地方の産業基盤である農業の再建を通じて地域の活性化を
全農林労働組合中央執行委員長 柴山 好憲
新年あけましておめでとうございます。
貴団体におかれては、日頃より平和と民主主義はもとより、経済・社会問題に対しても国民視点で各種取り組みを展開されていることに対し敬意を表します。また、昨年の全国総会では「日本の総合安全保障を考える」として、国民生活に不可欠な食料問題を取り上げて頂いたこと、関係する労働組合として感謝申し上げます。
地球規模の異常気象が世界各地に深刻な影響を及ぼす中、わが国においても何十年に一度と言われる豪雨や暴風などの自然災害が多発し、各地に甚大な被害をもたらしています。昨年9月以降の台風災害でも多くの命と生活インフラが奪われ、復旧・復興には多大な時間と労力が必要となっています。防災や減災問題を通じ、国土の保全や環境の整備、地域社会の再構築という課題が突きつけられています。
私たち公共サービスに従事し農林水産行政に携わる労働組合として、被災地・被災者に寄り添った様々な支援活動に取り組む決意を新たにしています。
さて、わが国の食料・農業・農村、さらに、農林水産行政を巡る情勢については、総会時のパネルディスカッションでも議論されたと聞いておりますが、当面する課題として、過去最低となった食料自給率の中で、施行20年目を迎えた『食料・農業・農村基本法』をベースとした4回目となる基本計画の見直しです。
基本法では、「食料の安定供給の確保」「多面的機能の発揮」「農業の持続的な発展」「農村の振興」という4つの基本理念のもと、食料・農業・農村における21世紀のあるべき方向を定め、その具体的実現に向けて5年ごとに「基本計画」を策定し、各種施策を進めてきました。特に、食料自給率の目標設定や農業・生産者の枠を超えて食料安全保障を達成しようという「国民の視点」に立った食料需給システムを構築するとした考え方は、我々も含め多くの関係者が評価しました。
しかし現状は、WTOによる指導性が弱まるなか、二国間や多国間におけるルールを含めた貿易交渉が進み、我が国においてもTPPや日欧EPAなどの経済連携・貿易協定、さらには日米貿易協定の締結など、農産物の関税撤廃と経験の無い自由化が進行しています。また、表裏一体として「強くて国際競争に打ち勝つ農林水産業」を旗印に、規制改革会議や産業競争力会議などが中心になり、「競争力強化プログラム」に沿い矢継ぎ早に関係法律の改廃・見直しが行われるなど、日本の農林水産業が大きな分岐点に置かれています。生産現場や消費者から不安や懸念の声が聞かれる中、各方面の声に耳を傾けるとともに、現状の的確な検証を踏まえた、中・長期的視点に立った食料・農業・農村政策の打ち出しと実効性が求められています。
全農林はこの間、地方の産業基盤である農業の再建を通じて地域の活性化を図ること、食料の自給率向上を前提とした持続可能な農業の確立に向け、様々な活動を行ってきました。しかしながら、十分な結果や成果に結びついているとは言えず、さらなる取り組みの強化が課題となっています。貴団体の全国総会、パネルディスカッションにおいて、活発な議論が行われ「食料安全保障の確立」と「農林漁村の活性化」に向けた方向性が示されたことに期待するとともに、全農林としても問題意識を共有しつつ各種取り組みを積極的に展開していくことを決意し新年に際してのメッセージとします。
2020年1月1日
(見出しは編集部)