鳩山政権発足から2ヶ月の11月20日、「2番底」が懸念され危機に直面している商工業者、失業者、医療・介護関係者らが衆参議員会館において対政府・国会行動を行った。これらの切実な要望に鳩山政権がどう応えるか。
今回の対政府交渉は、中小企業景気振興東京会議、中小零細企業経営危機突破川崎連絡会、静岡商工会の三団体が連絡を取り合い、同じ中小零細企業の立場から実行委員会を結成して開催された。特に静岡商工会からは会員の地方議員を含めて23名が交渉に参加、他団体からも連携している地方議員や市民が一緒に参加した。 静岡商工会の斉藤市民政策部長が要望書を手渡し、政府側は金融庁および中小企業庁が出席し要望書を受け取った。
◆中小・零細企業の要望項目
吉田誠男・中小企業景気振興東京会議代表がこれらの政策の必要性について政府担当者に説明した。
返済猶予については、静岡商工会から同法案が「当初の趣旨より大幅に後退したものであること、審査が金融機関や保証協会に委ねられ、申請できる企業も大幅に絞られてしまう危険性がある」などを指摘。中小企業庁金融課は、「業績が赤字でも、金利滞納がなく、今後の事業計画がしっかりしていれば、条件変更等、例えばもう一年据え置きを延長するなどの柔軟な対応をするよう指導していく」と回答。
出席者から、「返済猶予に応じるかどうかの判断は金融機関に丸投げしている。これでは以降の融資や取引で不利な扱いを受けかねず、猶予を申し出られない。実際に貸し渋り・貸しはがし防止に効果があるかどうか大いに疑問だ」などの厳しい意見が相次いだ。
また、静岡商工会は税の応能負担を強く求めた。法人税、所得税の税率構造のフラット化が進むなか、応能負担の原則が破壊され、中低所得者への増税路線がとられてきた。これが景気悪化の最大の要因になっている。応能負担の原則を、あらためて確立する必要があると要望した。
参加者からは政府保証の緊急不況融資の据え置き期間の延長や、融資にあたっての「税の不滞納」を条件としないことや、納税者番号制度の導入反対を求める声も出された。さらに、「倒産して生活も再建できず、自殺に追い込まれる人が絶えない。一刻も早く削度改正を」「百万円規模の小さな工事も大企業が取ってしまう。地元企業に仕事が回るよう、政府は指導してほしい」など、切実な要求が相次いだ。
最後に、今回の要請行動で終わりにするのではなく、以降も連携して対政府に声を上げていくことが参加者の間で確認された。
「雇用問題を考える労働者・市民交流会」(東京)と「職と生活保障を求める不安定雇用ネットワーク」(神奈川)が中心となり、100万人雇用創出実行委員会を結成し政府に対して厚労省に要望書を提出。愛知で派遣切りされて対県交渉を展開中の失業者や支援者から派遣切り労働者の実態、福岡県筑紫野市における「雇用・生活問題相談会」の報告など参加者で相互の交流と意見交換を行い、要望書を厚労省に提出した。
◆雇用の要望書
要望書を厚労省に提出。介護は今村真弓氏(有限会社ナースネット代表取締役)、医療は鈴木登氏(医療危機を考える懇談会共同代表)、医療の有床診療所問題は奴間健司氏(福岡県古賀市議)が趣旨を説明。
その後、各地の状況報告と意見交換を行った。三重県立病院の民営化(独法化)と再編問題について西塚宗郎氏(三重県議)、長野県岡谷市の健保塩嶺病院と市立岡谷病院の民営化・統合問題について武居光宏氏(岡谷市議)、有床診療所の現状と課題について奴間健司氏(古賀市議)、神奈川県の医療現場のコ・メディカルスタッフなど意見交換と懇談が行われ、引き続き連携して闘っていくことを確認した。
◆介護保険制度に関する要望
◆医療の要望
雇用、医療・介護問題については当初、中小企業問題同様に対政府交渉が予定されたが、鳩山政権のもとでは民主党議員を通じての陳情は民主党・小沢幹事長の裁量のもとに一本化されるということが決まり、要望書を担当大臣の秘書が受け取り当該省庁に届けることとなり参加者による交流と意見交換が行われた。
全国から対政府交渉を期待して参加した参加者からは自民党政権時代よりもストレートに対政府陳情行動が出来なくなったことへの批判の声も聞かれた。