関根佳恵一覧

農業基本法改正と関連法成立への懸念

「権利としての食料」を重視する
国際的潮流から考える

愛知学院大学教授 関根 佳恵

 

 

 

1.基本法改正と食料安全保障、フードセキュリティー

 2024年5月29日に、食料安全保障の強化を基本理念に掲げる「改正食料・農業・農村基本法」(以下、改正法)が成立した。日本で言う食料安全保障は、英語のフードセキュリティーを訳したものだが、国際的な定義と国内の定義には違いがある。そのため、本稿では日本の法律に基づくものを食料安全保障、国際的な定義の方をフードセキュリティーと呼ぶ。フードセキュリティーが国際社会で定義されたのは1974年だ。穀物輸出国だったソビエト連邦(現ロシア)が輸入国になることで世界市場が逼迫し、国連世界フードセキュリティー委員会(以下、CFS)が発足した。 続きを読む


農業  関根 佳恵

多重危機を乗り越え、次の社会へ

「権利としての食料」実現に向けて

愛知学院大学経済学部教授 関根 佳恵

 

 

1 対症療法より
全身治療を

 自国第一主義の台頭、コロナ禍、ロシアとウクライナの戦争等により、グローバル化は逆回転を始めたと言われる。現行の食料・農業・農村基本法のもとになる新政策が発表された1992年から、国際情勢は確かに変化した。食料安全保障、農村の過疎化、気候変動、生物多様性の喪失、および食品安全の問題等への対応も急がれる。

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