要塞化された琉球列島の島々 仲底 善章

最南端の島 波照間

空港の軍事利用に危機感をもつ島民の葛藤

波照間公民館館長 仲底 善章

 昨年の10月6日、地元の「八重山毎日新聞」紙上で、波照間空港の軍事利用の足掛かりになる、国の「特定重要拠点空港・港湾(仮称)」への位置づけを前提に、内閣官房、内閣府、防衛省、国土交通省、海上保安庁の関係者19人が竹富町役場を訪れたことが明らかになりました。
 太平洋戦争の末期、ここ八重山の島々にも戦火の波が押し寄せました。石垣島においては住民の山岳地への強制避難命令、竹富町の島々では西表島への強制避難命令が発動されました。波照間島では、マラリアの有病地の西表島南風見の浜に、陸軍中野学校出身の山下虎雄なる人物の問答無用、銃剣をかざした命令による強制疎開により、多くの島民が銃弾でなく、劣悪な居住環境によりマラリアに罹患して、亡くなるという悲惨な事態が起こりました。
 このような沖縄戦の実体験者や、この状況を聞かされ受け継いだ多くの島民は、戦争につながる事案について、反対の意志表示を重ねてきた経緯があります。
 昨今、台湾有事を声高に叫び、軍事力強化で平和を維持しようと画策する人々、米国や日本の軍需産業の片棒を担ぐ人々により、南西諸島の島々、奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島にも陸上自衛隊基地が次々に造られてきています。

滑走路延長は交通利便性で不可欠

 このような、波照間空港が次の標的になされるという危機感のなか、5月12日に平成6年公民館総会が開催されました。ここで、これまで竹富町役場への要請事項の一つであった波照間空港の滑走路延長要請案が、多数決により否決されました。
 先に国は、国民保護法に基づき、先島諸島の人々を強制的に九州各県と山口県に避難させる、竹富町の住民は長崎県に避難させる案を発表しました。
 今年の1月22日から、15年ぶりに大阪に本社がある第一航空株式会社が、石垣空港と波照間空港をチャーター便の形で運用するようになりました。定員19人の航空機を使っていますが、滑走路が短いという理由で14人の定員で運航している状況です。
 これまで滑走路延長要請を行ってきたのも、波照間・那覇間の直行便を開設するためには、滑走路を400m延長して1200mにする必要があったからです。
 島民および観光客の利便性を高めるためには滑走路延長は必要不可欠な課題です。
 現在、島民は、国の安全保障上の施策と利便性ある公共交通手段確保の板挟みに直面し、日々葛藤を抱えながら暮らすことを余儀なくされています。

 (編集部 波照間島は、沖縄県の八重山諸島の島。八重山郡竹富町に属する日本最南端の有人島である。また、波照間島南端は沖縄県最南端の地点である。面積12・73㎢、人口は454人)