要塞化された琉球列島の島々 花谷 史郎

石垣島にも米軍が

平和な島に軍事をもたらした「南西シフト」

石垣市議会議員 花谷 史郎

 6月に、昨年12月の米兵による性犯罪の情報が沖縄県に報告、共有されていなかったことが報道されてからも米軍関係者の事件や飲酒運転が後を絶ちません。
 一連の事態が明らかになって以降、沖縄県内の各自治体の議会では事件と、情報を共有しなかった政府の対応を批判する意見書や決議が続々と可決されています。
 石垣市でも7月5日に臨時議会を開き、「①被害者や家族への謝罪及び完全な補償並びに丁寧な精神的ケアを行うこと、②米軍人・軍属等の綱紀粛正の徹底と、抜本的かつ具体的で実効性のある再発防止策を講ずること、③在日米軍人・軍属に係る事件・事故が発生した場合は、地元自治体へ速やかに情報を提供すること」の3点を日本政府に求める意見書を全会一致で可決しました。また、同時に提出された決議文では米政府に対し厳重に抗議するとともに、「再発防止策の徹底がなされるまで日米共同訓練期間等において本市内での米兵の外出自粛を求める」ことが盛り込まれ、同じく全会一致で可決しました。

共同訓練で米兵多数が来島

 これは7月28日から全国で実施される日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン24」が石垣市内でも行われ、多くの米兵が来島することになっているからです。
 昨年3月に陸上自衛隊石垣島駐屯地が開設さたことで、これまでこの島にはなかった「米軍関係者の事件事故」が目の前まで迫っています。
 駐屯地開設前2019年に石垣島で行われた説明会で、現沖縄防衛局長が「石垣島で米軍と共同訓練を行う計画は全くない」と発言しました。
 しかし、その説明会からわずか4年後の昨年10月に日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」が行われました。米兵80人が来島し、机上訓練と衛生訓練が実施され、さらに今年は米兵140人が来島、机上訓練とともに12式地対艦誘導弾発射機等を駐屯地敷地内に展開させる対艦戦闘訓練が行われる予定です。
 石垣の市民団体は、ことあるごとに石垣市や自衛隊に申し入れを行っていますが、訓練は規模拡大しているのが現状です。
 防衛省は市民に対して誠意ある説明を欠き、理解を得ようと努力していません。石垣島では迷彩服を着た自衛隊員や軍事車両を見かけることが日常になりました。
 防衛省の不誠実な対応によって、肩身の狭い思いをしている自衛隊員もいるかもしれません。そして「彼らがどんな思いで島に赴任し、自分たちがどのような状況に置かれているのかを理解しているのか?」と考えると胸が締め付けられます。
 私たちの平和な島に軍事をもたらした「南西シフト」は、国境防衛のための自衛隊配備という単純なものではなく、日米が一体となった戦争準備なのだと改めて思わされる毎日です。

戦争準備より平和外交を

 石垣市は来月8月1日から住民避難やシェルター施設に関して、市民対象の意見交換会を4回にわたって開催すると発表しました。
 日本政府は有事の際に、石垣島や宮古島を含む先島諸島の住民など約12万人を九州7県と山口県に避難させる方針を出しています。しかし、「最短で6日で避難できるらしい」ということ以外、避難後の生活や島に残した資産の保障、避難の期間など何も分からないのが現状です。
 有事=戦争のことなので、その後のことが分からないのは当然のことなのかもしれませんが、何も分からない中でどこまでの意見交換ができるのか。
 住民に不安を与える戦争準備よりも、平和外交に力を入れることが国民の利益なのではないでしょうか? 日本政府と米国に、アジアの国々との平和外交の重要性を訴えていきましょう。