や株価への影響対策を最優先させた。政府・日銀は、大企業の社債や短期借り入れのCPなどを大量に買い取って企業を支えている。大量の株買い入れで株価を支え、資産家を守っている。一番困っている中小企業には銀行を通じてで、実際はほとんど回らない。アメリカではトランプ氏が大企業の要求と大統領選のために、経済活動再開を焦っている。大企業・大銀行優先の政治では、国民の命は守れない。
 政治家は誰に仕えるかである。
 一連のコロナ危機対策には財政が必要となる。緊急事態であり、すぐは「国債」発行、いわば「戦時」国債で乗り切る以外にない。財政を理由に国民の命をないがしろにするなど論外である。
 問題は最後的に財政を誰が負担するか?である。太平洋戦争時の戦時国債は最後的には、戦後のハイパーインフレで国民に押し付けられた。東日本大震災では、「復興税」が個人と法人の所得税、それに住民税に加算された。しかも、法人の特別税は早々と打ち切られた。こんなことを今回は絶対に許してはならない。
 財源はいくらでもある。
 まずは、不要不急の財政支出を見直せ。いの一番は、沖縄県民の7割以上が反対する辺野古埋め立て工事の中止である。同じく、国民の大多数が望む原子力発電に依存しない社会のために原発再稼働や核燃料サイクルへの支出などの中止。さらに、自衛隊艦船の中東沖派兵や南西諸島への自衛隊配備強化は取りやめろ。秋田・山口へのイージス・アショア配備なども取り消し。数兆円に上る米国武器購入も中止。ましてやIR・カジノ建設なども即刻見直す。これらだけで何十兆円もできる。
 政府保有の米国債は、昨年末で1兆1549億ドル、約170兆円の巨額に上る。この緊急時だからこそ、国民の命のために有効に使うべきである。
 そのうえで不足分は持っているところから、財政で潤ったところから戻してもらう。大企業から、富裕層からである。
 大企業の内部留保への特別課税を小栗崇資教授(追って掲載)が提案している。
 大企業への租税特別措置を見直しただけでも30兆円はすぐに出てくると「不公平税制をただす会」は試算し提言している。
 富裕層への所得税の累進強化などの増税も当然必要である。
 実行は政権次第。国民の命をつなぐ政権を急がなくてはならない。国民運動にも、野党にもその準備が問われる。