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『日本の進路』地方議員版6号
介護保険制度の問題点と今後の課題
荒川区議会議員 今村真弓
いよいよ4月から介護保険制度が始まります。当初より高齢化社会を迎えるにあたって、老人介護の救世主のような宣伝をされていますが、連日の報道に見られるようにコロコロ変わる内容は混乱ぶりを浮きぼりにさせています。現在に至っても問題は解決できていない状況です。今後の対応策を考えるにあたって介護保険制度を整理してみます。
介護保険制度が出来上がるまでの歴史
介護保険は、社会保障の1つとして位置付けられています。日本の社会保障は、憲法第25条の『国民の生存権、国の社会的使命』に関する規定の中で明文化されています。昭和25年に社会保障制度審議会が行なった『社会保障制度に関する勧告』で、憲法第25条の意味を具体化し、社会保障を体系づけ、昭和30年代後半に国民皆保険・皆年金体制が確立し、整備されてきました。
少子高齢化社会が問題になってきた平成元年、大蔵・自治・厚生省の3大臣合意で『高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)』が策定されましたが、その後地方老人保健福祉計画の集計結果がゴールドプランを大幅に上回る整備の必要性が明らかになったことなどから、平成6年、全面的見直し『新ゴールドプラン』が策定されました。同年もう一方で、厚生省は『高齢者介護対策本部』を設置します。この年4月、細川内閣から羽田内閣、6月には村山内閣(自・社・さ)へと変わり、国会の各政党はどこも『財政危機』の原因を探ることより、《福祉の有料化》《介護の商品化》へ荷担していきます。
そして、平成7年社会保障審議会勧告は、『生存権の保障は、従来ともすると最低限の措置にとどまった』とし、『国民は自らの努力によって自らの生活を維持する責任を負うという原則が民主社会の基底にある』ことを前提に『増大する社会保障の財源として社会保険料負担が中心となるのは当然である』と発表しました。
医療保険制度改革ともからみ合って、老人保険の負担を軽くする、しいては老人保険制度をなくしていく方針の中で、介護保険制度へと突き進みます。この背景には、高齢化社会に目をつけた企業がこれからの大きな市場になる福祉・介護分野の規制緩和を要求。営利活動として、これまでの社会福祉法人がやってきた仕事に参加できる法律をつくったのです。
法制度そのものの問題点
1)介護サービスは、これまで税金で賄い、大まかに50%は国、25%は都道府県、25%は区市町村、利用者は応納負担でした。介護保険では、50%は40才以上の全国民から保険料として徴収し、利用者は一律(今は1割)負担となりました。
2)これまでは介護が必要になった時、区市町村に申し込み、調査、判定会議後、必要なサービスの提供を受けることができました。介護保険は、全国共通の85項目の調査チェックを受け、コンピュータによる一次判定後、認定審査会の二次判定によって、7つのランク(自立、要支援、要介護1〜5)に分けられ、ランクの給付限度額は決められ、その範囲内で現物支給を受けられますが、オーバー分については実費となります。
3)サービス提供機関は、これまで行政(民間委託を含む)が主体でしたが、介護保険は、行政も民間も競争する同一の介護サービスという《商品》を売る事業所になります。
4)これまで、介護内容は行政が決め、責任は行政にありましたが、介護保険では、自己責任の中で自分で選んでいきます。
5)医療保険と介護保険は連動し、保険料滞納は、ペナルティがあります。
6)40才から64才の方は、特定の病気がないと介護保険の対象者にはなれません。
7)自治体にとっても、これまでの福祉補助金が削減し、保険料徴収などの事務処理と91%保険料徴収以下については一般財源からの持ち出しとなり、負担は拡大します。
当面する課題
当面する課題について考えてみましょう。
1)1月の福祉衛生委員会では、国民健康保険率等について報告がありました。
簡単に言えば、40才〜64才の介護2号保険者の保険料は、国民健康保険料と一緒に徴収され、介護保険料を別納する訳ではないこと。
話はそれますが、医療費の1人当りの平均保険料は、年額1,588円値下がりしましたが、これは、社会保険から国民健康保険に変わった人が増えたということ。リストラの影響でしょう。
わが区の問題は、非課税世帯が47.1%もあることなど、様々ありますが、自治体が介護2号保険者の保険料を91%徴収したとしても、都の23区で44億以上、荒川区で1億2千万以上の一般財源から持ち出しをすることが解りました。地方自治体は、保険料の徴収率が下がれば、一般財源からの持ち出しということになります。
2)介護認定を受けるに当たって、昨年10月より訪問調査が開始していますが、これまでの介護サービスと変化する人たちが多いことが問題になっています。
介護保険制度がスタートすれば、介護保険対象外の介護サービスへの国や都道府県の補助金がどうなるのか未定です。これまでの福祉サービスが維持できる保障はありません。(特に東京都は福祉サービスを推進してきたわけで、全国一律では後退します。)サービスを低下させないとすれば、さらに自前でなんとかしなければならない訳ですので、財源負担は余儀なくされるということになるでしょう。
3)介護報酬問題もクローズアップされています。指定を受けた事業所にとっても経営上難しい問題を抱えることになりそうです。
今まで訪問看護ステーションを利用してきた人の半数近くがヘルパーステーションに移行すると言われています。なぜなら、看護の方がヘルパーより報酬が高いので、一割の利用料で多くのサービスを選ぶためにはヘルパーステーションを利用することになるからです。
4)施設の内、これまで医療施設であった『療養型病床』の多くが介護保険対象施設に転換しています。
病院機能施設が減少しているということです。64才以下の方は、なかなか入院できなくなるかもしれません。(医療制度改革のねらいのひとつでもありますが)ただし、東京都では、医療報酬の方が医療以外の介護サービスより報酬が高いので、介護保険対象にしない療養型が多く現在問題になっています。
今後の対策
では今後の対策ですが、介護保険や福祉のオンブズパーソン制度を自治体で確立することが求められます。また国庫負担を増やすよう働きかけることやこれまでの介護サービスを低下させない運動が必要です。
保険制度は、保険料や利用者負担の割合を簡単に変えていくことができます。まして、保険料は、40才から64才の2号介護保険者は、医療保険に上乗せ、65才以上は年金天引き、と手許に来ない内、または見えないまま保険料を徴収される仕組みです。
あとは低所得者への援助が欠かせないと思います。生活保護を受けている人は社会福祉から援助を受けますが、生活保護を受けない低所得の方々には一割負担は重すぎます。減免ないし軽減措置を考えるべきです。
とまれ、問題を残したまま見切り発車した介護保険制度にはこれからも目を光らせていかなければなりません。