農業基本法改正一覧

農業基本法改正と関連法成立への懸念

「権利としての食料」を重視する
国際的潮流から考える

愛知学院大学教授 関根 佳恵

 

 

 

1.基本法改正と食料安全保障、フードセキュリティー

 2024年5月29日に、食料安全保障の強化を基本理念に掲げる「改正食料・農業・農村基本法」(以下、改正法)が成立した。日本で言う食料安全保障は、英語のフードセキュリティーを訳したものだが、国際的な定義と国内の定義には違いがある。そのため、本稿では日本の法律に基づくものを食料安全保障、国際的な定義の方をフードセキュリティーと呼ぶ。フードセキュリティーが国際社会で定義されたのは1974年だ。穀物輸出国だったソビエト連邦(現ロシア)が輸入国になることで世界市場が逼迫し、国連世界フードセキュリティー委員会(以下、CFS)が発足した。 続きを読む


農業基本法改正 ■ 種子を守る院内集会(4月4日)

 

「種子の自給」を基本法に明記せよ

 「日本の種子を守る会」は4月4日、食料自給、種子の自給を基本法に盛り込むことを求めて参議院議員会館で「種子を守る! 緊急院内集会」を開催した。会場・オンライン合わせて約600人が参加した。
 開会のあいさつで日本の種子を守る会副会長の安田節子氏は、政府による「種子法の廃止、種苗法の改悪、また農業競争力強化支援法によって公的な種子育種から民間の商業的種子へ移行」など種子をないがしろにする政策を批判。改定基本法の中心に自給を掲げること、そのために不可欠な種子の自給を明示することを求めることを訴えた。

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農業基本法改正 ■ インタビュー 徳永 エリ

 

 

 

 

食料自給向上のための抜本的な農業者支援を

参議院議員 徳永 エリ

 

 

 

 日本の農業は崖っぷちに来ています。高齢化問題もあり、あらゆる産業で担い手不足、後継者不足を抱えています。とりわけ日本農業は深刻です。いま116万人の基幹的農業従事者が、20年後には4分の1の30万人という予測があります。30万人になってしまったら、農地も守れない、国民の食料も作れない。本当に取り返しがつかなくなったそのときはもう完全に崩壊します。日本農業の危機は、農産物を海外に依存し国内農業を軽視してきた、この間の農政の失敗の結果です。

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農業基本法改正案――衆院を通過、参院へ

食料自給確立へ今こそ国民運動を

 

 食料・農業・農村基本法の改正案は4月19日衆議院本会議で、若干の修正を加えただけで賛成多数で可決され参議院に送られた。
 自民と維新が提出した修正案は、「生産性の向上」に関して「多収性に資する新品種」を明記しその導入を促進するという「生産性」を一段と強調し、種子メーカーを利する内容である。

 坂本農相は、食料自給率の低下は米国を中心とする海外からの輸入農産物の増大に起因するとの指摘に対して、「自給率の変動は消費者の行動と生産の動向が要因」と、消費者の嗜好や農家の生産動向が食料自給の低下を招いたなどとする暴論を吐いた。断じて許されない。
 参議院での審議が始まる。食料自給の確立に向け国民の世論と運動を盛り上げるため一段の努力が求められる。
 「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」は3月21日に参議院議員会館で農業基本法改正についての集会を行い政府に申し入れした(4月号既報)。そこでの自治体議員の発言を紹介する。

 

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食料自給の確立を求める自治体議員連盟

食料自給確立へ抜本的な財政支援を

     農業基本法改正で政府に申し入れ行動

要望書を渡す北口雄幸呼びかけ人(右から4人目)と受け取る農水省の小坂伸行参事官(同右)

 

 

 

 

 

 

 

 

 農業の憲法である「食料・農業・農村基本法」が25年ぶりに改正されようとしている。法案の審議入りを前に、「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」(以下、議員連盟)は3月21日、国会内で基本法に関する政府への要請行動を行った。議員連盟は昨年12月に設立され3月20日現在、47都道府県141自治体の252議員が参加。その代表17人の議員が要請行動に参加した。要請行動には農林水産省の担当者十数人が出席し、要請に回答、それに対する議員連盟の発言があった。設立した議員連盟は重要な一歩を示した。自給率の向上(国民の食料確保、そのための国内農業への支援)めざしてさらなる前進が期待される。

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食料安全保障の確立へ

農業基本法改正の現在地

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘

 

 

やっと「食料自給率向上」が追加されたが

 基本法の見直しを今やるということは、世界的な食料需給情勢の悪化を踏まえ、「市場原理主義」の限界を認識し、肥料、飼料、燃料などの暴騰にもかかわらず農産物の販売価格は上がらず、農家は赤字にあえぎ、廃業が激増している中で、不測の事態にも国民の命を守れるように国内生産への支援を早急に強化し、食料自給率を高める抜本的な政策を打ち出すためだ、と考えた。
 しかし、新基本法の原案には食料自給率という言葉がなく、「基本計画」の項目で「指標の1つ」と位置づけを後退させ、食料自給率向上の抜本的な対策の強化などには言及されていない。自民党からの要請を受けて、やっと「食料自給率向上」という文言を加えるという修正は行われることになったが、そのための抜本的な政策について何も言及されていないのはそのままだ。

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