2017年10月 総選挙の経過と結果から考える

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「日本の進路」編集部

 第48回衆院選の投開票は10月22日、折からの台風がもたらした暴風雨の中で行われた。各候補者、運動員は、選挙期間中も雨にたたられ、ずぶぬれになりながら支持を競った。
 私たちは、急遽、「朝鮮半島危機。政局と総選挙の課題」緊急討論会を開催した。また、志を同じくする賛同会員の立候補者を推薦し応援するとともに、今回は同時に、「安倍政権と闘い、希望の党にも与せず主張を貫いて闘おうとしている候補者」を激励した。推薦候補者をは じめ安倍政権と闘って当選された皆さんに祝意を、奮闘された皆さんに、誠にお疲れさまを申し上げる。
 それにしても窮地に陥っていた安倍首相による突然の解散以来の経過、とりわけ野党状況は天候以上に波乱続きだった。当選を果たした陣営の方々を含めて、そのあまりの混迷ぶりに疲れが倍加したのではないか。
 この選挙は、アメリカが衰退し世界は歴史的転換点を迎え、しかも強引な巻き返し策動で朝鮮半島では核戦争になりかねない軍事挑発が強まるなど、かつてなく内外の緊張が高まる下で争われた。経済金融の危機も迫っている。しかし、わが国が直面した深刻な諸課題は争点とならなかった。
 結果、自公与党は議席を減らしたが、それでも全議席の3分の2を上回る313議席を獲得し、安倍政権が継続されることになった。自民党内の動揺は、しばし封じられた。しかし、内外の危機は何一つ変わらない同じ日本である。安倍政権の窮地は続き、早晩、党内部の矛盾もまた激化するは必至。
 野党では、立憲民主党が躍進した。沖縄では、新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力が圧勝。野党勢力は、北海道や東北、新潟など農村地帯でも奮闘が目立った。佐賀県では自民党を小選挙区全敗に追い込んだ。
 一方、希望の党も、維新の党も、大幅に議席を減らし、共産党に至ってはほぼ半減した。社民党は議席を維持。
 民進党は分化し、野党相互間の力関係は大きく変化した。この結果、野党再編がマスコミをにぎわしている。しかし、政党や議員の数合わせの離合集散にはもうウンザリだ。「新しい国会で野党共闘を発展させる」という野党もある。
 こんなことで闘えるのか、真剣な検討が必要である。

自民党はとっくに国民の支持を失っている

 この選挙結果は「国民の意思」とはまったく違う。
 マスコミのどの世論調査でも、安倍内閣支持率よりも不支持の方が高い。国民の多くが安倍政権に続けてほしくないと思っている。
 そもそも投票率は、53・68%で全有権者の半数近くが投票していない。希望を託す政党を見つけられないのである。
 今回、自民党の得票率(相対得票率)は33・28%(比例)だが、有権者全体での支持率(絶対得票率)はわずか17・49%にすぎない。この絶対支持率は1996年総選挙で18・64%となって以来ほぼ変わっていない。
 自民党は国民の支持を失ってすでに20年余たつのである。自民党は、そこを最初は「自社さ」連立、その後は小沢一郎氏の自由党、それに公明党と「自自公」連立、その後は今も続く「自公」連立など、理念も基本政策も異なる他党を政権に引き入れ、すなわち政治術策で乗り切ってきた。
 選挙制度の問題もある。例えば今回自民党は、わずか有権者の17%の支持で小選挙区議席の75%を占有した。選挙という民主主義は、民意を必ずしも、あるいはほとんど反映しないことすらあることを忘れてはいけない。

いつまでも野党の離合集散に振り回されるわけにはいかない

 術策で政権を維持する自民党に対抗する野党もこの間、「基本政策抜き」の野党再編・再結集、あるいは野党連合など離合集散を繰り返してきた。今回の、小池百合子氏の「希望の党」立ち上げと、前原誠司代表による路線・政策抜きの「民進党」解体・「希望の党」合流選択はその極致といえる。前原氏の選択は、有権者・国民はもちろん、民進党の地方議員すら蚊帳の外に置いた、衆議院議員だけの離合集散だった。そして結果は、有権者から完全に見放された。
 枝野幸男・立憲民主党代表は「上からの政治を草の根からの政治と政策へと変えていく」と批判した。これには久しく聞かなかった斬新さがあり支持された。当たり前だが、政党、政治家は国民のためにあることを忘れてはならない。
 そして真に問われているのは、国民生活の危機など内外の諸困難をどう打開するかの政策である。枝野氏と立憲民主党もこれから試される。

政策的対抗軸こそ問われている

 わが国の直面する基本問題で自民党への政策対抗軸が他にないことが今日の最大の問題である。
 選挙が始まった翌11日、沖縄県東村で米軍ヘリが墜落した。原因究明も米軍の飛行再開強行にも、日本政府は手も足も出せなかった。翁長雄志知事は「これこそ『国難』」と怒った。ところがこの国家主権にかかわる大問題が総選挙の争点とはならなかった。野党各党も沈黙した。沖縄県民の安全がかかった新基地建設問題も、沖縄以外ではまったく争点にならなかった。
 その米軍の戦争挑発で朝鮮半島や日本が核戦争の戦場になりかねない、平和と安全の一大危機である。安倍首相は、危機を絶叫し、支持獲得に最大限に利用した。が、野党の多くは沈黙した。「朝鮮制裁」で与野党に違いは見えない。
 東京沖縄県人会名誉顧問の川平朝清さんがある会合で、「憲法改正は大きな問題だ。その前に『憲法の上にある』と言われる日米安保条約や地位協定、日米安保体制という国家の基本問題こそ最大の争点」と喝破していたが、その通りだ。
 国民生活の危機打開のために、巨大企業の莫大な内部留保がある中で、税・財政政策をどうするかも大問題だ。
 野党といっても、対米関係と国民の安全、生活危機と財政など国家の基本問題で自民党とそんなに違いがない、争点にしない。
 これでは自民党に勝てないだけでなく、そもそも自民党に対抗する、一貫した政策をもった野党ができないのが当然である。時間がかかっても、対抗軸が明確な政治勢力の形成を促さなくてはならない。

強力な国民運動を構築する勢力が求められる

 求められる政治勢力は、「草の根」すなわち国民の運動を重視しなくてはならない。一昨年の安保法制反対の時のように、広範な国民的運動の発展こそが政治を変える根本的力である。「オール沖縄」の強さは、選挙の時だけでない県民運動の強さである。議会内外の運動が呼応し結びついたときに大きな力となる。
 政治を変えようとすれば、選挙だけでなく国民世論に働きかける、とりわけ今日、アメリカの戦争政策に反対しアジアの平和を求めるような、労働者も農民も商工業者も、市民も、国民各層が結集する壮大な国民運動構築に力を注ぐ必要がある。
 政党、その政治家たちの努力にも期待し連携しながら、対抗軸が明確な国民運動を重視する新しい政治勢力の登場を「草の根」から促すために努力しなくてはいけない。

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