文字通り命の危機 打開は喫緊の最重要課題
『日本の進路』編集部
物価高騰が国民生活を直撃している。
全国消費者物価の先行指標、東京都区部3月中旬速報値では2月と比べてわずか1カ月で、都市ガスが4・4%、電気代3・4%など上昇幅が急拡大。食料品全体も2月は前年比2・8%増、とくに生鮮食料品は10・1%増。3月以後、とくに4月は値上げラッシュだ。
ロシア・ウクライナ戦争での資源・食料価格高騰、経済制裁と3月米国の利上げを引き金にした円安急加速などで輸入コストは増大、物価がさらに押し上げられる。政府小麦の売り渡し価格の大幅な引き上げで、すでに食パン(2月、前年比+8・2%)などが大幅値上がりだが、小麦の世界輸出の3割をロシア、ウクライナで占め、9月の売り渡し価格大幅引き上げは避けられない。
この物価高騰が続いたら国民生活は破綻だ。とりわけ、所得が少ない世帯は生活必需品の支出ウェイトが大きく、すでに大きな打撃を受けている。
みずほリサーチ&テクノロジーズは、食料・エネルギー価格の上昇によって、2022年の家計負担額が年収階級別にどれだけ増加するか試算した。それによると平均的な世帯で年間約5・5万円~6・2万円の負担増加に(少ない方は、政府の「激変緩和事業」を織り込んだ数値)。年収300万円未満世帯でも4・3万円~4・9万円の増加で、その年収に対する負担率増分は、+1・9ポイント~+2・1ポイントになる。全体平均は+1ポイント前後だから、2倍の負担増だ。家計消費に占める食料支出を示すエンゲル係数は2月、平均で27%。年収300万円未満世帯は33%超だが、年収1000万円超世帯では24%未満である。「節約」も食料では限界がある。
打開へ国民的運動を
すでに激増していた非正規労働者の低所得層、特に女性、高齢者、青年、外国人労働者をコロナ禍は直撃した。蓄えもないまま仕事を失い、そうでなくても仕事が減って収入が減少し、追い詰められている。その日の食に困る、家を失うといった状況が続出。
政府や自治体の公的支援は乏しく、ボランティアの献身的努力に辛うじて支えられている。子ども食堂が全国で6000カ所を超えたというが、そこも食材などの高騰で大変。NHKテレビが、コロナ禍で職を失った若い女性が売春で辛うじて生きているといった厳しすぎる実態をレポート。
政府の制裁は、プーチンを追い詰める前に、わが国国民を破綻に追い込んでいる。政府・自治体は、生活困窮者に生活維持の給付金を即時支給せよ。路頭に迷う人や外国人も含めてすべての人々にあらゆる手立てを講じて給付せよ。富裕層からは後日、増税でそっくり返してもらえばよい。
政府は「激変緩和事業」といって石油元売り会社に補助金を出している。しかし、例えば石油元売り最大手ENEOSホールディングスの2021年4~12月期決算の純利益は、前年同期の約5倍、3318億円。21年度決算は19年度を超えると見込まれている。
危機打開を政治の責任として取り組まなくてはならない。政府は、「激変緩和」のために、利益をため込んでいる企業に社会的責任を果たさせるべきだ。
コロナ第7波も迫っている。感染拡大の打撃を受けている零細・中小事業者、農漁業者への支援を、即刻、実現すべきだ。消費税の税率引き下げも必要だ。
労働組合や生協・消費者団体、農協なども先頭に立って、中小業者・業界団体などとも連携し、国民生活危機打開の国民的運動に取り組もうではないか。