新潟知事選と2つの衆院補選結果から考える

共有(シェア)Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

「日本の進路」編集部

 新潟県知事選と2つの衆院補選。10月に3つの注目される選挙があった。新潟県では反自公勢力の推す知事が誕生した。東京と福岡の2つの衆院補選では自民党の当選を許した。
 総裁任期延長をほぼ手にした安倍晋三首相は、衆院解散総選挙で長期政権を実現し、憲法改悪で対米従属下の軍事大国化をさらに推し進めようと画策している。
 それだけに一連の選挙結果から教訓をつかむことが重要である。

進む自公勢力の瓦解
野党の弱さに助けられる安倍

 2つの補選も、自民党が勝ったわけではなく、「負けなかっただけ」である。福岡では自民党県連の候補者が大敗し、東京でも勝ったのは自民党都連が除名処分にしようとした小池都知事だ。
 新潟県知事選の投票率は53・05%で、前回より9・1ポイント伸び、1996年選以来、20年ぶりに上昇した。一方、補選の投票率は、東京が34・85%、福岡が45・46%で、いずれも過去最低を記録した。国民生活の苦難は底知れず、世界は政治も経済も大激動で、国難とも言うべきこの時期の選挙で、危機打開の道筋は語られなかった。片や「小池劇場」、他方は「弔い選挙」。有権者の大半は呆れて何も期待できず、投票所に足を運ばなかったのである。
 有権者は安倍政権、自公与党を支持していない。それは先の参院選でも新潟県知事選でも示された。だが、それに代わる政策対抗軸と政権展望が見えない。野党がそれを示せないから、有権者は棄権するしかない。本誌8月号で大澤真幸さんが、「代わりの船を示せ」と喝破した通りである。
 民進党以外の野党(維新を除く)は、「共闘のあり方」 「真剣な総括が必要だ」などと民進党を批判している。民進党だけでなく他の野党もほめられたものではない。第1に責任を負うべきは野党第1党の民進党だが、他の野党は「真剣な総括」をしたのか。
 例えば、大敗した先の都知事選でも、残念ながら、いまだに総括らしき総括を聞かない。それどころか共産党は、この結果を「大健闘」と讃え「今後につながる成果を得た」といっている。何が今日につながっているか聞いてみたい。マスコミの福岡6区補選での出口調査によると、投票した共産党支持層の38%の人びとが自民党(追加公認)候補に投票したという。共産党の支持者も、原則抜きの党利党略選挙方針に愛想を尽かしていると言えないか。まさに、真剣な総括が必要である。
 一方、民進党は、補選と同日投開票の富山県、岡山県の両知事選で自公と相乗り推薦だった。新潟県知事選では、自主投票で物議をかもした。極めつけは福岡6区で当選した鳩山二郎氏の後釜を決めた大川市長選である。民進党は、補選で自民候補と争いながら、同日投票の市長選では自民推薦候補に相乗りして推薦(そして大敗)したのである。
 有権者はしっかり見ている。自公与党だけでなく野党についても、その姿を見抜いている。

安倍路線反対の保守派を含む
広範な勢力形成こそカギ

 2つの補選に共通する最大の特徴は、「自民分裂」であった。都知事選もそうだった。
 日経新聞「核心」欄(10月3日)で、芹川洋一論説主幹が7月の参院選に触れ、「青森も岩手も福島も新潟も長野も、もともと自民が分裂しているところ。保守票の一部が向こうにいって野党と組めば強い」という政府高官の分析を紹介して、「おそらく正しい」という。われわれもその範囲では正しいと思う。だが、芹川氏の結論は「民進は全体、右向け右」だと言う。政治的な思惑が見え見えだ。参院選直後、連合は事務局長談話で「保守基盤を崩すには至らず、取り組みの検証が必要」といった。この範囲ではこれも正しい。しかし、「右向け」で安倍のところに近づけば、ますます労働者、有権者に見放されるだけである。

 「東北・甲信越の乱」の背景となる「もともとの自民党分裂」には社会的基盤がある。農村、とりわけコメ単一作地域の東北地方などで保守派が分裂し、反自公候補が勝利した。農民、なかでも地域の「指導層」を形成していた農協などの役員クラスが自民党に反旗を翻したからだ。新潟県知事選挙でもそれははっきりと出たし、昨年の「佐賀の乱」も同様であった。全国の農村で、地域で、「乱」は静かに広がっている。
 その辺のところを「日本農業新聞」は論説で、「今夏の参院選でも与党は東北6県の1人区で、秋田県を除き野党統一候補に敗れた。甲信越3県では全敗した。国内有数の水稲や果樹地帯で示された『農の民意』は、安倍農政に懐疑的であり、新潟県知事選でもその流れは続いた」と指摘した。
 歴代自民党政権の売国農政で崩壊させられてきた米作り中心の農業は、米を作る農家を一律支援する民主党政権の戸別所得補償政策で、わずかだが救われ一息ついたかに見えた。しかし、その政権も3年で崩壊。自民党政権は交付金を半減し、それすら後1年でなくす。しかも、環太平洋経済連携協定(TPP)で米輸入を増やすために米価を意図的に引き下げた。政府の2015年産米生産費統計を読んでも、東北北陸に集中する米単一作農家の80%が赤字となっている。自公政権を支持できるはずがない。
 安倍の「右」に近づくことではなく、こうした人びとの要求に応え、安倍路線に対抗する「保守派も支持できる道」をしっかりと示して対抗軸とし、戦線を築くことが求められる。これこそが「農の民意」に応えることである。
 都市の労働者や市民が、こうした農民の苦境と意識変化に無関心では安倍路線を打ち破ることはできない。農民や商工業者の要求と闘いを支持し、大きな戦線をつくるために努力しなくてはならない。農民や商工業者への無関心は、戦後ずっと自民党長期政権を許した野党の大きな弱点だったのではないだろうか。

 戦後ある時期から、対米従属路線を進める自民党は、膨大な国家財政を使い農民や商工業者を保守基盤として育成してきた。政権基盤となる「保守層」が形成された。しかし、米国の要求は留まるところを知らず、何よりも国家財政も限界となって、農民も商工業者も、地方は、自民党政治の下ではいよいよ食えなくなった。その上にTPPである。
 全国で、自民党の基盤である保守層、農民や商工業者層の分裂が深まっている。政権を握って安倍一強と言われるにもかかわらず、自民党は隊伍を維持できなくなっている。

 沖縄は、まさにそれを示している。「米軍基地とはもはや共存できない」と、「オール沖縄」の戦線が形成された。沖縄における保守の主流であった翁長雄志現知事を先頭に自民党の結構な部分が分化し、経済界も分化して有力な経済グループがオール沖縄の戦線を担っている。安倍路線に反対する保守を含む広範な勢力結集で次々と前進をとげているのである。
 対米従属の自民党政治を打ち破る歴史的時期に来たということである。安倍路線に反対する野党指導層に課題が突き付けられている。重要なのは安倍路線反対の保守層も納得できる対抗軸、国の進路である。

 逆に、反安倍路線の国民的勢力がよほどしっかりしないと、保守派同士の争いに弾き飛ばされ、霞んでしまう。都知事選も然り、今回の福岡補選も然り。都知事選の「小池劇場」では、野党共闘候補は舞台にも上がれず、惨敗となった。
 安倍や菅らは、保守分裂すらも、意識的に戦術としてすら使いかねない。いまは余儀なくされてもいるが、連中は戦後政治支配から学び、手練手管に長けている。安倍、二階らは、福岡では保守分裂で圧勝したし、都知事選以来の小池旋風も利用した。選挙という「戦場」は、そうした欺瞞というか制約が付きまとう。
 戦後、百回以上の国政選挙がやられたが、野党各党は増えたり減ったりだった。与党自民党はほぼ勝ち続けた。 
 いま安倍政権は、中国や朝鮮の脅威を煽り、「強い日本」などと欺瞞して民族感情をくすぐり保守層を引き付けている。さらに、次の選挙目当てに、北方領土返還を「演出」して欺瞞しようとしている。野党は、これらの攻勢に打ち勝たなくてはならない。

国の危機を打開する対抗軸
対米自主の国の進路

 もちろん、「野党共闘」は悪くない。しかし、重要なのは、新潟の知事選を見ても鮮明な対決点、政策である。有権者にとって肝心なことは、安倍政権を打ち破って、どのような政策を進めるのか、どのような日本をつくるかである。特に、対米従属路線の自民党、とりわけ安倍路線に対抗する、対米自主の国の進路である。
 民進党も、それを批判する他の野党も、この点にほとんど関心がないか、真剣に政策的対抗軸を打ち立てようとしていない。この点が民主党政権崩壊の最大の原因だったが、総括がない。
 蓮舫民進党は、沖縄の新基地建設推進である。これは論外だ。だが、新基地反対は当然にしても、アメリカが衰退し、中国が軍事面でも強大化している下で、わが国の安全保障をどうするか。日米同盟にいかなる態度をとるのか。国の安全保障に関心の高い保守派は納得しない。明確な政策対抗軸が必要である。
 原発再稼働、原発反対を明確にできないのも論外である。だが、国のエネルギー政策、原油やガスなどアメリカに縛られた資源はどうするか。核政策の根幹である日米原子力協定の18年期限切れをどうするのか。
 経済主権、国民主権、食料安全保障に反するTPP。何よりも国民の貧困打開の経済政策。こうした基本問題に明快に応え、国の危機を打開する対抗軸、展望を示さなくては、安倍路線と闘えない。安倍路線に批判的な保守派、農民や商工業者など、国の独立、救国に深い関心を持つ広範な人びとを引き付けることはできない。
 反自民の野党は、この点が以前から弱い。この国をどうするのか、国の進路、国民各層全体、民族全体の利害にまったく疎い。それが、対米従属路線の自民党の欺瞞を許し、主導権を奪われ、農民や商工業者などを自民党の支持基盤に追いやってきた大きな原因である。

 対米自主、対等な日米関係のための、しっかりとした基本軸の一致が必要である。それを支える国民世論と労働運動が必要である。野党各党が「共闘」というのであれば、目前の選挙だけでなく、こうした基本的な戦略的な問題に立ち向かうべきである。
 「対等な日米関係」、それを求め必要とする機運はますます広がっている。元伊藤忠会長の丹羽宇一郎氏は、本誌10月号で「日米地位協定こそ根源」、真実を語れと警鐘を乱打した。全国知事会でも、「沖縄の負担軽減へ日米地位協定抜本見直しから」といった流れが強まっている。
 売国と亡国の安倍路線に反対する救国の勢力が団結する条件は発展している。対米従属路線の自民党政治、とりわけ安倍路線の日本は沈没寸前である。代わりの船を準備するときである。

共有(シェア)Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn