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第24回全国総会 総会決議案の提案に際して

眼前で進む内外の激変をしっかり見抜くことが重要

「対抗軸」明確に国民運動を呼びかけ組織する

事務局長 山本 正治

 「情勢と課題、国民連合の方針」については議案として文書で提案してあります。しかし、議案作成には一定の時間の経過があります。その間にも内外情勢は大きく変化しています。そこで最近の情勢激変を中心に、時間の都合でとくに必要と思える三点について述べてみます。
 それは第一に、私たちの生きている、そして活動している環境としての世界と日本の情勢についてです。これは、これまでの続きとしては捉えられない、今日の状況がこれからも続くと考えてはならない、文字どおり激変の情勢がすでに始まっているという問題です。この半年とかの間に激変が進んでいるという認識です。
 とくに、世界の激変で日本は翻弄され、日本の私たち、安倍政権ですらどうにもならない、自分で決められない、対処を迫られる、強制される、これまでと異なった国際環境となっていることです。そのなかで日本がどう生きていくのか、これは1億2千万の国民、これからの国民、私たちの子や孫の、子々孫々の日本の民族全体にかかわる、文字おどり深刻に問われる事態です。ところが、目の前で進んでいる激変についての認識が、与野党問わず政治のリーダーたちの問題意識が極めて弱い、ここが最大の問題です。

世界は転換点を通過している

 まず、国際環境の激変を三つの方面から申し上げてみたい。
 一つは経済の状況、世界の経済がこのまま続かないところとなっているということです。
 大規模な金融危機の切迫です。ごく最近は、「もはやリーマン後ではない」といった調子で、IMF(国際通貨基金)などさまざまな国際機関も警鐘を鳴らしております。当時、リーマン・ショックは「百年に一度の危機」と言われましたが、またもや。議案にも触れましたが、全世界の国内総生産(GDP)約85兆ドルの約3倍の250兆9000億ドル、日本円で2京7000億円もの債務が世界中の公的機関と企業や民間に積み上がっている。全世界の経済を吹き飛ばすような爆薬に満ちている世界です。需要がないのでそれだけ借金をして先食いしているとも言えますが、その経済は限界点です。
 それにわが国の豪雨災害も地球からの警鐘でしょうが、CO2などをまき散らす産業革命以来の経済発展は温暖化をもたらし、地球環境と共存不能になっています。
 いろいろな意味で世界経済は持続不可能です。この危機を背景に、世界中で貧困が急激に広がり、貧富の格差が激化しています。各国で国民が立ち上がっています。若者が立ち上がっています。どの国の政治も極めて不安定となっています。トランプ大統領をはじめ、世界中でポピュリズムが広がっています。
 2点目は、この危機と同時に、人類の歴史が始まって以来といわれる技術革新が進んで、危機が著しく加速されていることです。とくにここ最近は、社会を激変させるといわれる5G(第5世代通信システム)が実装され始め、自動運転などが急速に広がる。この第4次産業革命などといわれるこの技術革新は人類史上の激変をもたらす。当面して、経済危機を加速して、富める者と貧困層との矛盾をいっそう激化させる。経済・社会は、技術という一番奥深いところから激変が進んでいる。この認識も重要です。
 3点目はこの世界で、各国間の対立が激化しているわけです。とくに米中対立は冷戦と言われる状況です。衰退するアメリカは、あらゆる手立てを使って世界から搾り取るドル支配を維持しようと策略の限りを尽くしている。その結果、世界は、とりわけアジアは非常に不安定、危険な状況となっています。ホルムズ海峡の緊張、シリア情勢、台湾海峡の緊張などが一気に高まっています。日韓対立や香港情勢について、『日本の進路』11月号で青山学院大学の羽場久美子先生が「背後で操っているアメリカがいる」と警鐘を鳴らしています。東アジアで何か起こると欧米の識者たちが危惧していると述べています。11月号をご覧いただきたい。
 世界はいろいろな意味で急速に変わっている。これが今私たちの目の前で進んでいる国際情勢の文字どおりの激変です。

安倍政権の危険な策動

 第二ですが、この激変に、日本の政治は応えているでしょうか。
残念ながら野党はほとんど関心がない。応えていないと言わざるを得ません。われわれにも課題です。この問題を総会ではしっかりと捉えないといけないのではないかと思います。
 他方、安倍政権はこの世界の激変、とりわけ米中対立という新しい状況をチャンスと見て軍事大国化に拍車を掛けています。わが国が大国として国際政治に登場する道を早めています。
 安倍政権は、自衛隊艦船の中東への派遣を決定しました。「わが国の船舶を守る」ために自衛隊を海外に派兵すると言う。これは戦後に「平和国家」を唱えて以後なかった、国家意思の決定であり、表明です。わが国の状況が、一つ新しい状況に移り変わっているということを象徴する出来事だと思います。
 わが国はずっと安全保障の問題をアメリカに委ね、それが習い性になっていました。独立国ではなかった。照屋義実さんの報告にもありましたが、沖縄をはじめとする米軍基地、主権放棄の日米地位協定など独立国ではなく、従属国状態が続いています。しかし注目すべきはそうしたなかで、日本政府がこれまでと違う動きを始めているということです。米中の争いのなかで、その対立も利用しながら「自立」の道を模索していると言ってもよいでしょう。
 こうしたなかでつい先日、11月18日でしたか読売新聞が、「米中の対立で日本に行動の自由が生まれている」「日本が世界でより中心的な役割を担う絶好の機会が到来している」と言って、日本経団連中西宏明会長(日立製作所会長)と安倍首相の外交アドバイザーとも言われるアメリカ人のイアン・ブレマー氏が共同議長となって「Gゼロサミット2019」なるものを東京で開催した。中西会長らは最後に「政府や産業界のリーダーのみならず、社会全体が一つになって動くことが重要」と大国化、軍事大国化を日本の世論に呼びかけています。こういう呼びかけが商業新聞を通じて堂々とやられる、そうした時代に入っているのです。政治は明らかに立ち遅れています。
 この大国化の道、中国などアジアを敵視し対立する道に対して、国民の間に議論を呼びかける必要があります。違った道、「対抗軸」を提起する必要があります。
 広範な国民連合は、独立の道は当然だが、大国化、軍事大国化でアジアと対立する道ではなく、アジアと共生する平和の道こそわが国の生き方だと提起するわけです。
 この点を明確にすることなしに、わが国の自立を含む軍事大国化の道を進める安倍政治、支配層の政治に対抗できないと思います。米中対立のなかでわが国の自立と安全をどう確保するのか、外交と安全保障政策を含む国の進路の提起が急がれています。緊急の課題であろうと思います。
 課題は、軍事での安全保障だけでありません。食料安全保障政策や、脱原発で持続可能なエネルギーの安全保障問題もあります。地球温暖化を背景に森林や農地の荒廃が大きな原因となっている昨今の豪雨災害から国民の命と安全、暮らしを守る安全保障も喫緊の課題です。
 こうした点についてこの全国総会の提起は極めて意義深いものになると確信する次第です。

国民運動、大衆行動を呼びかける

 第三は、政権と闘う国民運動についてです。広範な国民連合は院内闘争だけでなく国民運動を何よりも重視しています。野党各党は、院内闘争に熱中しているようです。院内闘争が必要ないとは申しません。しかし、限界は明らかです。どの国でも、怒った国民が、若者が街頭に出て、政治を動かしています。日本もそうしようではありませんか。入試制度改悪に怒った高校生たちは立ち上がり、阻止しました。続こうではありませんか。
 国の進路をめぐる国民運動の基礎は、国民各層の生活問題での闘いです。国民連合は今後、「自主・平和」の国の進路の課題だけでなく、国民生活の切実な課題を徹底的に重視していきたい。議案の中で触れていますが、自民党だけでなく野党も生活の厳しい国民の期待に応えていないのです。
 もう一つの問題は、国民運動もさまざまで、もっと大衆行動を重視したいということです。そのため各県と全国で行動を組織できる実力ある国民連合をつくる活動を何倍も強めたい。広範な国民連合の組織強化が喫緊の課題です。このために、お集まりの皆さんのご協力を心から呼びかけます。
 「自主・平和・民主」のためにともに闘うことを呼びかけて問題提起にかえさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。