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日米地位協定 ■ 日米地位協定改定へ(柳澤協二/伊波洋一)

  日米地位協定 ■ 日米地位協定改定へ

円卓会議「改定を超党派で」シンポジウム開かる

 円卓会議「日米地位協定の改定を超党派で」が国会内で4月24日開催された。石破首相が就任時に日米地位協定の改定に言及したことを捉えて「自衛隊を活かす:‌21世紀の憲法と防衛を考える会(「自衛隊を活かす会」)」が、開催したもの。
 冒頭、「自衛隊を活かす会」代表で呼びかけ人の柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)が主催者を代表してあいさつした。その中で「首相が地位協定改定に触れたこのタイミングを生かして踏み込もう」と超党派による円卓会議開催の意図を説明した(要旨後出、文責編集部)。
 同じく呼びかけ人の伊勢崎賢治氏(東京外国語大学名誉教授)、加藤朗氏(桜美林大学教授)が問題提起した。また、参議院外交防衛委員会委員の伊波洋一議員(会派「沖縄の風」)が問題点を指摘し(要旨後出、文責編集部)、沖縄県知事公室基地対策統括官の又吉信氏が、沖縄県が独自に行っている海外調査「他国地位協定調査」について報告した。国会議員では山本太郎・れいわ新選組代表と同党の二人、それに立憲民主党と参政党の議員が参加、一般参加者も交えて意見交換が行われた。
 石破茂総理が衆議院議員の肩書でメッセージを寄せた。
 同会は今後、与党側にも働きかけを強め、超党派で地位協定改定に向けた論議を展開することを目指すという。大いに期待したい。

柳澤協二氏の冒頭あいさつを兼ねた問題提起

超党派の協力態勢が必要
 日米地位協定をめぐっては2024年10月の衆院選で、石破首相は「地位協定の改定を実現する」を自民党の公約にした。
 日米地位協定の問題は、まず相互性がない。米軍は日本に駐留するが、自衛隊が米国に駐留するニーズはない。日米安保条約の構造として、日本の施政権下への攻撃に対して共同防衛するという立て付けになっているからだ。
 対等性がない。敗戦から続く米軍占領の継続であり、占領時の特権を引きずっている。
 さらに駐留経費負担について。トランプ大統領が4月、「日本は何も支払っていない」と発言したのに対し、防衛省が試算したところ、地位協定にも根拠のない1987年の「思いやり予算」開始以来、すでに約8兆5000億円を負担していることがわかった。思いやり予算は、円高ドル安で米兵や家族が気の毒だから〝思いやり〟という名目で始まった。だが、今日ではその状況はまったく逆転している。
 だから、これを変えなきゃいけない、というのが、トランプさんの、ご本人そうは言いませんけれども、論理的に言うと、そういう問題意識なんだと思うんです。
 であるとすれば、地位協定だって、実は制度疲労しているんじゃないか。
 それはもう、その地位協定の「本則」と違う、経費負担の特別協定を、もう15年以上続けている現実があるわけです。これは何とかしなければいけない、という問題提起をしていくことは、当然できるんじゃないか。
 そもそも「経常経費米側負担」となっているのは、「地位協定3条」で、「アメリカによる施設の排他的な支配権」が事実上認められていることと裏腹であるはずです。ですから日本側が地位協定上負担するということになれば、地位協定のそういう条文も中身を見直していかなきゃいけないという問題提起ができるはずだと、私は思っています。
 で、それに対して、「そんなこと言うなら、日本から出ていってやる」と、仮に、「米軍を引き揚げちゃうぞ」ということをおっしゃるのであれば、それは「いやそうですか。残念ですけど、そうしたいならどうぞ」と。
 なぜなら、それは、日本の基地というのは、アメリカにとって必要不可欠。日本が「守ってください。いてください」という面ばかりが強調されているんですが、そうではなくて、実は、(米本土と極東の日本との間の)太平洋の広大な距離を隔てているということは、軍事的にも、ものすごく大変なことで、それを日本の基地があることによって、太平洋という「距離の障害」を、アメリカは克服することができているわけですね。
 そして、横須賀の基地では、恐らくアメリカ国外で唯一、空母の修理ができるという施設もあるわけですから、これを手放すなんていうのは、本当にあり得ないことなんですね。
 そういうことを自信を持って、われわれはアメリカにも言っていかなければいけないだろう。
 在日米軍基地は、米国側の軍事権益であり、もしトランプ氏が「地位協定を変えろというなら撤退する」と言うのなら、「どうぞ、そうしてください」と言うくらいの政治の胆力が必要だ。私も元官僚だが、これは官僚にはできない。
今、少なくとも地位協定改定について問題意識を持つ首相がいるわけだから、政争の具にするのではなく、超党派で一定の合意ができれば、それは日本の交渉力となる。

米国は日本を守らないことが決まっている

伊波 洋一参議院議員(沖縄県選出、参院外交防衛委員)

 日米地位協定の一番の問題は基地の管理権だが、もう一つは安保条約第5条の〝日本が攻撃されたら米国が守ってくれる〟という構図の下、米軍があらゆる区域を占有できる問題だ。さらに沖縄では、米軍には〝戦争で勝ち取った権利だ〟というニュアンスがとても強い。日本全体においても同じではないか。
 トランプ大統領が関税交渉で〝米国は日本を守るのに、日本は米国を守らない〟と発言したが、実際には米国は日本を守らないことが決まっている。
 2005年の日米再編協議の合意では、在日米海兵隊をグアムへ段階的に移転することを明記し、15年の新ガイドライン(防衛協力のための指針)では、日本の国土は日本自身が守ることになっている。
 だから「日本を守っているのだ」と米軍が好き勝手に頭上を飛び回ったり、広大な基地を維持したりする前提は崩れている。
 また、日米地位協定の2条では、米軍は不要になったものは日本に返還することになっているが、米国は不要になったものも返さず持ち続ける。それを権利だと思っているから代替を求める。
 今こそ「日米安保」は何のためにあるのかということを認識し、地位協定改定と同時に基地を返還させなければいけない。

米国の指示で自衛隊が
中国を攻撃する仕組みに

 昨年10月から南西諸島を中心に行われた大規模な日米統合演習「キーン・ソード」に先立ち、日米の机上演習「キーン・エッジ」(指揮所演習)が行われた。この内容を見ても、中国軍との戦闘に入った段階では、米軍は日本にいない想定になっている。その事態になる直前に米軍は日本からいなくなる。「キーン・エッジ」では、より具体的な想定がされており、米軍はフィリピン上空を通って台湾海峡に向かうことになっている。南半球から来る可能性もある。
 つまり、実際には、米軍は日本を守らないのだ。
 日本列島がアメリカのための盾となる選択肢しかない「日米安保」になっているということを共通理解にして、声を大きくしていく必要がある。新ガイドラインでは、日本が攻撃を受けていなくても、アメリカの指示で中国を攻撃しなければいけない仕組みができた。こういう状況が隠されたまま進行していることを危機感を持って受け止めなければいけない。