衆院選の流れを参院選に引き継ぎ政権交代への布石に
立憲民主党・参議院議員 水岡 俊一
「日本の進路」をご覧のみなさん、あけましておめでとうございます。参議院議員水岡俊一です。参議院には比例代表(全国区)として選出されており、現在3期目です。兵庫県内で公立中学校の教員として勤めていた経験があり、国会では教育政策などを中心に活動にとりくんでいます。参議院会派である「立憲民主・社民・無所属」で議員会長を務めており、42名の会派で仲間と活動しています。
「数の力による政治」が変わるとき
昨年10月に行われた衆議院議員総選挙では、立憲民主党が98議席から148議席と大きく議席を伸ばし、与党が過半数を大きく割り込みました。自民党が一人負けし、公明党はその巻き添えとなった形です。これにより、国会には新たな風景が広がっています。各委員会の委員長ポストはこれまで多くを自民党が占めていましたが、今回の選挙後に、議席数の配分によりいくつかの委員長ポストが野党へ移りました。
中でも特筆すべきは、衆議院で最も重要なポストの一つである予算委員長を30年ぶりに野党(立憲民主党の安住淳議員)が務めることです。終盤国会で近年連発されてきた「強行採決」など、これまで与党が数の力で押し切っていた国会運営がこれからは難しくなりました。少数与党は野党との合意形成に努力しながら、国会運営をしていかなくてはなりません。
自民党の「政治とカネ」問題
自民党は、衆院選でここまで大負けするとは思っていなかったのでしょう。9月に自民党総裁選が行われ10月に石破新総裁が誕生しましたが、解散を急いだのは失敗でした。新たな政権が立ち上がるとき、一般的にはご祝儀相場として支持率が高くなる傾向があります。その高い支持率のうちに、解散総選挙をして勝利しようという魂胆だったのに違いありません。石破氏は総裁選の最中には、「国民が判断する材料を提供するのは新しい首相の責任だ」と予算委員会開催の必要性を述べていたのにもかかわらず、結果としては一切の国会論争を行わないまま、戦後最短となる首相就任からわずか8日という驚くべきスピードで衆議院解散を決めてしまったのです。果たしてたった8日の間に、国民が判断できるビジョンを何か示せたのでしょうか。
そもそもこの衆院選は、自民党にまつわる「政治とカネ」の問題が発端となったものでした。派閥を中心とした政治資金パーティーによる組織的な裏金作りが発覚し、辞職する自民党議員が何人も出ました。しかし、関わった議員はその何倍、何十倍も存在します。真相究明と再発防止のために、衆議院、参議院でそれぞれ異例となる政治倫理審査会を動かすことになりましたが、対象になる議員へ出席を呼びかけても出てこない人が大半でした。そして、やっと出てきた数人もまったく核心に触れない弁明に終始しました。いつものようにやり過ごしていれば、有権者はじきに忘れるとでも思っていたのでしょうか。有権者の怒りは与党の想像以上だったようです。選挙後の政治倫理審査会には、選挙前に出席を拒んだ議員たちが次々と出席を申し出るというありさまです。
しかし、法改正も含め、依然として再発防止への対策が完璧に整ったとは思えません。引き続き国会で追及を続けていきます。
政治への信頼回復のために
「政治とカネ」問題により政治への信頼は、もはや地に落ちたと言えます。信頼回復のために何ができるか。もちろん即座に回復させることは難しいでしょうし、このままでは政治を志す若者も減ってしまいます。
政治とは生活に根ざしたもので、すべての人に関係があります。そして、政治が信頼を失い、有権者の支持を得られなくなれば、大胆な改革はできなくなってしまいます。衆院選の結果は、こんな自民党政治に国民がNOを突きつけたのだと考えます。
私たち国会議員は誠実に着実に、信頼を回復していくしかありません。そして、衆院選のこの流れを今年行われる都議選や7月の参院選にも引き継ぎ、政権交代への布石としていく必要があります。
いま学校が大ピンチ!
近年、教員不足が各種メディアでも大きく報道されています。1月に開会する通常国会では、教員の働き方に関わる法案が提出される予定です。それがいわゆる給特法改正案です。正式名称は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」で、公立学校の教員の給与や勤務条件を定めた法律です。1971年にこの法律が成立してから、公立学校の教員には残業代が出ていなくても労基法違反ではないとされ、いわば「定額働かせ放題」が合法化しています。
これは完全なるやりがい搾取の構造で、「子どもたちのため」と無理を押してがんばってしまう教員たちの気持ちを国が利用するものです。そもそも日本の教員の勤務時間は他のOECD諸国と比較しても過大で、給特法は現在の学校現場をサービス残業地獄としています。学校現場がハードだというイメージが世の中にも広まりつつあることで、教職課程を選ぶ学生は減り、教員採用試験の倍率はどんどん下がっています。このままでは、子どもたちの学びが十分に保障されないという危機が迫っています。
私は長らく給特法の廃止を含めた抜本的改正を仲間とともに求めてきました。2019年の改正の際には、参議院文教科学委員会での私の質問で、当時の萩生田文部科学大臣から「給特法の仕組みが、学校において勤務時間管理の必要性の認識を希薄化させ、学校における長時間勤務の歯止めにならなかったのは事実」との答弁を引き出しました。文部科学省も実際のところ、問題の一端を把握していることは間違いありません。しかし、給特法の問題はいまも変わらないままです。
子どもたちの教育を受ける権利を守るために、今回の改正案が実のあるものになるよう、委員会審議ではしっかりと政府を問いただしていきます。国会での議論にぜひご注目ください。
戦後80年を迎えて
2025年は戦後80年の節目を迎えます。80年経ったいまなお、戦後補償は終わっておらず、アジア諸国と日本の関係も劇的に改善したとは言えません。外国人BC級戦犯やシベリア抑留被害者、フィリピン残留日本人など未解決のまま棚上げにされている問題が多く残ります。
当事者たちには時間がありません。いまだ終わらぬ戦後補償を少しでも前へ進めることは、私たち国会議員の責務です。
阪神・淡路大震災から30年
昨年は元日から能登半島地震に見舞われ、その能登も含め各地で豪雨災害が発生したことから、災害について考える機会が多かったのではないでしょうか。2025年は阪神・淡路大震災から30年の節目となります。私は震災をきっかけとして、学校現場を離れ、政治の道に進むことになりました。これまでにも国会で地震や水害に関して質問し、被災者再建支援法の改正にもかかわりました。これからもライフワークとして、「被災者支援」「学校と災害」などのテーマにとりくんでまいります。
みなさまにとって2025年が良き一年となりますよう、心からお祈りいたします。