北朝鮮の脅威と日本の不可解な対応

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2016-shinroRogo

<シリーズ・日本の進路を考える>
世界の政治も経済も危機は深まり、わが国を亡国に導く対米従属の安倍政権による軍事大国化の道に代わる、危機打開の進路が切実に求められている。
本誌では、各方面の識者の方々に「日本の進路」について語ってもらい、随時掲載する。(編集部)

丹羽宇一郎

 北朝鮮の脅威が再び高まっています。相次ぐ示威的な行動に対し、米国など国際社会も強硬姿勢を示しています。なんともきな臭い空気が漂う中で、どうしても首をかしげたくなる動きがあります。日本政府の一連の対応です。

  北朝鮮は2月には日米首脳会談に合わせたかのようにミサイルを発射。3月にも6日に4発の弾道ミサイルを発射し、うち1発については能登半島沖わずか200キロメートルの海上に落下したといいます。北朝鮮の技術力の向上と日本にとっての脅威が、比例するように高まっていると言えるでしょう。

  特に2月のミサイル発射は、日米首脳会談に当てつけるようなタイミングだっただけに、両国首脳が会見を開いて非難声明を出しましたが、この声明の出し方がなんとも不可解でした。強い口調で北朝鮮を非難した安倍晋三首相に対し、トランプ米大統領は「米国は偉大な同盟国、日本と100%ともにある」と応じました。

  もちろん、北朝鮮への対応において、日米両国の緊密な連携は必要です。北朝鮮の蛮行は広く国際社会から非難されるべきです。問題は日米両首脳の会見で、日本がリードし、米国がそれに追従する形でメッセージを発信してしまったことです。なぜ日本が矢面に立つような形にしなければならないのでしょうか。

  自国に核やミサイルの脅威が迫っているわけですから、非難するのは当然の行為です。ですが、非難にもやり方というものがあります。このところの日本のやり方は悪い意味で目立ちすぎてはいないでしょうか。中国、韓国の関係者も一連の日本の対応を不思議に思っているようです。

  外交というものには、ルートとカードが必要です。対北朝鮮外交において、日本は残念ながらそのどちらも持ち合わせていません。交渉の人脈というルートを握っているのは中国や韓国ですし、軍事力というカードを持っているのは米国です。日本はいずれも他国に頼らざるを得ない厳しい状況に置かれています。

  ルートを持っている中国や韓国がすぐさま動いてくれるかというと、簡単ではありません。韓国は朴槿恵大統領の罷免で内政が混乱していますし、中国にも事情があります。この問題で中国が懸念しているのは、北朝鮮情勢の大幅な悪化による、同国からの大量の難民の流入でしょう。もし数万人単位で難民の流入というようなことになれば、中国にとっても大混乱は必至ですから、対北朝鮮外交はできるだけ穏便に進めたいのが中国の本音です。

米国にすり寄り安全保障上の懸念を拡大

 では米国の軍事力に頼ればいいのかというと、そうでもないでしょう。今のように日本が目立っている状況で、北朝鮮の狂気の矛先が日米同盟に向いたらどうなるでしょう。北朝鮮のミサイルはまず、米国本土ではなく、物理的にも既に射程圏内にある日本国内の米軍基地に照準が向くでしょう。

  安倍政権は日米同盟の強化ばかり盛んに主張していますが、もし北朝鮮のミサイルが日本の米軍基地に落ちてしまったら……。また、わずかに落下地点がずれて近隣の住民にも被害が出たら……。想像もしたくないような最悪の事態となりますが、いずれにしても日米同盟どころの話ではないでしょう。米軍がその前にミサイルを打ち落としてくれる保証は、今のところ見当たりません。

  つまるところ、日本の対北朝鮮外交は稚拙と言わざるを得ません。カードを持っている米国ばかりにすり寄り、安全保障上の懸念をむしろ拡大している。そんなに、憲法を改正したいのかと邪推されかねません。

 ルートを持っている中国・韓国とは十分な対応策を練れていません。従軍慰安婦問題を軽視するわけではありませんが、対韓関係においては駐韓大使を帰国させたままです。北朝鮮との関係において直接のカードもルートも持たない日本にとっては、いたずらに騒ぎ立てるようなことはせず、隣国との話し合いと第一として、6カ国協議のような枠組みを一刻も早く再開するように動くことが先決ではないでしょうか。

 【にわ ういちろう 1939年生まれ。伊藤忠商事前会長、元駐中国大使。公益社団法人日本中国友好協会会長】

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