自主・平和へ踏み込む時
編集部
イージス・アショア問題の核心は、どんな意味でもわが国の安全保障ではなく、安倍首相によるアメリカ(トランプ大統領と米軍需企業)のための計画だった。
しかし今、安倍政権の財界のための対米従属政治は問題噴出、国民的な批判の高まりの中で政権は末期症状。秋田、山口の県民の抵抗を前に防衛当局と安倍政権は計画停止を余儀なくされた。
こうして安倍政権と戦後の対米従属路線そのものの限界がまた一つあらわになった。次は、辺野古をやめさせる番だ。
自公与党の中は突然の配備停止発表に不満たらたらである。ポスト安倍の抗争も絡む。河井前法相夫妻逮捕で官邸への不満は高まる。安倍晋三内閣は「安全保障戦略」を見直すと言うが総辞職以外にない。
アメリカは黙っては引き下がらない。軍需産業にとっても、貿易赤字対処と雇用増は再選をめざすトランプにとっても死活的である。日米関係のギクシャクは避けがたい。自民党や外務・防衛官僚の主流である対米従属派も連動するだろう。
一方、日本の財界、とくに軍需(防衛というが)生産企業はここ数年、武器爆買い(FMS)に不満を募らせていた。経済界の要求も背景にしながら、自民党国防族に底流としてずっとある「自主防衛」への衝動も今回の背後に見ることができる。宇宙空間、サイバーなどのこれからの「戦場」に資源を集中したい防衛省の意向も表明されていた。それは新防衛大綱の一つの柱だった。
日米間の矛盾はどう展開するか。いずれにしても日米関係がまた一歩新しい状況に進む。
トランプは、ドイツにもっとゼニを出せ、協力しろと脅してNATO駐留米軍の削減を打ち出している。西欧諸国は、ファーウェイ制裁に協力せず、中国との関係も強めながらアメリカに対抗しようとしている。韓国にも、莫大な駐留経費負担要求でギクシャク。
トランプは在日米軍の撤退などを再び口にし、日本、対米従属の政治家や官僚を恫喝するだろう。国民の答えはただ一つ、「結構だ、黙って出て行ってくれ!」。
安倍首相は「新しい国家安全保障戦略」をめざしている。自民党内部では、先制攻撃で「敵基地を叩く」との主張が強まっている。安倍首相の狙いもそこである。マスコミも、朝鮮のミサイルの脅威や中国脅威を煽っている。安倍首相は国会閉会直後の記者会見で、「敵基地先制攻撃の新しい安全保障戦略」+「緊急事態条項など憲法改定」+「強制力を持った感染症対策」を語っていた。こうした3点セットに、「軍事大国化」だと近隣諸国が警戒を強めるのは当然だ。
中国などのミサイルは極超音速で迎撃は困難。だから「撃たれる前に叩く」という。そうではなくて柳澤さんも言うように、そうした意図を近隣諸国が持たないような関係をつくっていく外交こそ重要だ。しかしわが国が、中国や朝鮮を敵視するアメリカに縛られている限り不可能だ。対米従属国家からの脱却が不可欠。
日本が日米関係に縛られず、かつての朝鮮植民地支配の確固とした反省に立って韓国・朝鮮との協力関係を進めることは、南北関係・朝鮮半島の緊張緩和に大いに役立ち東アジアの安定を促す。対米関係で緊張する中国も、日中関係の発展と近隣の安定を望んでいるはずだ。それは経済関係一つをとっても、国益にかなう。
近隣諸国を敵にしない外交と経済協力関係、確固とした総合的な安全保障政策が必要である。