スーパーの売り場で見えた生活苦

埼玉県・食料品スーパー勤務 津村 隆史

 昨年後半より毎月のようにガソリン価格は高騰、生活費に響いていたが、さらに今年1月から国民生活に大きな影響を及ぼす食品や必需品である日用雑貨も値上げに次ぐ値上げで、家計を直撃しています。1月はパン類が9%、2月は冷凍食品が、3月には紙製品15%、さらにマヨネーズ、サラダ油、ケチャップ、しょうゆ等の値上げが続き、上がらないものがないほど目白押しです。
 このような状況では値上げ前のまとめ買いも限界があり、以前より特売商品や値下げ品を求める人が明らかに増えていると、食品スーパー勤務の仕事柄、実感させられる毎日です。


 明日までが賞味期限の「牛乳・パン・豆腐」は午前11時から、「魚の切り身」「肉類」は夕方6時から値下げ販売、何時からは2割引、さらに何時から5割引になるかを調べ、その時間を狙って買いに来る人が目に見えて増えています。
 従来、値下げ品購入は女性客や年金生活者が多かったのですが、コロナ騒動以降、値下げ品購入イメージがない作業服姿の職人、男性会社員、青年・学生まで、老若男女が次々と値下げ品を買い求めに集まります。日々の生活を守るため、少しでも食費を切りつめていることの表れでしょう。
 値下げ品を買うため一日に何度も来店する人、1時間あまり店内を回遊、値下げのタイミングを待つ人も。
 先日、野菜売り場で、キャベツの外側の葉っぱをむいて捨てるポリバケツの葉っぱをビニール袋に詰めながら、高齢女性が申し訳なさそうに「ギョーザや野菜妙めを作るので、くださいな」と、声掛けしてきました。店の決まりでは持ち出し禁止ですが、廃業処分するものであり黙認で差し上げました。
 時々捕まえる万引きも以前に比べ高齢者が多く、「鮭の切り身」「鶏の唐揚げ」や「菓子パン」などを、「お金がなく盗ってしまった」「100円未満のお金しかない」などという理由が増え、高齢者の貧困問題を痛感しました。
 常連の老夫婦が5割引のお弁当や総菜をたくさん買われたので、「これからご夕食ですか?」と話しかけると、奥さんが「物の値段が上がったから。安い時にまとめて買うの」とのこと。この夫婦は年金生活で、税金が上がり年金は削られる中、少しでも値段が安くなるからと、自転車に乗れなくなった今も、20分歩いて来店、購入した品をリュックサックに入れ帰宅されるが、たいへんだなと思います。
 レジでは、商品登録する「登録機」と、お客さん自身が代金を支払う「精算機」がセットです。最近多いトラブルは精算機で代金を支払う際、たくさんの硬貨を機械投入口に入れて詰まらせ、その対応で手間をとられることです。なんでたくさん入れたの?と聞くと、「以前は、お釣りの硬貨をためておき、郵便局のATM機で入金し貯金するのを楽しみにしていたが、1月から入金した硬貨の枚数で手数料を取られる。アタマにくるので、レジの支払い時に使おうとした」とのこと。(ゆうちょ銀行では、硬貨の金種に関係なく1枚~25枚まで110円…と、枚数に応じて「硬貨手数料」を取る)
 庶民や弱者の生活が真綿で締めつけられるように各方面で厳しくなって、生きていけない時代が到来しています。強者優遇・弱者切り捨ての、このような社会がいつまでも続くはずはありません。続けさせてはいけません。