要塞化された琉球列島の島々 下地 あかね

下地島空港、宮古空港、平良港の「特定利用空港・港湾」指定

島で生きる子どもたちに明日の選択肢を渡すために

宮古島市議会議員 下地 あかね

 現在、国が進める「特定利用空港・港湾」は、指定した民間空港を自衛隊等がデュアルユース(軍民両用)するものと説明されています。すでに今年3月には国が管理する那覇空港や石垣港が指定されていますが、さらに指定を広げようと、宮古島市の下地島空港、宮古空港、平良港指定の検討を伝えに、6月26日、内閣官房の職員が宮古島市の担当者に面会に訪れました。
 市側から民生利用への支障と米軍の利用についての言及があり、有事の避難の際に空港がどのように使われるか話し合われたうえで、内閣官房国家安全保障局の参事官は、記者の取材に「理解を得られるように説明を続ける」と述べたとされます。
 4年前、保革相乗りで当選した座喜味一幸宮古島市長は、立場の異なる支持者の間に立って、国の進める配備強化については玉虫色の姿勢のため、詳細は報道から推察するしかないのですが、この面会において国は継続した説明が必要と感じたようです。

「国防」と「国民保護」は同居できない

 国の担当者と宮古島市が話し合った内容は重要であると、報道を読んで感じました。自衛隊等の訓練はじめ運用が加わるとなると、空港の管制業務に影響を与えることは避けられません。今年1月、能登半島地震の被災地支援に向かう海上保安庁と日本航空の航空機が衝突した事故では、管制官の業務がいかに常にプレッシャーにさらされているものか知られるきっかけとなりました。また、日米安全保障条約第6条は、「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」としており、自衛隊が使用できるよう整備された空港・港湾は、米軍による使用を妨げることはできないはずです。露払いとして自衛隊による整備が行われるにすぎません。
 重要な問題として見逃せないのは、有事の際の空港の利用です。宮古島市は国民避難計画で、有事の際に島外避難の経路として下地島空港、宮古空港、平良港を指定しています。その際に国際法の保護を求めて掲示することとなる「特殊標章」(青地にオレンジの三角のマーク)は、国際人道法であるジュネーブ諸条約と、国民保護法により規定されています。しかし、ジュネーブ諸条約第一追加議定書は「軍事目標主義」と「軍民分離」を基本原則としており、文民保護(国民保護)にあたっては、戦闘行為をする部隊や場所において実施することはできません。つまり「特殊標章」の掲示は、その施設が非武装であることが前提とされるのです。
 自衛隊や米軍がひとたび民間空港を使用すれば、その施設で国民保護を行うことはできないものと考えられます。防衛省は「特殊標章」について自衛隊への交付はされないものとしています(H19・8・28 運用企画局事態対処課「防衛省における特殊標章の交付について」/小西誠氏情報公開請求による)。
 国民保護計画は、県・市町村など地方自治体が計画を策定し実施することとなっています。しかし国防がその上に被さり、国民保護を困難にするとしたら――本来もっと厳しく追及されるべき問題です。
 島に住む住民の命や暮らし、この島が先人から継がれ、今日を生き、明日の子どもたちに島で生きる選択肢を渡していくこと。そうしたことが国防の理論によって上書きされ塗りつぶされていく。そんな時代にさせないために、この島からできることを考えています。警鐘を鳴らし続ければ「もしや」と思う人も増えるでしょうから。声を上げ続けたいと思います。