韓国「敵視」を煽り、支持浮揚を図る安倍政権

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自主外交で、アジア近隣諸国との平和・共生へ

『日本の進路』編集長 山本 正治

わが国は避けようもない大激変に翻弄される!

 間もなく終わるが、「恐怖の夏」だそうだ。大恐慌の引き金となった1929年ニューヨーク株価暴落も、2008年リーマン・ショックも、夏の終わりに起こったからだろう。深刻な金融危機の爆発はいつか、世界中の投資家たちは身構えている。
 経済危機の中、世界中で貧困層が急拡大。世界一の「経済大国」アメリカでも、低所得者向け食料費補助(フードスタンプ)で国民の6人に1人が生き延びているありさま。生活必需品すら買えない人が激増、世界中が購買力不足、需要不足となるのは当然である。世界経済は中央銀行の資金供給、金融の肥大化に辛うじて依存してきたが、それも限界点を越えている。世界中、企業も家庭も、政府も借金だらけである。
 貧困化に、AI(人工知能)の発展など技術革新が拍車をかけている。富裕層との格差・矛盾は極度に激化し、政治を著しく不安定化させている。
 各国支配層は、どの国も「自国第一」で、他国に犠牲を転嫁して乗り切ろうとしている。
 リーマン・ショックと金融危機を乗り切った「大国間の協調」による世界支配の安定はもはや望めない。6月の大阪でのG20サミットに続いて、8月末のフランスでの先進国首脳会議(G7)も米欧の大国間衝突に終わった。1975年以来の歴史で初めて「首脳宣言」が実質見送られ、マスコミは「首の皮一枚」などと見出しを付けた。
 とりわけ衰退するアメリカが中国を抑え込み世界支配を維持しようと巻き返しに出て、世界は極度に不安定化している。とくに東アジアは一変しつつある。
 貿易戦争から通貨戦争へ発展し、世界経済をいっそうの混乱に陥れる。世界経済は分断されつつある。
 アメリカは中国に圧力を加え内政を瓦解させるため、中国の内政問題である香港情勢やウイグル族問題などにも露骨に介入。G7では香港問題にわざわざ論及した。当然にも中国は猛反発。
 特に中国が最も敏感な台湾問題でF16戦闘機売却など圧力を強めている。第7艦隊は、南シナ海でも台湾海峡でも軍事挑発を繰り返している。「軍事衝突は時間の問題」というアメリカ海軍大将・元NATO軍司令官の見通しが現実となりかねない状況が進む。
 この状況を、英国のフィナンシャル・タイムズ紙は「崩れ始めた東アジア秩序」(日経新聞8月9日)と特徴づけた。戦後アメリカの東アジア支配秩序が音を立てて崩れ始めている。要するに、アメリカは巻き返しを狙っているが、趨勢は後退を余儀なくされているということ。
 アジアのことはアジア人が決める歴史的チャンスが来たとも言える。アメリカの干渉・圧迫と闘ってきた国々も、抑え込まれ「従属」を余儀なくさせられてきた国々も、大国も小国も自らの生き方を必死で模索し始めている。最近の韓国政府の動きも内政に困難を抱えるともいわれるが、そうした一部であろう。
 対米従属に甘んじてきたわが国こそ、この東アジアの激変の中で進路が問われている。

問われる独立自主の進路

 わが国の対米従属政権、支配層は深刻な事態に直面した。
 侵略戦争と植民地支配の歴史を反省しない、「歴史修正主義」の安倍政権と支配層主流は、大国化した中国を恐れて敵視し、日米同盟深化・米核抑止力に頼って対抗する道を決めている。
 他方、衰弱したアメリカは、アジアで日本なしには中国に対抗できない。日本への軍事費負担、米軍支援、武器購入要求などを強めている。農畜産物輸入や自動車輸出への安全保障を口実とした圧力も強めている。
 巨大な隣国・中国と敵対して日本はやっていけるか? わが国大企業、財界も、この事態に動揺している。
 財界人安倍晋三応援団の中心の一人、JR東海の葛西敬之名誉会長は、「日米同盟の進化 対中国、日本の役割増す」とラッパを吹いた(読売新聞7月29日)。しかしその中でも本音が見えていた。「(経済人は、中国の)脅威を認めながら経済を失いたくないと……形勢を傍観、凌ごうとしている」と嘆かざるを得なかったのである。対米従属路線は、ギリギリの限界となった。
 日本大企業が、中国やアジア市場を失って長期にやっていけるはずがない。アジアで孤立して日本はやっていけない。
 「アジアの平和・共生」へ進路を切り替えなくてはならない。アメリカの中国敵視戦略から離脱し独立自主で、中国をはじめアジア諸国と共生をめざさなくてはならない重大な時である。
 すでに保守層の中に広く、財界の中にも、自民党の中にすらも動揺と共感が広がり始めている。文字通り広範な戦線を形成し、自主・平和へ国の進路を切り替える秋である。

支持を失った安倍政権の危険な「韓国叩き」

 安倍政権は、参院選を乗り切ったが難問山積である。
 支持基盤は強くない。自民党の絶対支持率(得票率)は有権者のわずか16%そこそこ。しかも保守分裂、保守支持層の離反傾向が急速に進む。地方では自民党に亀裂が広がっている。イージス・アショア配備について地元秋田1区の自民党衆議院議員が、「もうダメだ」と反対に回った。
 アベノミクスで金持ちたち、保守層の支持を維持するのも限界である。わが国輸出がすでに激減するなど世界経済が最悪の環境下で消費税増税が10月1日に迫った。アメリカの農畜産物輸入や自動車輸出などの対日要求は農家だけでなく日本経済を直撃する。選挙後にずらした国民負担増攻撃も避けられない。株価はいつ2万円を割るか、高株価を背景とする富裕層の支持維持も極めて厳しい状況となる。
 にもかかわらず得票率と議席占有率が限りなく乖離し、民意を正確には反映しない選挙制度の欺瞞や野党の無力さに助けられた選挙結果だった。
 だが、それだけではない。政治術策に長けた安倍晋三総裁の自民党は、政治欺瞞で乗り切ってきた。選挙後は、憲法改悪を声高に叫ぶことで、野党戦線攪乱を狙って画策している。労働組合の中にも動揺がある。
 そもそも第2次安倍政権発足の12年総選挙も、尖閣問題を最大限に利用して、「強い日本」を打ち出すことで乗り切った。昨年来、とくに韓国敵視、韓国バッシングで反動的保守層を引き付けてきた。
 参院選は、低投票率に導くとともに、韓国叩きで反動的保守層の支持を引き付ける以外に道はなかった。自民党は参院選選挙政策の最初に、「力強い外交、防衛で国益を守る」と掲げ、「強い日本」を演出し支持を引き付けようと画策した。だが、プーチン大統領に北方領土返還は袖にされ、「無条件に、私自身が金正恩委員長と向き合う」と啖呵を切った拉致問題解決も一蹴され、テヘランに飛んだ対イラン仲介外交も空振りで、むしろホルムズ海峡の緊張を引き出したという赤っ恥。
 こうして突如、7月に入って対韓国貿易「制裁」を打ち出した。「力強い外交で国益を守る」を極めて欺瞞的に演出し、排外主義的機運を煽り、固定的保守支持層をつなぎ留めようと画策した。
 今、山積する難問を前に、ますます政治欺瞞、「嫌韓感情」をフレームアップし支持を引き付ける危険な「外交」に走っている。解散総選挙も念頭にあるのだろうか。
 安倍政権が、直ちに韓国敵視政策をやめることを要求する。真に国益を貫く外交を要求する。

独立自主でアジアの一員として近隣諸国と共生する進路を

 フィナンシャル・タイムズ紙が言うまでもなく、戦後アメリカの東アジア支配秩序が音を立てて崩れ始めている。安倍政権や一部支配層がどんなにあがいても、日米同盟深化ではこの歴史的流れを押しとどめることはできない。
 わが国は植民地支配と侵略戦争の歴史をしっかりと反省し、アジアのことはアジア人が決める歴史の奔流に身を置くべきである。
 とくに朝鮮半島と日韓関係は、戦後の「アメリカ中心の東アジア秩序」の矛盾の集中点の一つだった。
 1949年の中国革命の勝利で社会主義陣営がアジアで拡大し、朝鮮半島北側(朝鮮民主主義人民共和国)は目覚ましい経済発展を遂げていた。これに対抗してアメリカは「西側陣営」強化のために、南側・韓国経済テコ入れを急いだ。日韓関係「正常化」を進めるため、日本の韓国併合・植民地支配を不問に付し、資金と技術で韓国経済テコ入れを求めた。わが国政府は、こうしてアメリカの庇護下で20世紀に入って以来の朝鮮半島植民地支配の不当性を認めず、謝罪もせず、賠償もしなかった。韓国国民は激しく抵抗したがアメリカがつくった売国的反動政権はそれを受け入れ、65年、日韓基本条約で「国交正常化」となった。日本からの有償無償の資金「援助」で韓国経済は「発展」した。
 以後、韓国内では民主化と自立をめざす国民的闘いが発展し、基本条約に基づく日韓関係の見直し要求は高まった。ロウソク革命に続いて、文在寅政権が成立した。
 今日、冷戦は終焉したがアメリカは衰退し、中国が強国化、東アジアの国際政治環境は一変した。
 日韓両国の経済的力関係も激変し、サムスンに象徴されるように韓国経済は日本を追い越すまでになった。
 一方、朝鮮戦争を通じてアメリカによってつくり出された南北の敵対関係も、昨年の平昌冬季オリンピックを契機に両国指導部の一連の努力で劇的に変化している。今日、文政権は、南北融和を第一に進め、2045年に統一をめざすと8月15日に宣言した。金正恩政権も対米関係を慎重に進めながら統一をめざしている。
 すべての日本人とわが国政権は、この歴史的現実に真摯に向き合う以外にない。
 台湾問題と日中関係も同様である。習近平政権の対外政策が時に「大国主義的」とみられることがあったにしても、中国がアヘン戦争以来の民族的屈辱の歴史を清算し、中華民族の復興を成し遂げるのは歴史の必然だからである。
 日本は、アメリカの属国としていつまでもこの東アジアの歴史の流れに抗うのではなく、アジアの一員として身を投じるべきである。アメリカにはペコペコ、韓国などアジアには居丈高。これではわが国はアジアで居場所を失う。

野党も労働組合もお茶を濁さず、時代に向き合うべき

 最後に野党と労働組合指導部にも言わなくてはならない。
 この歴史的時期に、国の進路の問題(外交や安全保障)で対抗軸を鮮明にして発言しなくては国民の支持を受けず、政治で主導権を確保できない。統一会派とか、野党連合とか、悪いことではないが、国の基本問題が曖昧では広範な国民の支持は得られない。
 なかには、野党連合政権などと言う党も出てきた。だが、この国の基本問題での一致なしに政権はあり得ない。国民と国の将来に真に責任を持とうとするのであれば真剣な検討が必要ではないか。
 ましてや野党第一党が、韓国政権のGSOMIA(日韓軍事情報包括協定)破棄に対して、「両国の関係悪化を安全保障の分野にまで持ち込む姿勢は、決して容認できない。米国政府にとっても破棄など望む状況でなく、利益を得る国がどこなのか、今回の決定は極めて遺憾」と声明したなどは論外である。この言い草は安倍政権と寸分変わらない。「米国政府にとっても……」などと言うに至っては笑止である。
 野党が、この重大な時代にしっかりと向き合うように望む。

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