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『日本の進路』地方議員版5号
交流の広場
介護保険と個人情報
東京都豊島区議会議員 山口菊子
2000年4月にスタートする介護保険に向けて介護認定作業が始まりました。全国で調査員が戸別訪問に走り回っているところですし、同時に医師による意見書の作成も始まっています。そして多くの自治体では、調査員の不足から民間事業者に調査を委託しています。豊島区では5000人を越える対象者がありますが、調査員は区の職員で行うことになっています。実際のところ、職員だけでは間に合わない現実があり、厳しい日程のやりくりに追われているはずです。
さて、この介護保険制度は、民間業者の市場参入を前提とし、その事業者として自治体も参加するという制度となっています。豊島区では判定に向けての調査は公務員が行うことにしていますが、それ以後の作業、つまり介護認定がされた方の「介護計画(ケアプラン)」の作成から、実際の介護のすべてにわたって民間事業者に門戸が開かれています。というよりは、基本的に民間事業者の市場競争に委ねられていると言って過言ではありません。そこでは、介護を受ける方の個人情報無くしてケアプランは無いわけで、対象者の個人情報は当然ながら、従来は役所の中だけであったのが役所の外に出ていくことになります。現在すべての自治体に「個人情報保護条例」が設置されていない中で具体的な作業がなされているわけです。
豊島区では来年4月の施行に向けて「個人情報保護条例」の作成作業が行われていますが、きちんと個人情報を保護し、かつ、情報を開示させるということの困難さを痛感しているところです。保護の面では委託事業者への情報提供から生じる問題、たとえば情報の一人歩きによって「介護サービス」の売り込みが生じたら対象者の混乱は必至です。一方、開示の面では個人に「痴呆」などがある場合、その家族などから介護度の認定に不満があって「開示請求」されたらどの様に対応するかといった問題が生じてきます。
介護保険制度は、長年培ってきた福祉の在り方の大きな転換です。「措置」から「契約」といわれ、「お恵み」ではなく「権利」だといわれています。しかし私たちは憲法第25条で福祉を受ける権利をもともと持っているのですから、今更「権利」ではないでしょう。そして同様に、憲法第11条にあるように「侵すことのできない永久の権利」としての「基本的人権」を守る上で、「個人情報」を間違いなく保護していかなければなりません。