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『日本の進路』地方議員版6号
 

市民の手による「高齢者介護基本条例」の運動

八王子市市議会議員  井上睦子


 昨年の春頃から法政大学の嶺学さんを実行委員長に八王子市民が作る「高齢者介護基本条例」直接請求実行委員会を結成し条例づくりにむけて学習会を行ってきました。
 そして、「八王子市高齢者介護基本条例案」を作成し昨年9月21日から一ヶ月間署名運動を行って議会に提案しました。
 この条例案の特徴は総合的に一般財源で行う高齢者サービスと介護保険を含めて市民参加/自己決定/自己選択を原則に基本的な考え方を条例で示したことです。
 内容は@介護保険事業等協議会を設置し、市民参加で被保険者(公募)と学識・介護経験者などが公開で話し合い介護保険の計画・運営・見直しを行う。Aサービス評価委員会を被保険者と介護・保健・医療・福祉等の専門熟練者、学識者で構成しサービス評価を市民に公開する。B市の責任で「介護保険等オンブズパーソン」を設置し被保険者の権利を擁護する。C高齢者見回り訪問員という制度を提起して小学校や中学校単位で高齢者一人暮らしあるいは高齢者のみの世帯で一週間に一回ぐらい声を掛けて安否の確認を行う。様々なサービスが必要な場合には行政と協力してその人の相談に当たるという四点を特徴としています。
 八王子市は現在約40万人の有権者ですから法定数の50分の一、約8000人の署名があれば条例制定請求が成立します。その3倍以上、2万8000人の署名が集まりました。11月下旬に始まった第4回定例市議会に条例案がかけられたわけですが市長はそれに対して、厚生省の示している準則で十分として反対意見を述べました。
 市民は意見を積極的に反映させるシステムがないから直接請求で提案しました。介護保険法では介護保険の保険料やサービス内容などの手続条例を作ることが義務づけられていますが、行政側がそれを作ったとしても市民の作った条例は高齢者介護、介護保険を含めてどうやって高齢者の生活の質を高めていくかということを別枠で定めてありますから重なる部分がないので両立出来ると思います。
 議会ではこの条例案は継続審議となっています。今年市長選があり、条例に反対の意見書を出した前市長は負けました。新市長は何らかの形でオンブズパーソン制度は必要だと言っています。しかし、この条例に対する態度は明確ではありません
 市民が提案した条例の制定の見通しは厳しいのですが、当局が出してくる条例に反映されることを期待しています。