一般社団法人 全国農業協同組合中央会 会長 中家 徹
新型コロナウイルスは、農業分野でも需要減退による価格低下が幅広い品目で発生し、今もその影響が残っているものもあります。大きな影響を受けている生産者の方々を支援するため、消費拡大対策などに取り組んでいますが、先が見通せないなか、当面は苦しい状況が続くものと想定されます。
一方、社会に教訓も残したと考えています。その一つが、国民が必要とし消費する食料はできるだけその国で生産する「国消国産」の考え方です。コロナ禍でマスク不足は大きな問題となりましたが、もしこれが食料だったらどうなっていたでしょうか。実際に10以上の国が、食料の輸出規制に踏み切りました。工業製品と異なり、農畜産物はすぐに生産を拡大することができません。世界情勢が不安定さを増すなか、国際化がすすむわが国にとって「国消国産」の考え方は、食料を生産する側だけではなく、国民全体で認識共有することが不可欠です。
また、東京一極集中から田園回帰への潮流が生まれていることや、助け合いの精神が見直されていることなどの教訓もあります。昨年は従来以上に、国民の皆様に日本の食や農業の現状を知っていただく機会となり、コロナ禍での苦境を多くの皆様に応援いただきました。
こうしたなかで昨年は、食料・農業・農村基本計画が改定されました。特徴のひとつは「実践」を重視していることであり、この「実践」こそが、わが国の食料・農業・地域の行く末を左右することになります。食料安全保障の確立や農村実態に即した提言の策定などとともに、食や地域に携わるさまざまな関係団体・行政・事業者・消費者等との連携強化をすすめ、「国消国産」ひいては「持続可能な食と地域づくり」を実現するため、JAグループは役割を発揮し続けていきます。