1995年、米兵による少女暴力事件に怒り、米軍基地の整理・縮小を求める沖縄の県民大会は日米両政府を震かんさせた。両政府は翌96年4月、5〜7年以内の普天間基地返還で合意と発表した。沖縄県民が喜んだのは一瞬にすぎず、期待は瞬時に幻滅に変わり、怒りが広がった。普天間基地返還が米本国への撤収ではなく、「県内移設」という新たな県民負担増の条件がついていたからだ。県民の意思は89%が米軍基地の整理・縮小を求めた県民投票によって示された。名護市民の辺野古新基地建設反対は、市民投票で明確に示された。この13年間、県民の意思に反した新基地建設は進まず、政府は杭1本も打つことができなかった。
「米軍再編の見直し」をうたい、選挙選で普天間基地の国外・県外移設を訴えた民主党が政権を握った。沖縄県民の中に、鳩山政権への期待が広がった。だが、政権発足から2ヵ月もたたぬのに、舌の根も乾かぬうちにと言うべきか、北沢防衛相は「県外移設は難しい」と辺野古移設容認を示唆した。岡田外相は「嘉手納基地への統合案を追求する。だが、米国や地元の反対を翻意させるのは困難だろう」と発言した。
国会論戦から鳩山首相の答弁をひろってみよう。10月29日「アジア太平洋にはいまだに不安定な要因がある。沖縄を含む在日米軍の抑止力もわが国の安全保障には必要なものと理解すべきだ」。11月2日「日米それぞれの政府が納得でき、沖縄の負担軽減となる結論を出していきたい」。「オバマ米大統領が来る時までに決めないといけないとは思っていない」。4日「海外も県外も、県内でも色々考え、検証中だ」。6日「関係閣僚と知恵を絞り、選択肢を検証している」。明言せずに時間稼ぎをしているだけで、鳩山首相の結論は明らかではないだろうか。
鳩山政権に対する沖縄県民の期待は幻滅に変わりつつある。二次大戦で本土防衛の捨て石として地上戦の生き地獄にされ、その後27年間は苛酷な米軍政下におかれ、さらに復帰後37年間も小さな島に全国の75%の米軍基地を押しつけられて、絶えることのない米軍犯罪や米軍機墜落事故などで暮らしをおびやかされ、経済発展が妨げられ、全国一高い失業率を強いられてきた沖縄県民の怒りは、今や巨大なマグマと化しつつある。
11月8日、沖縄で「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民大会」を開かれた。会場にあふれた2万1千人の人びとは、日米両政府に普天間基地の即時閉鎖・返還と国外・県外移設を求める意思を示した。
沖縄県民の闘いを支持しよう。同時に、対米従属政治の打破、東アジアの共生をめざして、それぞれの県・地域で住民各層の切実な要求と闘いを支持しあって、連携して闘おう。
(文責・編集部)
訪米中の渉外知事会会長の松沢成文・神奈川県知事が「普天間飛行場は辺野古に移すべきだ」と県民の気持ちを踏みにじる発言をした。渉外知事会は本来、基地の負担や被害を減らすことを考える組織。こともあろうにこの時期に、よりによって米国でそのような発言をしたことは、絶対に許されない。今、政権交代によって県民・国民の多くが米軍基地の整理縮小や撤去が進むと期待をふくらませている。だが政権の腰はすわっていない。米国の恫喝に新政権が恐れをなせば、政権交代の意味はなくなる。米軍基地の県内移設を断固認めず、普天間飛行場の一日も早い撤去を確実なものにするよう、大会を成功させて県民・国民の意思を伝えていきたい。
県民大会を開催するのは、鳩山政権に県民の思いを正しく伝え、戦後64年も続く米軍基地の負担、苦しみと悲しみに終止符を打つ英断を首相に求めるためだ。普天間飛行場では、沖縄国際大学への墜落事故から5年、返還合意から13年が過ぎる今でも、米軍ヘリや輸送機が飛び交い、墜落事故が起きうる危険な状態が続いている。来日するオバマ大統領に対し、基地がいかに県民の負担になっているか、米軍の安全基準を無視して運用されているか、県民の思いを受け止め強く訴えていただきたい。私たちは決してあきらめない。最低でも県外と言ってきた鳩山首相には、もうこれ以上の新基地はいらないということをオバマ大統領に伝えていただきたい。
これまで硫黄島への移設を提案してきた経緯もあり、鳩山政権が県外移設の方針を示した際、市議会で「大いに期待している。応援していきたい」と答弁した。県民も鳩山政権に政治力を期待しているが、「名護市長選の結果を見て判断したい」という発言も出ている。まるで13年前に戻ったような感じだ。名護市民に何回踏み絵を踏ませるつもりなのか。県外移設の決断ができないのならば、鳩山首相は県内では「友愛」の言葉を封印してもらいたい。基地は望んで作られたものでないのに、基地をはさんで県民は左右に分かれて争いを続けてきた。私は保守系の政治家だが、保守・革新の枠を飛び超えて一歩を踏み出した。今こそ基地の整理・縮小で県民が一つになるべきだ。
◆高嶺善伸氏 復帰後の基地起因の事件事故は1434件、米軍人らによる刑法犯罪は5584件、県議会の抗議決議や意見書は345件に上る。これ以上の犠牲や負担は限界を超えている。
貴重な自然の宝庫の辺野古海域を埋め立てるのは、自然保護の潮流にも逆行し、財政的にも無駄な公共工事。新基地建設には県民の多くが反対し、普天間飛行場は一歩も動いていない。
松沢成文神奈川県知事は県民を愚弄する発言をした。私は今後、46都道府県議会議長と副議長に手紙を送り、沖縄の過重な基地負担を訴えていく。
普天間飛行場の辺野古移設は難しい、嘉手納統合案が出てきた。沖縄に基地があるから押し付けておこうという政府、政治家の姿勢だ。嘉手納統合は許さないということを決議した。
嘉手納基地は訓練移転で住民負担が減るという説明だったが、国内外から訓練機が飛来して負担に悩んでいる。嘉手納への統合はあってはならず、これ以上の負担は受け入れられない。政権交代したからこそ、県民は一つになって沖縄への基地移設に反対し、整理縮小に向け意思を統一しよう。辺野古移設に反対していこう。
1997年の名護市の市民投票で、辺野古への新基地建設は反対の意思が示された。辺野古は世界に誇れる宝の海だ。
自然を破壊し、基地をつくって意味があるのだろうか。沖縄県民は数々の試練、屈辱を受けても立ち上がり、平和の尊さを学んできた。
道理の通らないことにノーと言う勇気、ウチナーンチュの誇りを忘れてはならない。
今こそ、辺野古ーの新基地建設・県内移設に反対の声を上げよう。子どもたちの未来に美しい自然と平和を愛する心を受け継ぐために。
12年前の名護市民投票で「基地はいらない」という純粋な思いを示した。だが計画は拡大し、大浦湾を埋立てる巨大な軍事基地建設になっている。
沖縄から世界の紛争地域に向け戦闘機が飛び立っており、私たちは間接的な殺人者だと認識しなければいけない。基地建設で地元にお金が落ちているという人がいるが、基地で豊かなまちづくりができないことを沖縄は身をもって証明している。
戦争につながる軍事基地はどこにもいらない。それが県民、日本国民の思いだ。米軍基地は撤去するしか道はない。
自公政権は、辺野古への新基地建設、海兵隊のグアム移転協定を結び、沖縄をアメリカに売った。新たな琉球処分だと思わざるを得ない。民主党は歴史的な政権交代を成し遂げたが、この歴史の中に沖縄も含まれているのか、今後検証していく。もし、連立政権が自公政権の政策を追認するならば、老かいだ。新たな新たな琉球処分を許すことはできない。日米地位協定を見ると沖縄は人間扱いされていないことが分かる。この屈辱的な条約を政府はどう考えているのか。ドイツ、韓国は地位協定を改定した。オバマ大統領は、核廃絶を訴えるならば現在、核の危機に置かれている県民の声に耳を傾けるべきだ。県民の自決権を考える時期にきていると思う。
(このほか、政党代表では、照屋寛徳・社民党県連委員長、赤嶺政賢・共産党沖縄県委員長糸数慶子・社大党副委員長、下地幹郎・国民新党のあいさつがあった。紙面の都合で略)
新基地建設に反対する強い思いを県民の総意として、あらためて明確に表した。会場に集まることのできた2万1千人は県民の声を代弁する代表者だ。さまざまな事情で参加できなかった多くの県民が一緒にいる。64年がたっている。64歳の人が生れたときから基地は存在し続けている。その間、さまざまな問題や暴力を起こしてきた。受けた暴力の痛みを抱えて生きている人びとを忘れてはいけない。次の世代の子どもたちのため一つになって、新しい基地建設を認めず、許さず、つくらせないの思いを確認したい。