東日本大震災緊急討論集会「財界支援ではなく、被災者救援、国民大多数のための復興を」 問題提起

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未曾有の大災害

 3月11日、マグニチュード9・0の巨大地震が起こり、岩手・宮城・福島を中心に東北・関東地方を襲い、巨大な津波が青森県から千葉県の太平洋岸に押し寄せました。さらに、福島第一原発では冷却機能が停止し、炉心溶融、水素爆発によって、放射性物質が広範囲に飛散して大気、水、土壌、海を汚染しつづけています。  亡くなった方、行方不明の方は2万7千人を超え、負傷者は約3千人、建物損壊は20万戸に及びました。40万人以上の人びとが飢えと寒さに苦しむ過酷な避難生活を強いられています。
 田畑は津波にのまれ、水没や塩害で作付けができなくなり、漁船や漁港、水産物加工場は破壊され、農漁業は壊滅的な打撃を受けました。工場や店舗の損壊、道路や交通機関の寸断で、製造業、小売・流通業は深刻な打撃を受けました。何十万もの労働者が働く場を失い、農業者、漁業者、中小零細商工業者が生活の糧を失いました。
 原発から半径30キロ圏内の住民は、被曝の恐怖にさらされ、圏外への避難・屋内退避を強いられました。30キロ圏内にある約4800の事業所は事実上の休業状態で、5万8000人の労働者が失業の危機にさらされています。放射能による野菜、牛乳、魚の汚染はさらに広い範囲に及んで、出荷停止となり、それに風評被害も加わって、農業者、漁業者は深刻な打撃を受け、自殺者まで出ています。
 大震災と大津波、原発事故の影響は、直接の被災地にとどまらず全国に波及しました。被災地での部品生産に依存していた電機や自動車などの大企業は、全国で操業を停止したり、稼働率を引き下げ、中小零細の下請け企業は仕事を失いました。部品不足や計画停電を口実にした解雇、賃金引き下げ、採用内定取り消しが全国で広がっており、派遣切りは08年秋のリーマン・ショックの時よりも深刻です。
 政府の推計によれば、道路、鉄道などのインフラや建物の被害だけでも25兆円にのぼっています。いまだに収束の見通しもたたない原発事故による損害も含めると、被害額はさらに膨大なものとなります。これは、国難とも言うべき、未曾有の大災害です。  現地では必死の救援活動が続いています。市町村の職員は家族の安否もつかめぬまま、不眠不休で住民の避難や救援に全力を尽くしています。自ら被災した人たちも、行方不明者の捜索、避難者の救援に奔走しています。多くの国民が被災者の窮状に心を痛め、少しでも被災者の役に立ちたいと、全国から救援物資や義援金を寄せました。あるいはボランティアとして救援に駆けつけました。義援金は、日本赤十字や中央共同募金会に寄せられたものだけでも1450億円を超えました。 h4. 政府や財界は何をしてきたか 大銀行や大企業には素早く支援、被災者の救援は後回し  この国難の中で、窮状に追い込まれた被災者を救援して、命と健康、日々の暮らしを保障すること、さらに、深刻な打撃を受けた労働者、農業者、漁業者、中小零細商工業者の生活・営業を再建するための復旧・復興は、何よりも政府の責務です。
 菅首相は3月11日、「国民の安全を確保し、被害を最小限にするため、政府として総力を挙げて取り組む」との決意を発表しました。しかし、政府が被災者を直接支援するために決定した支出は、救援物資にあてる302億円だけで、国民が赤十字に寄せた義援金の2割に過ぎません。その義援金も被災者にはまだ届いていません。
 他方で、大企業や大銀行に対する日本銀行の支援は迅速でした。日銀は3月14日、銀行の資金繰りを支援するため、短期金融市場に21兆8000億円の資金供給を行いました。日銀による資金供給はその後も続き、23日時点で合計額は100兆円を突破し、銀行の手元資金を示す日銀当座預金残高は40兆円を超えました。日銀はさらに、大企業が発行する社債とコマーシャルペーパー(無担保の約束手形)の買い取り枠を1兆円から4兆円に増やす企業支援策を決定し、4月6日に1379億円の社債を買い取りました。その大半は東京電力の社債でした。
 政府は、被災地の大企業に対して過去2年分の法人税を還付することにし、さらに被災地以外も含む大企業へ3兆円規模の危機対応融資を補正予算に盛り込みました。
 厚生労働省も、企業が計画停電で休業する場合、労働者に休業手当を支払わなくてもよいとする通達を出して、企業を支援しました。
 政府は原発事故の被害について、東京電力の賠償責任の一部を国が肩代わりする方向で検討に入りました。
 政府系の政策投資銀行も4月11日、東京電力に1000億円を緊急融資しました。大手銀行7行がすでに1兆9000億円の緊急融資を行っており、官民一体の融資総額は2兆円にのぼりました。  同じ被災者でも受ける痛みや困難は一様ではありません。大企業は巨額の内部留保や手元資金を持ち、銀行から低利で迅速に融資を受けることができます、しかし、労働者、農業者、漁業者、中小零細商工業者の多くはわずかの財産もすべて津波で流され、今日、明日の生活に事欠いています。
 国の支援は、痛みも困難も大きい労働者、農業者、漁業者、中小零細商工業者にこそ、大規模かつ迅速でなければならないのに、実際は限られたもので、スピードものろのろしています。それに比べ、大企業への支援は資金は巨額で、しかも迅速です。  さらに見過ごせないことは、今回の震災と原発事故を口実に、「ともだち作戦」などと銘打って、最大級の日米共同演習が行われ、周辺国に重大な脅威を与えていることです。これを契機に、沖縄をはじめとする在日米軍の役割が強調され、悪化していた沖縄、全国の対米感情の修復と、日米同盟深化が意図的に追求されていることです。

誰のための救援・復興か

 このような中でも、震災からの復旧と復興を巨大な商機ととらえた財界は、恥知らずにもそのための提言と世論誘導を強めています。
 関西経済同友会は3月16日、「災害復興支援税を創設し、復興財源とすることを求める。その徴税方法としては、消費税に上乗せする」、「財源の一部については、子ども手当や高速道路無料化などの見直しを大胆に行うことで捻出すべきであり、新たな国債発行には反対である」との緊急アピールを発表しました。
 経済同友会の桜井代表幹事は29日の記者会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)の促進、子ども手当・高校無償化・高速道路無料化・農業戸別所得補償の見直し、法人税の税率引き下げを主張しました。
 経団連は31日、「震災復興に向けた緊急提言」を発表し、「政府における強力な指揮命令権をもった司令塔の確立」、「震災復興に関する基本法の早期制定」、「震災復興庁(仮称)の設置」を要求しました。その中に「道州制の導入」もすべりこませました。
 これらをうけて菅首相は4月11日、「復興構想会議」を立ち上げました。ここで検討される内容は、まったく財界の意向に沿うものばかりです。復興策には「新たな創造」だとか「エコ・タウン」建設など美辞麗句が踊っていますが、被災者救援と復旧で示された政府の対応を見れば、それが財界の利益に奉仕するものであり、国民多数の復興など後回しにされるであろうことは、明らかです。政府はすでに復興に必要な財源として「復旧復興特別税」などの増税を検討しており、国民への犠牲押しつけを強めようとしています。
 被災者救援と復旧・復興の財源については、財界などが主張する消費税などの大衆増税や、国民生活を犠牲にする予算削減を財源とすべきではありません。そんなことをしなくても財源はあります。例えば、日本の外貨準備は1兆1160億ドル(約94兆円)もあり、その多くが米国政府への貸付である米国債の購入に使われています。これを活用すべきでしょう。また、日本の多国籍大企業の内部留保は約200兆円と言われています。これは政府による大銀行・大企業支援や、中小企業と労働者の犠牲でためこんだものです。多国籍大企業の膨大な内部留保の一部を放出させるべきです。  財界やマスコミは震災直後から、TPP参加を主張しています。菅政権も震災への対応で手が回らなくなっただけで撤回していません。TPPは農漁業をはじめとする自立した復興にとって障害となるだけでなく、国の食料安全保障を脅かすものであり、きっぱりとやめるべきです。
 このような重大な局面にもかかわらず政党が役割を果たしていません。財界支援で民主党と同じ立場に立つ自民党は、すでに大連立に向けて動き出しているようです。多くの野党も挙国一致の世論操作の中、「政治休戦」などと言って国民のために発言せず、財界、政府の復興策に追随しています。

被災者はじめ国民大多数のための 救援・復興をめざして闘おう

 今、被災者の救援、大震災からの復興をめぐって、2通りの道があり、激しい闘いが始まっています。  第1の道は、財界のための復興です。第2の道は、国民の大多数を占める労働者、農業者、漁業者、中小零細商工業者のための復興です。今は第1の道が政治でも経済でも大きな力を占め、第2の道を圧倒しているように見えます。しかし、第1の道は本質的に国民大多数の利害と対立し、その利害の対立が目に見える事実として表に出てくれば、国民大多数から見放されます。例えば、東京電力が放射能汚染水を海に放出した時、生活の糧を奪われる茨城の漁業者が怒って立ち上がりました。圧倒的な国民が漁業者を支持しました。これは大企業のための復興か、国民大多数のための復興か、2つの道の闘いです。
 労働者、農業者、漁業者、中小零細商工業者がそれぞれ、大震災からの復興をめぐって、何の遠慮もなく自分たちの切実な要求をかかげ、政府に実行を迫って闘えば、2つの道の力関係は急速に変わっていきます。労働者、農林漁民、中小零細商工業者が多少の違いを超えてエールを交換し、時には手をつないでそれぞれの要求を支持し合い、政府に実行を迫って闘えば、第1の道を圧倒する力となり、要求実現に近づきます。
 財界支援ではなく、被災者救援、国民大多数のための復興を求めて、それぞれの要求を公然と掲げ、それぞれの垣根を超えて連携し、心ある学者や専門家の協力も得て、政府に迫る闘いを発展させること。いま、それが各社会層のリーダーや活動的な人々に求められているのではないでしょうか。
 東日本大震災から1カ月たち、全体の流れは復旧・復興へ移っていますが、政府が後回しにしてきた被災者救援は残っています。被災現地をはじめ各界の皆さんから報告や提案を受けて、被災者救済はどうすべきか、復旧・復興はどうあるべきか、その財源はどうすべきか、政党や政治はどんな役割を果たすべきか、積極的な討論をお願いします。

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