新年おめでとうございます。
昨年は、アメリカ発の金融危機が世界経済危機に発展し、世界中に深刻な打撃を与えました。アメリカの世界一極支配は終わり、多極化が決定的となりました。国際情勢の激変は、対米従属の日本経済に深刻な影響を及ぼし、その打撃は先進国の中で最も深刻なものとなりました。国民の暮らしは耐え難いものとなり、その不満と怒りを背景に、総選挙で自民党が歴史的大敗を喫し、民主党が圧勝し、社民党・国民新党との連立による鳩山政権が登場しました。
以後、3ヵ月余りが過ぎましたが、国民の暮らしや営業はいっそう悪くなりました。経済の状況は厳しく、鳩山政権はデフレ宣言、2次補正予算を余儀なくされました。鳩山政権は、事業仕分けで失業者、中小零細企業、農林漁民や過疎地のための予算まで削りましたが、巨額の国債を発行しなければ10年度予算案の編成もままなりません。最後は、小沢幹事長の一喝で「暫定税率廃止」や「子ども手当支給」などのマニフェストを軌道修正しました。普天間移設問題では「迷走」を繰り返し、「現行計画を見直し、移設先については与党3党で検討する」として、翌年への先送りを決定しました。
予算案編成での一喝でも明らかなように、民主党の実権を握っているのは小沢幹事長です。総選挙で小沢グループは約50人から約150人へ3倍増し、党内で抜きんでた位置を占めました。彼は予算編成に口出ししましたが、「迷走」する普天間移設問題では沈黙しています。なぜでしょうか。
小沢幹事長は昨年12月の訪中で次のように述べました。「政権交代は実現したが、解放の戦いは終わっていない。夏に最終決戦がある。政権は鳩山首相に任せ、私は人民解放軍の野戦軍の最高総司令官として解放戦に徹していきたい」。「最終決戦」とは今夏の参院選、「解放」とは参院選で単独過半数を実現し、社民党・国民新党の制約から「解放」されることです。「解放戦に徹する」とは参院選の妨げになることは言わない、やらない、先送りするということです。小沢幹事長、鳩山政権が真の姿を表すのは参院選後で、それまでは過渡期です。
しかし、参院選後を待たなくても、小沢氏の過去の言動から真の姿はほぼ見当がつきます。例えば、昨年10月の記者会見で、官僚の国会答弁禁止、特に内閣法制局長官の答弁を禁止する国会法改正を明言しました。「集団的自衛権の行使」を合憲とする憲法解釈がねらいです。自由党時代には、周辺事態法、有事関連法に賛成しました。特に小沢氏の『日本改造計画』には、彼がめざす政治が体系的に示されています。湾岸戦争の際に自衛隊を派遣できなかった悔しさを述べ、受動的な「専守防衛戦略」から能動的な「平和創出戦略」への大転換が必要だと主張しています。つまり、日米の同盟関係を堅持し、自衛隊の海外派兵ができるよう憲法を改めて、日本を「普通の国」にすることです。そのために、「首相官邸の機能強化」、「与党と内閣の一体化」、「官僚の国会答弁禁止」などの政治改革で、「少数の人間の決断で権力を行使できる体制」を築くことを主張しています。
このような小沢氏の主張に照らして見れば、マニフェストの「対等な日米同盟」「主体的な外交戦略」「米国との役割分担」とは、自衛隊が海外で米軍と共に積極的、能動的に戦うことです。アジアをにらみながら、このような日米安保体制強化が、安保改定50周年でめざす「同盟深化」なのだと思います。これは弱体化しているアメリカの望むところで、「同盟深化」の中でならば現行計画にとどまらぬ普天間移設の合意もあり得ることです。小沢氏が今それを口にすれば連立政権が保ちませんから、参院選後までの時間稼ぎが必要なのです。しかし、日本にとって「同盟深化」は対米従属の深化であり、アジアと対立する危険な道です。
参院選で民主党が圧勝すれば、小沢氏は「普通の国」づくりに乗り出し、防衛計画大綱の見直し、衆参の比例定数削減、憲法審査会の委員選出などが政治の表舞台に出てくるでしょう。小沢氏にとっても、それは容易なことではありません。民主党内が「普通の国」づくりでまとまる保証はなく、経済危機の中で暮らしや営業を破壊された国民各層の不満と怒りがさらに高まるからです。
いま私たちが求められていることは、鳩山政権に幻想をもたず、対米従属の政治・経済によって苦難を強いられている国民各層の怒りと要求を支持し、共に力をあわせて闘うことです。沖縄・日本全土からの米軍基地撤去、日米安保条約破棄の国民世論を広げましょう。
2010年1月
自主・平和・民主のための広範な国民連合