憲法改悪阻止にむけた広範な連帯・協働の闘いを構築しよう
部落解放同盟中央執行委員長 組坂 繁之
昨年の衆議院総選挙は、安倍政権が森友学園と加計学園の疑惑隠しと、政権延命を画策した自己都合解散でしたが、選挙直前の民進党の希望の党への合流、その後の立憲民主党の結成など、野党側の混乱があったとはいえ、再び与党に3分の2の議席を許すというきびしい結果となりました。私たちは、この間、人権や平和の確立にむけた政治勢力の結集をめざしてきましたが、いまだ安倍政権の退陣をかちとれない運動の弱さをしっかりと総括しなければなりません。とくに、総選挙後の安倍政権は、自民党「憲法改正推進本部」全体会合を開催し、「自衛隊の明記」「教育の無償化」「緊急事態対応」「参議院の合区解消」の4項目を中心に党内集約を急ぐなど、憲法改悪にむけた策動を強めています。さらに、朝鮮半島情勢を口実に防衛費予算の増額、沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設など、日米軍事一体化をいっそう推進し、憲法9条改悪による「戦争をする国」づくりを強引にすすめようとしています。
また、安倍政権は「働き方改革」や「人づくり革命」などで、すでに破綻した景気回復策の失敗をごまかしながら、生活保護費をはじめとした社会保障・医療費の削減、労働法制の改悪をすすめようとしています。しかも、貧困や格差がますます深刻化しているにもかかわらず、原発事故への対応同様、問題解決への政治責任は放棄されたままであり、こうした社会への不満や不安がヘイトスピーチなどのような差別排外主義と安易に結びつき、公然と差別を扇動する差別状況が生み出されています。
私たちは、こうした社会的政治的情況に抗して、部落差別に反対する幅広い取り組みをすすめ、「部落差別解消推進法」を制定することができました。この法律は、いまだに部落差別が存在することをふまえ、あらためて「部落差別は社会悪である」ということを明確にし、国や自治体による部落差別撤廃にむけた相談体制と教育・啓発の充実、実態調査の実施などが盛り込まれています。今後とも、反差別共同闘争を発展させ、いまだに部落の地名をインターネット上に掲載し、差別を拡大、拡散する確信犯的で悪質極まりない差別事件や、結婚差別事件が起こるこの社会の差別構造を変革していくことが求められています。また、事件発生から55年を迎えた狭山の闘いも、数多くの新証拠によって石川一雄さんの無実は明白です。今年こそ、再審実現をかちとっていかなければなりません。
私たちは、こうした部落解放運動の課題と取り組むとともに、憲法改悪阻止の闘いをすすめるとともに、差別と戦争に反対し、人権と平和、民主主義の確立をめざした協働の闘いの強化に取り組んでいきます。「部落差別解消推進法」の制定を大きな契機としながら、多くの人権課題、差別問題の取り組みと連帯・協働しながら、ともに総合的な人権の法制度の確立をめざしましょう。