日本の真の自立で平和と繁栄を確保する
東アジア共同体研究所理事長(元内閣総理大臣) 鳩山 友紀夫
自主・平和・民主のための広範な国民連合の皆さん、先ずは第25回全国総会の開催を喜び合い、連帯のメッセージを送らせていただきます。
ロシアのウクライナ侵攻が開始されてまもなく、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でオンライン演説をされた際、多くの国会議員が与野党を問わずスタンディングオベーションの拍手で迎えたという。この話を伺った時、この国の安全保障に大きな不安を感じたのは私だけだったのでしょうか。
与党のみならず、野党まで真実を見極めようともせず、西側からの報道をただ単に鵜呑みにしてアメリカに従属してしまうことの危険性を私はとても心配いたしました。言うまでもなくロシアのウクライナ侵攻は非難されなければなりません。しかし、なぜその様な行動に出たのか、真相を理解しなければこの戦争を止めさせる力にはなり得ません。実態は、ロシア軍とアメリカ・NATOの兵器との闘いがウクライナを舞台に行われております。アメリカなどによるウクライナへのNATO加盟への勧誘とウクライナ政府による親ロ派住民への民族浄化的な謀略さえなければロシアのウクライナ侵攻は無かったと思うのです。
ここに戦争解決の鍵があります。そして、その鍵を握っているのはむしろアメリカです。そのアメリカは軍産複合体の国家です。ウクライナへの武器の提供で潤っているために、また、ロシアの体力を衰えさせるために、戦争の継続を望んでいるのではないかと考えられます。
本来ならば岸田首相はバイデン大統領に対して早期制裁を訴えるべきであります。ウクライナへの支援の協力だけではいたずらに戦争を長引かせることになるのではないかと懸念いたします。
米国の「台湾有事」策動を許さない
さて、この同じ手法をアメリカは、「台湾有事」を煽ることによって、中国に対して用いるのではないかと心配をしているのであります。
アメリカはロシア以上に中国の台頭を警戒しています。いわゆる「トゥキディデスの罠」です。既存の大国である米国と新興の大国・中国との間の緊張関係はしばらく続くものと思われます。アメリカにとって、その格好の材料が台湾問題であり、南シナ海問題であります。アメリカは、「一つの中国」を口では唱えながら、ペロシ下院議長の台湾訪問に代表される様に、最近は台湾の独立をあたかも支持する様な挑発を続けています。日本でもそれに呼応するような動きが見られます。
台湾は中国にとって核心的利益の中核です。ですから習近平主席が述べている様に中国は、台湾の独立派が決起した場合とか、あるいは他国の干渉が激しいときには何らかの軍事的な行動も辞さない構えです。
「台湾有事」の緊張感が高まれば、日本はアメリカから高い兵器を買わされることになります。すでに沖縄など南西諸島の自衛隊基地にはミサイルの配備が進められています。さらに、アメリカはINF(中距離核兵器)全廃条約が無き後、今後、中距離ミサイルを多数製造して配備することになるでしょう。アメリカのミサイルが中国に向けて、南西諸島に配備される危険性があります。
今の日本政府にそれを拒む能力があるのでしょうか。大変心配しています。もし、万が一、「台湾有事」で米中が戦うことになれば集団的自衛権を持ち出すまでもなく、米軍基地がある日本が戦場になることは間違いありません。原発施設が狙われたら日本は住めなくなりかねないことは福島原発事故で証明されています。
「自立」の旗の下に決意を持って集まる
日本は絶対に戦争に協力してはならないのです。やるべきことは周辺諸国とでき得る限り良好な関係を作り出していくことです。
世論調査で国民は、他国の戦争に巻き込まれる懸念を多くの方が感じておられるようです。同時に、その対策として「平和に向けた外交努力をすること」が、軍備増強することよりもかなり多かったことにこの国の救いを見たように思います。
「脅威」とは、「能力」と「意図」の掛け算です。能力があっても意図がなければ脅威ではないのです。中国や韓国はもちろん、ロシアや北朝鮮とも民間を含めて外交努力を行ってお互いに違いがあることを認めながら相互に尊重し、相互に理解し、相互に扶助するいわゆる友愛精神のもとに協力を深めていくことが肝要ではないでしょうか。
防衛費を倍増して軍事力を高める予算があれば、それを教育や医療や社会福祉、あるいは環境などに回すべきではないでしょうか。
このような発想は、国会の野党議員の中では残念ながら少数派かも知れません。しかし、多くの国民はただ単にアメリカに追随して戦争の危険な道に入り込むよりも、平和でそれなりに豊かさを感じられる生活を望んでいるはずであります。私はそのような理念を掲げる新しい旗を振り上げる人材を求めていきたいと願っています。
すなわち、単に政党単位で離合集散するのではなくて、日本の真の自立をめざす有為な人材が、この指とまれという形で「自立」の旗の下に、一人ひとりが決意を持って集まってくるときに、いま一度山は動くのではないかと確信しているのであります。
以上であります。ありがとうございました。