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『日本の進路』地方議員版21号(2003年11月発行)
総務省は「平成の大合併」は順風満帆で進んでいるかの様に発表しているが、果たしてそうだろうか。この数カ月に起きた事例の一部を紹介する。
【北海道】
北海道奈井江町が、全国で初めて小学5年生以上を対象に行った住民投票が10月27日開票され、合併反対が賛成を上回った。このため、同町は、滝川市など周辺の4市5町で計画している合併には不参加の公算が大きくなった。
【秋田】
象潟町は9月14日、町民アンケートで、単独立町支持が合併推進を上回ったため、仁賀保町・金浦町・象潟町合併協から離脱する方針を明らかにした。
山内村は8月、藤原清村長の判断で任意の横手平鹿合併協から離脱した。同村長は合併の是非を問う住民投票実施を目指している。
【埼玉】
埼玉県の富士見市、上福岡市、大井町、三芳町で10月26日、2市2町の合併の是非を問う住民投票が実施された。
住民投票成立の条件とした投票率が、富士見市(有権者の3分の1)と三芳町(同2分の1)は規定を満たし成立したが、上福岡市と大井町は規定の有権者の2分の1に達せず不成立。成立した三芳町で合併に反対が多数となったため、合併協議は打ち切られる見通し。
【長野】
真田町は10月22日に「合併に関する住民意向調査」が集計され、「合併は必要ない」「どちらかといえば必要ない」が「必要」「どちらかといえば必要」を上回った。
山ノ内町で10月26日、中野市、豊田村との合併について賛否を問う住民投票が行われ、「合併反対」が「合併賛成」を上回った。町住民投票条例は「町長は結果を尊重しなければならない」と定めており、中山茂樹町長は開票結果を受け3市町村でつくっている任意合併協議会から離脱する。
【兵庫】
美方郡(村岡・浜坂・美方・温泉町)と同県城崎郡香住町の五町合併法定協議会は、浜坂町議会と温泉町議会の議員全員協議会が8月8日、解散を求める方針で全員一致し、事実上の解散が決まった。法定協の発足後、枠組みが白紙に戻るのは県内3例目。
養父郡四町(八鹿、養父、大屋、関宮町)による第23回合併協議会が10月24日、開かれたが、新市の市長直轄部局の八鹿、養父両町への分散配置に反対する八鹿町会の2委員は欠席。八鹿町会は、本庁舎の設置をめぐって「合併協で協議しないまま、経済産業部を養父町に置くと決めた」などと反発。9月初め、選出委員である正副議長が「脱退届」を合併協に提出。合併には合併協定調印と四町会の議決が必要だが、八鹿町議会では否決される可能性が高い。2004年4月1日の合併は困難な情勢となった。
【奈良】
6月、当麻町の「住民アンケート投票」の結果、反対派が過半数を占め、新庄・当麻両町の合併協議会は新市建設計画の見直しを迫られている。
合併協議会が示した合併特例債を財源とした新市建設計画の中身は、合併特例債を財源とする総額約170億円の事業のうち、住民が最も期待した「保健・医療・福祉の充実」に充てられた事業費は全体のわずか4.7%に過ぎず、「自然エネルギータウン」の整備(15億円)や温泉など観光機能を備えた「自然活動拠点施設」の整備(12億円)等、新市誕生の「記念事業」といった印象を受ける。合併の是非を問う住民アンケート投票では、当麻町だけでなく、新庄町でも反対派が予想以上に多かった。
【鳥取】
三朝町は9月18日、天神川流域合併協(倉吉市、関金町、北条町、大栄町)から離脱し、単独でいくことを明らかにした。「合併協議を通じて、負担は安く、サービスは高くという合併目標が達成できないことが明らかになった」のを受けてのこと。決断に賛同する町民と、急に方針転換したことに戸惑う町民とに二分している。同町の離脱によって、合併協の行方は不透明となった。
【島根】
島根・津和野町、日原町、六日市町は9月24日の町議会で、柿木村を含めた鹿足郡4町村合併協の解散議案を可決。柿木村は同日の村議会で否決したので法定協は解散に至らないが、4町村での合併協議は事実上終結した。新町名称・庁舎位置について対立したことが原因。
【岡山】
長船町で10月26日、法定合併協議会に参加する邑久、牛窓両町との合併の是非を問う住民投票が行われ、即日開票の結果、反対が有効投票の過半数を占めた。
条例は「町長は投票結果を尊重し、議会にはかる」としており、合併が白紙に戻る可能性もある。3町は昨年8月に法定協を設置。来年3月の合併を目指して協議を進め、新市名も「瀬戸内市」と決定。しかし長船町は「住民に最終的な判断を仰ぐべきだ」として、住民投票を実施した。
【香川】
山本、財田両町は10月22日、三豊南部の観音寺市と山本、大野原、豊中、豊浜、財田の1市5町でつくる合併協議会から離脱する方針を決めた。すでに豊中町が離脱を決めたことにより「1市5町」の枠組が崩れたため。
【熊本】
天草合併協(本渡市、牛深市、有明町、御所浦町、倉岳町、栖本町、新和町、五和町、天草町、河浦町)では9月以降、同協議会からの離脱決議が相次いでいる。有明町が9月4日、栖本町が9月8日、新和町が9月18日、五和町が9月26日に、それぞれ離脱を表明した。一部自治体が駆け込みの大型投資事業を実施することが明らかになり、信頼関係が崩れたのが大きな理由。栖本町が離脱すると、隣接する倉岳町、御所浦町が「飛び地」になり、残った2市4町にとっては合併への障害となる。
玉名市は9月12日、玉名郡市合併協(岱明町、横島町、天水町、玉東町、菊水町、三加和町、南関町、長洲町)からの離脱決議案を可決した。また、合併による転入、転出や課税手続きなどに使う電子計算処理システム事業に関する議案についても否決された。
【鹿児島】
市来町は10月14日、日置合併協(東市来町、伊集院町、日吉町、吹上町、金峰町)から離脱した。住民アンケートで、串木野市、東市来町との1市2町での合併を希望する者が協議を進めていた日置合併協での合併より多かったため。
隼人町は9月25日の町議会で、姶良中央地区合併協(国分市、溝辺町、横川町、牧園町、霧島町、福山町)から離脱する決議案を可決した。議員発議で「同協議会はひたすら既設のレールを走っており、理念なき合併だ」としている。だが、同町長は離脱の意思がないことを強調しており、町長と議会との間に矛盾が激化している。同町は12月に住民投票を実施し、離脱の是非を民意にゆだねる予定。
総務省は「平成15年10月1日現在では、法定協議会421(1,652市町村)、任意協議会139(500市町村)、研究会等その他182(411市町村)が設置(予定含む)されており、設置数の合計は、742(2,563市町村)である。これは全市町村数(3,181)の80.6%に相当する。」と発表している。
ここ数カ月注意深く各地での合併についての動きを見ると、様々な矛盾が吹き出し大混乱を来たしているのが分かる。